神座闘争 22
視点が逸れてしまったが、やいちとクリシーへと戻そう。
やいちは剣を構え、クリシーは何処から取り出したかは分からないが、杖を持っていた。
「お前は俺より強い、そこは認めてやる。だけど、まだお前は俺に勝てない。そう断言できる」
確かに、クリシーの言葉に一切冗談などは感じられなかった。心の底からクリシーはそう思っているのだ。
「なぜ、そう言い切れる?」
確かに、やいちの戦闘経験はクリシーよりも無いだろうし、今使っている剣術も我流と言えば聞こえは良いが、実際は適当に振っているようなものだ。
そう考えれば、戦闘経験、知識、つまり最初からある『才能』ではなく、積み立てられていく『技術』で考えれば、彼の方がまだ上だろう。
しかし、やいちも戦闘に慣れてきているし、あのシリウスとも戦ったことがあるのだ。勝てる!という絶対的な確信はないが、一切勝てる望みが無いわけではない。
では、何故奴は勝てると言い切れるのだろうか。
「それは、戦ってからのお楽しみだ!!」
そう言って、杖をかざす。すると、空中に魔力で出来た球体が出現し、ものすごいスピードでやいちに向かって襲い掛かる。
「くそッ!」
いきなりの攻撃だったが、すぐにかわしながら、クリシーに向かって全力で走り出す。
それに対し、一定の距離を保ちたいのか、クリシーは後方へ飛びながらも、魔力球で何度も攻撃を繰り出していく。
「うざってぇな!」
避ける、跳ね返す、色んな方法で魔力球から身を守りながら、なんとかして距離を詰めようとする。が、クリシーの動きの方が速いのか、どんどん距離が離れていく。
そして、気づけば、目の前から消えていた。
「はぁ、はぁ」
周囲には魔樹だけ。
(真正面からでは勝てないと思っての作戦か?)
そう思ったやいちは多方向からの攻撃に警戒する。すると、突然後方からザクッ、と雪を踏むような音が聞こえる。しかも、まるで自分のすぐ後ろにいると感じられるほどの音であった。
「何!?」
周囲を見渡していたにも関わらず、背中を取られた!?
慌てて後ろに剣で斬りかかる。だが、何もなかった。ただ、空を斬っただけであった。
「えッ……」
その時であった。
「ぐはッ!!」
横腹に衝撃が奔る。体感時間が、遅くなる。
(いつの間に、横に……?)
そこには、杖で思いっきり腹目掛けて殴りかかるクリシーの姿があった。
「ちぃッ!!」
しかし、体を常にどんな攻撃が来ても良いようにと構えていたのと、魔力を体全身で覆い、身を守っていたおかげで、その攻撃の威力を軽減させることに成功。そして、そのまま剣で斬りかかる。
それをクリシーは態勢を低くさせ、かわし、今度は腹の真ん中目掛けて杖で突く。
「ッ!」
ものすごい魔力が込められていたようだ。簡単に魔力の膜を貫通し、ものすごいダメージが体に浸食していく。その威力は衝撃波となって、空気を伝って周囲の魔樹も震わせた。
そのまま痛みに悶え、地面に座り込む。
無論、このままではまずいと思ったため、しっかりドーム型のバリアを展開した上で、地面に座り込む。
クリシーはガンガン!と何度かバリアを壊そうと杖で叩くが、単純に魔力を込めただけの物理攻撃では破壊出来ないと分かると、そのまま再び姿を消す。
(くそっ、このヒットアンドアウェイ作戦が奴の勝機なのか…?いや、そうではないはずだ。相手も同じ手は何度も効かないことは分かっているはず。とりあえず、今のヒットアンドアウェイ作戦を破らなければ……。その後の動きで奴の本当の勝機が分かるはずだ!)
安全であるバリアの中で深呼吸し、態勢を立て直すと、バリアを削除する。




