神座闘争 26
やいちはそのまま右腕を切断しようと思っていたが、クリシーが態勢を崩し、足を滑らしたことで、逆に刃を避けた形になってしまう。
「いッ!?」
思いっきり転んだクリシーは背中を地面に叩きつける。
やいちはさらに追い打ちをかけようとするが、クリシーはまるで氷の上を滑るかのように地面を移動し始める。
「くそぉ……痛ぇな…」
やいちを睨みながら、クリシーは立ち上がる。
「ようやく一撃入れてやったぞ……!」
やいちはぶん!と強く剣を振って、付着した血を落とす。そしてすぐに、走り出す。まだ態勢を立て直しきれていない奴はカウンター魔法などを張る事は出来ないはずだ。であれば、苦手の接近戦で追いつめるチャンスであり、逃がすわけにはいかない機会なのだ。
「ああ、これは確かに痛ぇダメージだ。両手で上手く杖も持てない。だがら、ここからは『お遊び』はもう止めだ。油断もしねぇ。本気でいってやる!!」
空中にいくつもの魔法陣がいろんな色で描かれ始める。
「俺が出せる火力を見せよう!上級魔法〈ボルカニック・ドラゴン〉!」
赤い魔法陣からいきなり炎が飛び出したと思いきや、ドラゴンの形へと変化し、やいちに向かって食い掛る。
「こんな魔法もあるのか……」
それに対し、やいちは恐れずに進み続ける。とはいっても無防備で突っ込むほど馬鹿ではない。体を多大な魔力で身に纏い、防御態勢に入る。
「魔法を使わず、ただ魔力だけこれを防げるものか!」
ガッ!とやいちはドラゴンの炎の歯に挟まれ、そのまま強大な顎にかみ砕かれようとされている。そして、炎に覆われ、やいちの姿は見えなくなる。
クリシーはさすがに殺れただろう、と思ったが、もう油断はしないと言った。故に、生きているかどうか分からない相手に追撃する。
「上級魔法〈アイス・ランス〉!」
空気中の水分が凍っていき、最終的に数十本の槍が形成され、炎を掻き消しながら、やいちへと襲い掛かる。
「まだまだぁ!!神級魔法〈グロリアス・クラウン〉!」
三つの魔法陣が重なり合い、虹色に輝き、レーザーのように魔力が放出される。
「これで……終わっただろ……!」
さすがのクリシーも、魔力を使い過ぎたようで、杖を使って立ってるのがやっとのようだ。しかし、それと同時にこれほどまでの力を使ったのだ。倒せていないはずがない、と思っているようで、やいちの姿を見ていないのにも関わらず、その場から立ち去ろうとしていたその時。
「おい……まだ終わってねぇぞ…!」
背後で何かが立ち上がる音が聞こえる。
「おいおい、う、嘘だろ?」
そこには、体中血まみれで、息も絶え絶え、もう腕に力も入らないのか、剣は地面に落ち、両腕はだ乱と脱力している。
しかし、その眼は……。
そのクリシーを貫くかのような、熱く、意思を持った眼だけは、彼がまだ諦めていないという証拠であり、今のクリシーを震え上がらせるには充分であった。
「こ、コイツ…化け物か……」
いや、待て、何かおかしい。
やいちの纏っている魔力に違和感がある。




