家族 3
上、下、背後……何処からやって来ても良いように、警戒していたシリウスであったが、それでもすぐに反応する事は出来なかった。というのも、ベリウスは真正面から突進してきたからである。
ここまで隠れておいて、まさか真正面から来るとは思っていなかった。そのため、何かの罠か?と考え、戸惑いながらも、とりあえずバリアを展開し、攻撃を防ぐ。
ガキンッ!とバリアとマチェットの刃がぶつかり合う。そして、そのまま、ガチガチ!と押し合いに発展する。
「……ッ!」
少しずつ、バリアにヒビが入っていく。
「ぉぉぉおおおお!!」
気合を入れ、ベリウスはマチェットを持つ手に力をより一層大きく、とうとうバリアを破壊する。
「なッ!?」
「おらッ!」
シリウスに刃が襲い掛かる。が、さすがに魔力を身に纏っている状態では、肉体に刃が到達することは無かった。が、ベリウスはそれでも構わないと言わんばかりに、マチェットでシリウスを叩きつける。さすがに威力を殺しきることは出来ず、そのまま後方へと吹っ飛ばされる。。
(コイ…ツ、一体、何…を?)
それなりの衝撃は感じるが、ダメージになっているのか?と言われると、戦闘継続するには全く問題ないものである。
それぐらい、ベリウスでも分かっているはず。
であれば、何故こんな攻撃を?
理解出来ない。
とりあえず、吹っ飛ばされている最中、腰をひねり。腕を回し、空中で上手く態勢を整え、上手く大地に着地する。
「そろそろ、私の最強の技で、仕留めてやるよ!!」
ベリウスはマチェットを捨て、再び懐から何かを取り出す。
それは……スプレー缶であった。
「……何、だ。それ…は?」
シリウスの質問を無視し、スプレー缶を右手で握りつぶす。しかし、何もない。中からは何も出てこなかった。
「いや、気体……か?」
シリウスは、ある事を思い出し、汗が噴き出る。
圧縮……。
気体を、圧縮。
(まさか……!?だが、奴はそこまでする気なのか?)
ベリウスのしようとしている事はなんとなく分かった。それを喰らえば、確かにどんな者であっても、耐えることは不可能であろう。だが、自分でも不思議なくらい、冷静で、恐怖は無く、何も感じることは無かった。
「やってやる!おおおおおおッ!圧縮、あっしゅくうううううう!」
ベリウスは叫び、気合を入れて何かしようとしている。が、何も起きない。
「何故だ!?何度か練習し、確実に出来るレベルまで仕上げた技なのに……何故出来ない!!」
「それは、お前が私を本当に殺すつもりが無いから、だろ?」
ベリウスは心臓が破裂しそうなぐらい、バクバクと鳴らす。いつの間にか、自分の目の前にシリウスが拳銃を持って、立っていたからだ。
そして、あのシリウスの喋り方が、流暢になっているからだ。
彼女のあの独特なしゃべり方の時は、感情を殺しているからだ。
命令は絶対、任務は遂行、敵は排除、問題は無い。この口癖も、彼女が冷静な判断を下せるように……元々心優しい彼女が、決して敵に情を移すことがないように、するための口癖。いや、おまじないとでも言うべきだろうか。
まさしく、生きた虐殺兵器。
だが、今は違う。
彼女は、心優しい一人の少女へと戻っているのだ。




