神座闘争 27
ただの魔力を纏っているのではない、あのやいちの体に、魔法がかかっているではないか。
(何だと!?奴は魔法が使えたのか?い、いや、でも奴が詠唱している所も、魔法陣を展開した場面も見ていないし……。いや、あの魔法は下級の魔法無効化系統の魔法か?だとしたら、無詠唱でも発動できなくはないが……)
魔法には二つ必要な物がある。それが詠唱と魔法陣。
まず、魔力単一では、ただのエネルギー体であるため、炎に変えたり、より強い一撃を放つ事が出来ない。それを可能にさせるのが魔法陣。
そして、詠唱。魔法の名を叫ぶことによって、その魔法はさらに強化させられる。
しかし、これらを使わずとも魔法を使う事は出来る。それを簡易魔法と呼ぶ。
どの魔法が簡易化出来るのかはその魔法使いのレベルによる。が、大抵の魔法使いは下級止まり。中級が簡易化出来るレベルの者は天才、上級、神級を簡易化出来るものは本当に一握りで、伝説上で語り継がれる者だけだ。
そんなクリシーは、中級の中でも簡単なものであれば簡易化出来る、それなりの使い手であった。
「だが……あれほどの…神級魔法である〈グロリアス・クラウン〉を耐えきれるはずがない。一体、何をした…。お前は……一体…!」
「俺も、何が起こったか、分からない。頭の中がガンガン痛ぇ…けど……」
やいちは魔力を放出、そのままバチバチィ!と光に変換し、それは槍の形へと成る。
しかも、これまでのように、不格好ではない。まさしく、そこに具現化し、存在している。まるで鉄のように固く、鈍く光り、刃となって存在している。
そのうえ、見たことのある槍であった。
それは、やいちがこの世界に降り立った地であった、一人の冒険者のものであった。
「魔力による具現化……お前はまだそこまでの技術はもっていないはず……。本当に異常事態だ!お前は…まさか……!」
混乱し、思考が出来ないクリシーへやいちは一瞬で近づき、胸目掛けてその槍で突き刺す。
「がはッ!!」
「そのまま、感電死しろ!」
槍は光へと戻り、クリシーの肉体全身に行き渡る。
「くッ!」
普通、即死であろうほどの電撃を喰らっても、そのまま耐え、やいちへと腕を伸ばす。このまま押し通すとばかりにもう一本槍を生成し、今度は腹へと突き刺す。だが、耐える。
「うおおおおおッ!」
「ここで……終わって…たまるかぁ‥‥…!」
ようやく、伸ばした右手がやいちの顔面を掴む。そして、魔法陣がやいちの頭を取り囲む。
(ここで発動させれば…俺も巻き込まれるが……躊躇している場合ではない!!)
「喰らえ、上級魔法〈グレイト・ブラスト〉!」
ボンッ!とやいちの頭が爆発する。
一瞬、やいちの力が弱まる。
だが、すぐに力を入れなおし、魔法の詠唱が出来ないようにクリシーの首を掴む。
「ッグァ!」
頭から血が出てくる。目に血が入ってくる。
だが、やいちの眼はクリシーを貫き通すように、開いている。
(だ…めだ。呼吸を……力が…い、嫌だ。俺は、俺は……!!)
クリシーは最後の力を振り絞って、魔法を放とうとする。




