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第八話『逃げ水に、砂嵐に、ええとぉ、石蛇にゃん!』のその②

 第八話『逃げ水に、砂嵐に、ええとぉ、石蛇にゃん!』のその②


 時は移ってにゃ。

(ふぅ。にゃあんかうるさいと思ったら……、霊覚交信にゃん)

 霊覚交信とは、心と心を通わせることで相手に思いを伝える通信手段。心に念じた思いを霊波に乗せて送信すると、ある程度の力がある霊力者であれば、それを霊覚で受け留め、心に置くことが出来るのにゃ。……もっとも、これは『開いた交信』の場合であって、『閉じた交信』であれば、会話の相手を特定することも可能にゃん。


 にゃんでこんにゃことに思い当たったかといえば……、ミーにゃんの身体を乗っ取っているヤカンにゃんとミーにゃん自身との口喧嘩が心に届いたからにゃ。

「なんでミムカがモワンに乗っているわん!

 ひどいわん! あの、もわんもわん、な背中は、未来永劫アタシのものなのわん!」

「なんなのぉ。この子はぁ。

 またまた起きてしまったわん。何度も何度も催眠をかけているのにぃ。

 どうして、どうして、おとなしく眠っていないのわん?」

「ふん。これはアタシの身体なのわん!

 お前なんかに指図されるいわれなんてこれっぽっちもないわん」

「ふぅぅむ。こりゃあ予想以上の難敵かも。まずいわん。下手すると、身体を奪い返される事態だって起きないともかぎらないしぃ…………よぉし。それならぁ。

 ちちんぷいぷい。ちちんぷいぷい。

 とぉってもとぉってもいい子なら早く眠るわぁん。早く眠るわぁん」

「なにぶつぶついっているわん。さっさとアタシの身体を返し……返し……ううっ……ダメ……なのわん。とぉってもとぉってもいい子すぎて眠たくぅ……すうぅっ。すうぅっ」

「ふぅ。やぁっと寝かせたわん。それにしても、どうしてこんなに粘れるわん?」

「すうぅっ……まだ……まだ……なの……わん……すうぅっ」

「睡魔にまでも抵抗しているわん!

 んもう! しつっこいったら、ありゃしないわん!」

 ……んにゃどうでもいい会話を聞いている場合じゃにゃい。


 びゅうっ! ざざざざざぁっ! びゅうっ! ざざざざざぁっ!

「こりゃあ、ひどい! ねぇ、ミアン君。なんとかならないのぉ?」

「ミクリにゃん。うかつに喋ると口の中まで、じゃりじゃり、してしまうのにゃよ」

 びゅうっ! ざざざざざぁっ! びゅうっ! ざざざざざぁっ!

 砂嵐が吹き荒れる中、ウチらはたにゃひたすら前進していたのにゃん。

 確かにひどい状況。でもにゃ。それ以上に頭にくることがあるのにゃ。

「ぷんぷん! 全くぅ。どうしようもにゃいにゃあ。ぷんぷん!」

「どうしたの? さっきからエラく怒っているみたいだね」

「当たり前にゃよ、ミクリにゃん。この服ったら、もうどうしようもにゃい。

 どうせくれるのにゃら、もっとましにゃものが欲しかったのにゃん」

「ああ。それについては大いに賛成だねぇ」


 明るくにゃったと思ったら、砂も砂。正真正銘の砂が降りかかってきたのにゃん。にゃもんで慌ててドアの外へ脱出しようと振り返ってはみたものの、これがまぁにゃんたること。ウチらが居るのは砂地のど真ん中。ドアにゃんて影も形もにゃかったのにゃん。

「あっ、そうそう。忘れていたわん」

 声のするほう、頭上には、いわずとしれたミーにゃん姿のヤカンにゃんが。赤っぽいモノを握って赤っぽいモノを着込むという、にゃにやら妙ちきりんにゃ格好にゃん。

「アタシが今、手にしているのは『傘』っていうの。でね。身に着けているのは『フード付きジャケット』。砂が舞っていて気の毒だから、みんなにも差し上げるわん」


《あら、気前がいい》

《でもにゃあ。どうせくれるのにゃら、もちっと……はぁ》


 目の前の砂地から突如、ばさっばさっ、と赤っぽいにゃにかが飛び出してきたのにゃ。驚いてネコ人型モードの二つ足で、すくっ、と立ったら、まるでそれを狙ってでもいたかの如く頭上から下りてきてにゃ。ウチの全身を、すっぽり、と覆い包んでしまったのにゃ。おかげで思わず尻モチを突く羽目に。にゃもんで、『にゃんにゃあ、これはぁ』と夢中ではがしてみたところが、

(まぁはがす途中辺りから、にゃんとにゃく気がついてはいたのにゃけれども)

 大きさは違えど、ミーにゃんが着ていたのとおんにゃじ格好の赤い服にゃん。

 で、ここからが一苦労にゃん。

 ウチらは今、砂嵐の中。にゃもんで身体を砂の被害から守ろうとするにゃら、服を着込んでいたほうがいいのはいうまでもにゃい。ところがにゃ。ウチはたった今、服をはがしてしまったばっかにゃん。

(しょうがにゃい。あらためて着直すのにゃん)

