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ひまつぶしに書いた随筆  作者: 檻の熊さん
14/16

電話はダイヤルで回さないし、缶コーヒーを100円で売っている自動販売機のない時代

 今となっては私の記憶の中に残っているだけで、補正のしようがないからフィクション(作り話)みたいな話になっちまいますが、私の義理の父の()は政商だった事になっている。

 この話を聞かされた時点で、その人は既に故人で、なんなら義理の父も故人なので、本当に「話だけ」です。

 当時聞かされた話自体が、()()()()いたかもしれない。


 政商というのはつまり、戦前戦中にかけて政治家とつるんで商売をしていた人たちで、コネの人ですね。

 なんでも、名古屋大空襲の時に焼けてしまったか戦後接収されてしまったとかで工場を失い、敗戦で全てを失ってしまった人たちの一人だったらしい。

 ボウセキと記憶しているので、紡績工場だったらしいのですが、小学生の頃に聞いた話なので、この程度しか覚えておりません。


 ひとつ言えるのは、私らの親世代というのは()()戦争の(にお)いの残った話を自らの体験の中で経験しており――――――例えば、私の母はアルマイト製の(うつわ)で脱脂粉乳を飲まされていた当時の給食事情を、随分と嫌そうに語ったものでした――――――映画でも観ている様な話を、子供の頃に()()()聞かされて育っております。

 いえ、すでに私が昭和世代なんだと、強く自覚させられる話です。


 私が覚えているのは、子供の頃の話で、当時の中日新聞だったと思いますが、地元の終戦を扱った記事の中で、義理の父の生家の話が紹介されていたときのものです。

 昭和天皇の事だと思うのですが、なにやら「偉い人」が、戦後焼け残っていた建物が()()しかなくて、義理の父の家に休憩の為に立ち寄ったのだそうです。

 記事の内容は「あの人は今」といった感じで、当時義理の父の()がまだ生きておりまして、名古屋市内に暮らしていたのでインタビューをしたという、その内容が記事になった事になっている。

 いえ、なんでもその記事では義理の父の()()「陛下にお茶を提供した」みたいに書かれていたそうですが、「そういう事は()()()」んだと、記者の創作だと、本当に立ち寄っただけだったんだと、そんな事を記事を読んで()()話していた。

 まあ、そんな思い出があるのです。

――――――今でも、探したら記事が見つかるんでしょうか?


 その当時は、義理の父というのは「ええ所のぼん」であったらしく、なにやら立派な家屋敷ではあったそうなのです。

 女中、お手伝いさんと言うのでしょうか、子供の頃は何人も居たそうです。

 「母親が()()お茶を出した」というシチュエーションが、()()()()()と、そういう話だったのです。


 残念ながら、その建物は、義理の父の兄弟のひとりが縁日で買ってきたヒヨコを暖める為に自作した「ひよこ電球」によって焼失しました。

 今では考えられない話ばかりですが、「裸電球を真綿でくるんで、ひよこの入れてある箱の中に入れた」そうです。

 子供のやる事です。

 今なら、親は、しっかり見ていないと駄目な案件です。

 義理の父は、「そういうこと」をやっている兄を羨ましくて見ていた「らしい」。

 本当に、子供のやる事だったのです。

 『甦る昭和史その真実』と言ったところでしょうか?

 焼け出された家族は、つまり財産の全てを失い、その後は庶民の暮らしに身をやつしたそうです。


 私が雷魚(カムルチー)という魚を知ったのは、矢口高雄の『釣りキチ三平』でした。

 当時の話で新興住宅地がジャンジャン開発されていた頃ですから、身近な自然環境に()()()()釣りをする場所は既に無く、私は雷魚(カムルチー)という魚を見た事がありませんでした。

 なんと、義理の父はこの魚を知っておりました。

 戦後しばらくの間、名古屋市内には空襲で出来た()()()があって、そこにいる雷魚(カムルチー)を、五寸釘(ごすんくぎ)を曲げて作った釣り針で釣って食べたというのです。

 もちろん、令和の現在でもこの魚は国内に生息しておりますが、それほど頻繁に遭遇する魚ではありません。

 どうやら、この魚は戦前の日本では各地で放流があって、割と見かけた魚だったらしいのです。

 義理の父は、別名である「タイワンドジョウ」という名前を使っておりました。

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