第107話 首狩りメリー
ゴルメディア帝国が建国される以前、大陸の最南端の地には数少ない人間族が住んでいた。
まだ他の小国群も存在しなかった時代に、フラリと現れたメリーと云う少女とそれに付き従う少女達が人間族を指導し小さな国を建国したそうだ。
石作りの家々を少女達が瞬く間に作り上げ、その小国は繁栄し人間達の数も劇的に増えていった。 不思議な事にメリー達はその小国の女王になる事を良しとせず、黒髪の女性を初代女王としメイドとして仕えたらしい。
ん? いや、これでもまとめて話しているのだから黙って聞いていたまえ。
そして、ある日突然大きな地盤沈下が発生しその小国は滅んだ。
だが、生き残りが集まり今度は絶対に滅びない硬い最強の国を作ろうと言い始める。
初代女王も生き残り、言い始めた者達と共に新たな国を作る事を決心した。 それが、このゴルメディア帝国設立の歴史と記されている。 知る者も少ない昔の話だ。
それからは瞬く間に領土を広げ、新たに出来た小国を滅ぼし強大になっていった。
ゴルメディア帝国となってからも、何代にも渡って女皇帝にはピンクの髪をしたメリーと云うメイドが仕えその部下であるメイド達も付き従ったそうだ。 何代にも渡ってだ……意味が分かるかね?
ふっ……そうだ、長い年月が経っても容姿に変化が殆ど無いメイド達を流石に不審に思い始めたのだよ。
そして、建国に携わり女貴族となった者達の子孫はメイド達を女皇帝から引き剥がそうとした。
いや、だからだね。
今話しているだろう? 君が聞いてきたのだから、寝落ちそうになるのはどうかと思うよ? いいかい? 話すよ?
当然、何代にも渡って女皇帝を支え導いてきたメイド達を引き剥がそうとする事に反発する女貴族達も居た。
だが、その代の女皇帝はメイド達を良く思っていなかったのだ。 愚かにも女貴族達の話を聞き入れ、大昔から帝国を支えていたメイド達は追放された。
その時に最後まで反対した女貴族も追放されてね……ホワイト侯爵は影で帝国を支えていた者達を追放すれば必ず帝国は腐ると叫びながら辺境の地で死んだ。
ははっ……本当に愚か者達だ。
それからの帝国は悲惨だったと記されている。
当然、メリー達の監視が無くなった事で強大な権力を持っていた初期女貴族達は己の欲望のままに領地を好き勝手にし始めた。
男達を攫い酒池肉林を楽しむ者。
領民を奴隷とし、税を絞り取る者。
許可も得ずに、新たに出来た小国に攻め込み略奪する者。
その代の女皇帝が止めるのも聞かずに女貴族達は腐りきった。
そしてゴルメディア帝国を揺るがす大事件が起きたのさ。
ある日、全ての女貴族達の首が帝城の広場に並んだ。
広場の中央には血まみれのメリーが立っていたそうだ。
当時の女皇帝が泣きながら追放した事を謝罪したが、メリーは一言だけ言葉を残し帝国から完全に去った。
ん? 何と残したかと?
ふっ……残念ながらそれは残されていないのだよ。
だが、その現場を見た者達や女皇帝が恐怖だけは伝えたのだよ。 悪さをすれば悪政を働けば、首狩りメリーがやって来る……とな。
どうだね? 少しは暇潰しになったかね?
あぁ、メリーが魔族だと知った経緯は話せない。 悪いがそれは話せない情報なんだ。 他に聞きたい事はあるかね?
瞼が重そうだが、眠れるなら眠ってしまいなさい。
ん? 女貴族達が全員首を狩られたなら、今の貴族はどうなんだって?
今の帝国にいる女貴族達はその後に新たに選抜されたのだよ。 ブラック家もその時に選ばれてね、代々宰相としてゴルメディア帝国の為に人生を注いできた。 男である私が宰相を務めているのも、長年の功績があるからと言っていいだろう。
まぁ、結局新たに選抜された女貴族達も長い年月の後には同じ様に腐ってしまった。
だから必要なのだ。
二度と腐らない帝国にする為には、圧倒的で普遍な力が。
おや? ふっ……眠ったのか。
君には本当に感謝しているのだよ。
それと、すまないね。 ……どうか、今だけは安らかに。
◆◇◆
ブラックは眠ったマリに部屋から持ってきた毛布をかけてやり、椅子に座り直した。
無機質な人形達だけが見ていた。 いつも猛禽類の様な目をした老人が今だけは優しい目でマリや自分達を見ていることに。




