第106話 封鎖
「さぁ! 飲む阿呆に見る阿呆♪ 同じ阿呆なら飲まなきゃ損損♪」
あれからマリは人形達に、しこたま酒を飲ませていた。
苦痛が少しでも減るならと、マリは歌って踊る。
床には空の酒瓶が山と並び、その酒瓶を避けながらマリは器用に踊ってみせた。
そんな姿が面白かったのか、酔った人形達は微かに笑い今だけは人間らしく視える。
「あ! 笑ったねー! 笑ったらもう1杯飲まないとダメなんだよ~?」
マリに酒を飲まされる人形達は無機質な顔面を少し赤らめ、幸せそうだった。 ……ブラックが戻ってくるまでは。
「これは……どういう事かね?」
声がした途端、人形達は一斉に立ち上がり元の位置に戻り始める。 その動きは人間とかけ離れており、彼女達が人形である事をマリは改めて認識させられた。
先程までの幸せそうな微笑は既に無く、また無機質に見張りをする姿をマリは唇を噛み締めながら見つめる。
「……答えろ。 精霊人形達に何をした。 精霊人形は私達の命令以外効かない筈だが……」
猛禽類の様な目で睨まれるが、マリは意に介さない。
「さぁ? 1人で飲むのが寂しいから、皆の口にお酒注いでただけだよ? そしたら、酔ったのか皆床にへたり込んじゃったんだ~。 まるで人間みたいだよねー?」
マリが周囲を見渡すと、精霊人形達は少し横揺れしており酔っているのが一目で分かる。
「正気かね……? はぁ……君と喋ると頭が痛くなる。 だが、確かに精霊人形達は……いや、やはりいい」
ブラックが頭を抱えながら、部屋の出入り口へと向かった。
ブラックが向かった部屋の出入り口の外は薄暗い廊下が続いており、更に進むとクロモトの表の工房に出れる唯一の脱出経路だ。
出入り口の壁を何やら操作すると、出入り口の内側が何重にも閉まり完全に封鎖されてしまった。
見た目はただの壁だ。
しかも黒檀で出来ており、マリには絶対に壊せないだろう。
「げっ……何してるの?」
「ふっ、君は何をしでかすか分からないからな。 この隠し工房を完全に封鎖させてもらった。 これで首狩りメリーが部下を引き連れて来ても入る事は出来ないだろう」
ブラックは部屋の隅にあった椅子に座り、足を組んでマリを見張り始めた。 もう、マリに要らぬ事はさせぬつもりだろう。
「もしかして私の見張りを明日の昼までするつもりなの?」
「いや、クロモトが一段落するまでは見張らせてもらおう。 奥には私の部屋もあるのでね。 念の為さ……君は気にせず酒を飲めばいい」
ブラックの返答を聞きながらもマリは酒をラッパ飲みする。
「ぷはぁー! 暇だし、どうせなら話さない?」
「拒否する。 いくら明日の昼に処刑されるとしても、情報は渡したくないのでね」
素っ気なくされてもマリはめげずに話し掛け続けた。
「じゃあ、世間話は? 例えば……メリーさんの話しとか。 何か知ってるんでしょ? メリーさんが魔族だっていう事も知ってたみたいだし」
「ふっ……クロモトから聞いたのか? まぁそれならいいか。 短くまとめて教えてやろう」
ブラックが席を立ち、椅子をマリの目の前に持って来て座った。
「首狩りメリーがこのゴルメディア帝国に居たのは、帝国設立の時代に遡る」
「え、めちゃくちゃ遡るやん。 本当に短くまとめれるの? 別に暇だしゆっくりでも良いよ?」
「うるさい、黙って聞きたまえ」




