第十四話 塩使いという名の冒険者
「この少し甘いめのタレが美味しいですね! レイナはどう?」
「そうね。私はもう少しさっぱりした味の方が好きだわ」
「となると、女性向けには脂身少なめの肉を塩で、酸味のある果物の汁を食べる前にかけるといいかもしれませんよ。アンファングでもそういう食べ方あるんですよ」
俺とレイナは村で串焼きを食している。
聞けば最近始めたらしく素朴な味もいいのだが、意見を求められたので串焼き愛好家の俺としてはつい語ってしまった。
「塩焼きに果汁か。なるほどなあ。さすがは塩使いさんだ。やってみるぜ!」
串焼き屋のおじさんは、熱心に俺達の意見を聞いている。
いやそんなごく普通の意見でしょうに。
どうやら俺は前村長の水瓜の謎を解き、塩を振って水瓜を甘くした男として村人に知れ渡っているらしい。ハルデンさん、何ということを……
スイカに塩振っただけなのに。エリー村長の旦那さんが生まれた村では普通に塩振ってたのに。しかも塩使いさんてまた変な名前で呼ばれてる。
ドコンのジョウだけで充分だってのに、今度はシオツ・カイとでも?!
でも最近思ったんだが、こんな風に名をつけて話題にするのは、人々にとって娯楽の一種なのかもしれない。
テレビもラジオもない世界なのでちょっとした出来事が人々の話題に登る。英雄に二つ名をつけるように、噂になっている間に印象に残る名前がついたりするのだ。塩を振って水瓜を甘くした。だから塩使いということなんだろうけど。なんともしょっぱい事態だぜ……
「やっぱり。リョータさんはすごい」
まあいいか。レイナが喜んでくれるので良しとしよう。
それに、もうすぐこのエリネルト村ともお別れだ。
数日後には再びジュラーハへの便が出る予定だ。
その護衛依頼を終えたら――
俺はレイナを顔を見る。
美味しそうに串焼きを食べている。
ずっとそばで見ていたい。
よし。
アンファグに戻ったらレイナへ俺から正式にプロポーズしよう。




