元最強
その頃、一方、東方面では……。
「ベリウスとシリウスが戦って、クリシーと流星の勇者が戦って、ゴーレムと魔王残党軍が戦って……そしてシンとジョウキリもここに関わろうとしている。我先と神座を求めたり、とにかく邪魔したり、はたまた……まぁ、良い。ただ一言、貴殿に対して言えることは、お前はただ利用された、盤上外の駒に過ぎないということだ」
一人、白衣を着た眼鏡の男が、自分の下に浮いている島へ見下ろしていた。そして、その視線の先には、ある一人の者が立っていた。
それは、やいちの親友である、魔王の力を一部使える元騎士団、団長。
レイビィア・アタニアであった。
「一体、何が起きてるのかは知らんし、騎士団ともはぐれて、一人だけ……。でも、アンタが限りなく敵である可能性が高い。それだけが確かだな!」
魔力を放出し、剣を抜き、構える。
「確かに、敵かもしれない。何せ、私は流星の勇者とは敵対している組織に所属しているからな」
「魔王残党軍、ってことか?」
「いいや、ワールド・ルーラーってことだ」
彼も拳を突きだし、戦闘態勢になる。
レイビィアはワールド・ルーラーと対面するのは初めてであったが、妖国では宗明と裏で繋がっていた事、やいちが何度も戦闘していた事を知っており、未だに組織内の実態は不明なものの、その規模は大きく、危険な組織であるということは理解していた。
(素手のみで戦う格闘系か……?いや、しかしあの構えは…?)
あの白衣の男は一切、魔力を身に纏っていなかった。いや、確かにこの世界において、一般人でも魔力、魔法を使える相手と善戦、または互角に戦うために生み出された特殊な戦闘技術があるのは知っている。だが、レイビィアの知識からして、あの構えに該当する格闘技は一切知らない。
いや、構えているのかも分からない。何せ、手に一切力が入っていない。脱力させているのだから。
「お前、どういうつもりだ?」
「どうもこうも、俺の戦闘スタイルがコレなんでね」
「……」
レイビィアはとにかく観察する。
(……奴は全然仕掛けてくる気配がない。カウンターを主体とした戦い方ってことか?であれば、あの構えは敵の攻撃を受け流す構えってことか?)
確かに、受け流すだけであれば、力は要らない。逆に敵の攻撃の流れに逆らわないようにしなければいけないため、力を捨てる必要がある。であれば……。
(むやみに攻撃するのは危険だな。だが、予測することが重要じゃあない。一回、攻撃してみるか!)
レイビィアは高く飛び上がり、上にあった、白衣を着た眼鏡の男がいる島に登ると、すぐに剣で素早く突き刺していく。
すると、案の定、敵は全ての攻撃を受け流して見せる。
いや、レイビィアの予測以上の動きをしていく。
「うッ!グゥ!?」
攻撃を受け流す合間に、少しずつではあるものの、反撃をしていく。的確に、人間の急所へと。
首、腹、手首など……。
(魔力を込めていない手で、これほどのダメージを!?)
レイビィアは肉体に魔力を纏っている。身体能力を上昇させているうえ、ある程度の防御力もあるのだ。だが、その魔力の膜をも突き破る威力で掌打していく。
「ちぃッ!」
さすがにこのまま攻撃していくのは危険だと判断したレイビィアは攻撃を中断し、飛び下がり、距離を取り始める。
「全く、魔王の残力を使っても、この程度っていうのは……」
白衣の男は指をポキポキ鳴らしながら、言う。
「アンタに俺は倒せない、これでも、俺はシリウスが頂点に立つ以前の……元最強だからなぁ…」