 とはいえ、待っていたのは厳しい現実にゃった。

 砂が降り注ぐ中での着衣にゃもんで、終えるまでに自然と身体は砂まみれ。しかもにゃ。着たあとでも顔と足元は丸出しにゃもんで、どんにゃに払ってもこびりつく。

 毛並みを大切にしているネコとしては、

 ネコ一倍オシャレを、美しさを自認しているウチとしては、

 もう泣くに泣けにゃい有様にゃん。


《ほっ》

《それって、『良かったわ、その場に居なくって』の『ほっ』にゃろう?》


 頭に怒りのマークをつけて、といった感じでウチは憤然と文句をいい続けたのにゃ。

「砂も然ることにゃがら、どうしてウチの服にゃけ、こうも、ぱんぱん、にゃの? きつきつすぎて、とぉっても動きづらいのにゃん。格好にゃってほらぁ。全身が、もっちりもこもこ。これではまるで、ウチが太りすぎている、といわんばかりじゃにゃいの」

 ここまでいえば、ひとことぐらいは同情の声が聞こえてきても良さそうにゃもの。ところがにゃ。にゃんの反応もにゃい。『はて? どうしたのにゃろう?』と思って見回してみたらにゃ。みんにゃがみんにゃ、揃って、くすくす笑い。『想い出し笑い』と判るのは、ミクリにゃんが喋った言葉にゃん。

「そういやあ、大変だったねぇ。ひとりで服のボタンがはめられないみたいだったから、ボクらみんなで寄って集ってさぁ。

 もわんもわんの身体だったせいかなぁ。ぎゅうぎゅうぎゅう、って押し詰めるのは割と楽だったんだよねぇ。でもさぁ。問題はそのあと。ちょぉっと油断していると、直ぐにどこかが、ぽん、って膨らんじゃうんだよねぇ、これが。みんな、『諦めてなるもんかぁ』って変に意気投合しちゃってさ。『ほら、ここもそこもあそこも詰めてぇ』『いいかい? 絶対、手を放すんじゃないよぉ』って協力し合って、やっとこさ、ぱちんぱちん。砂を浴びまくっているさなかだっていうのにさぁ。最後のボタンをはめられた瞬間、みんながみんな、そりゃあもう大喜びで拍手して、君の言葉『ばんにゃあい!』を何度も何度も大合唱。いやあ、賑やかだったねぇ。あんなに強い結束をみせたのはミーにゃん同盟結成以来初めてじゃないかなぁ」

(あのにゃあ)

 ウチとしてはかにゃり複雑にゃ気分。『友にゃちって有り難いものにゃん』と思う反面、まるで『荷物の梱包』みたいに扱われたことについては、

「……うるにゃい」

 ぼそっ、と呟くしかにゃかった。恐らく顔も赤らんでいたのに違いにゃい。


《どれどれぇ。ぎゅうぎゅうぎゅう。でもって、ぱっ。

 なぁるほどねぇ。詰めれば詰めるほど、逆に手を放した時には拡がり方がものすごくなるんだわぁ。ふふっ。なぁんて面白いのかしら。

 よぉし、今度は思い切ってぇ。

 ぎゅうぎゅうぎゅうぎゅうぎゅう。でもって、ぱっ。うわっ!》

《あのにゃあ。ネコをおもちゃにしてはいけにゃいのにゃよぉ》


「おや? 風がやんでいるのにゃ」

 愚痴をこぼすのに夢中にゃったもんで漠然としてはいるのにゃけれども……。想い返してみたらにゃ。吹き荒れていた砂嵐は収まる気配をみせていたようにゃ気がするのにゃ。

(道理で会話がしやすいはずにゃん)


 ふぅぅむ。さっきまで豪雨のように降り注いでいた砂って、どんよりとした空からの贈り物とはとても思えにゃいのにゃあ。とにゃるとぉ……そうにゃん!

 地面に積もっている砂が風の力で舞い上がって運ばれて、でもって頭上から降ってきたのにゃ。そうにゃそうにゃ。そうに違いにゃい。

 にゃら風がにゃくにゃってしまった今、もはや砂の『す』の字も落ちてくることはにゃいはず…………はっ!


「にゃはっ! コートも要らにゃくにゃるってわけにゃん!」


 頭の程度が揃っている、も、自慢の一つのミーにゃん同盟。誰かが思いつくことは他の誰かも思いつくのにゃ。早いか遅いかの違いにゃけ。

 現に今もウチが閃きを口にしたかたわらでにゃ。

 ぷちっ。ぷちっ。ぷちっ。ぷちっ。ぷちっ。ぷちっ。

 コートのボタンが外れる音にゃん。見れば、まるで申し合わせたかのように、みんにゃがみんにゃ、脱ぎ捨てにかかっている。『一刻も早く自由ににゃりたい』との思いが、ひしひし、と伝わってくるのにゃ。

(うんにゃ。気持ちは良ぉく判るのにゃん)

 ウチとておんにゃじ。否、ぴったりすぎて動きにくかった分、他の誰よりも、『コート』という名の呪縛から解き放たれる喜びを味わえるはず。にゃもんで、『遅れてにゃるまじ』と、急いでボタンを外そうとしたのにゃ。

 ところが、にゃんと。

 ぷちぷちぷちぷちぷち。

 ネコ人型モードで立とうと力んだ瞬間、ひとりでに外れてしまったのにゃん。

「あっは。君のって便利だね。はははっ」

 目ざといミクリにゃんに見つけられ、にゃんとも恥ずかしい思いをしたのにゃん。よっぽど、『これはミーにゃんとおんにゃじ念動霊波で』にゃどと弁解を試みようかと思ったのにゃけれども、ウチはまにゃ体得していにゃい。ここに居るみんにゃもそれを知っているもんで、いえばいったで、もっと、もおっと大笑いとにゃるのは、火を見るよりも明らか。にゃもんで黙り込んでいる以外、どうしようもにゃいのにゃん。

(とほほのほ、にゃん)


《ねぇ、ミアンちゃん。お願いがあるのだけれど》

《にゃあ、イオラにゃん。

 背中に隠しているぴっちり風の赤いコート。一体どっから調達してきたのにゃん?》


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