家族 4
「なぁ、答えてくれよ。どうなんだ、まだお前はボスと私を『家族』として見ているんじゃないのか?いや、そもそも、裏切った事にも、深い理由は無かったんじゃないのか?」
ベリウスはものすごく、頭が痛くなるほど思考する。故に、何も感じなくなる。体が動かなくなる。シリウスのセリフに一切、反応を示さなくなる。
(私の裏切った理由……?そりゃあ、もちろん、全てを出し抜くからためだ!シリウスを越えて、ボスを見返して!そして……。そして?…私は、なんでシリウスを越えたかったの?ボスを見返して、何をして欲しかったんだ?あれ……?)
そして気づけば……。
ベリウスは涙で溢れていた。
「やっぱり。お前はただ、劣等感に苛まれていただけ。褒めてほしかったんだろ?ボスに。そして、私を越えて、自慢したかったんだろ?自分でも役に立つんだぞ!って」
「あ、ああ。そうだ……。そう、なのかも、しれない」
ベリウスは、昔の事を思い出す。
シリウスとベリウスの出会いは、孤児院であった。
しかし、その頃の記憶はあまり覚えていない。名前も、確か別にあった。が、思い出せない。いや、違う。思い出したくない。
当時、彼女たちの記憶は最悪なものであり、味方のいない、地獄だったのだから。
ベリウスは自分の親が誰なのかは知らない。だが、母は名のある冒険者で、妖精と契約しているほどの実力を持った者であったのは知っている。故に、シン国ではそれなりの地位であったし、差別の対象へと成ることは無かった。が、娘であるベリウスは別だ。
彼女は、魔力を一切使えない娘を孤児院に預けた。その娘が一体どんな結末を迎えるのか、知っていた上で、預けたのだ。
魔法至上主義。
それだけで、ただの人間であるベリウスがどうなるのか、皆も想像が着くだろう。
シリウスも同様であった。
エルフであり、魔力を使えるものの、その魔力量は決して多くなく、親から見捨てられ、差別の対象へとなってしまったのだ。
お互い、味方の居ない身。だから、二人はずっと一緒だった。なんとか生き抜こうと、必死だった。
だが無慈悲にも、二人はその後、孤児院の良育費のために、商人に奴隷として売られたのだ。
そこからは、さらに悪夢が続いた。
どんな悪夢だったのか、それはもう思い出せない。いや、思い出として残すような余裕など、無かった。とにかく、生き延びなければならなかった。
運よく、二人は同じ商人に買ってもらったため、奴隷になっても、一緒だった。
そして、とうとうあの日、解放される日がやって来たのだ。
あの夜は、誰かの叫び声で起きた。
それは奴隷の者だったのか、使用人のものだったか。だが、あの忌々しい商人の声ではなかったのは確かであった。そして、どんどん色んな叫び声が邸宅に響いて、最終的には……。
二人だけが残った。
「おや?まだ生き残りがいましたよ、学長!!」
それは、一人の魔法使いであった。しかも、エルフ。だが、その場にいた者全員がエルフというわけではなく、人間もいた。しかも、魔力が使えない人間が。
二人は恐怖を感じながらも、驚いた。なにせ、エルフが、魔力を使えない人間と対等に接しているのだから。
「おや?まだ子供じゃないか?その二人は……奴隷か?」
それは、まだ若い頃のボス、セリウス・アルザメントであった。
「こっちこないで!!」
殺される、と思った。
それは、シリウスも一緒だった。でも、彼女には勇気があった。
微小の魔力を頑張って肉体に纏わせ、両手の広げ、ベリウスを守るように、アルザメントに立ち塞がった。
「どうしますか、学長。始末しますか?」
「……確かに、私は言ったな。この任務において、目撃者を残さぬように、と」
「はい」
「私は子供を殺すほど鬼ではない。だが、任務は絶対。故に、消えてもらう。この子たちは、今から奴隷という身分を抹消し、表社会から消え、我々組織の一員になってもらう」
「えっ!?幼いこの子たちをですか!?」
「といっても、当分の間は、私の養子として育てる。いいな?」
「はい、わかりました。学長」
そうして、二人はアルザメントの養子となって、奴隷という身から解放された。




