神座闘争 21
その二つの影とは、ワールド・ルーラーの裏切り者、ベリウスとその部下である黒髪のエルフの男、クリシーであった。
「お前らは……!!」
やいちは彼らの正体こそ知らないが、栄華でシリウスと博士たちが戦っていた事。妖国でも魔王残党軍と一緒に現れていた事から、まず味方ではないということを理解し、剣を鞘から抜く。
「お前……なんでここにいる?
ベリウスが質問する。
「それはこっちのセリフだ。お前ら、これからどうするつもりだ!?」
「それは無論、神座を求める、ただそれだけよ。魔王残党軍と同盟を組んだ理由は、神座の召喚に我々だけでは不可能だったから。それは魔王残党軍側も同様。お互い、戦力が少なかった、だから手を組んだ。でも、今、神座が召喚された。最終目的も違う。故に、私たち二人は奴らとは別行動し、密かに神の座まで近づいている。そういうお前はどうだ?お前は神の座なんて、求めてないだろ?だったら、なんでここにいる?」
「無論、このバカげた状況を終わりにするためだ。そして、ナナシを助けるためだ!」
「本当にそれだけか……?」
そのセリフは、まるでやいちの事をやいち自身よりも知っているような口ぶりであった。
(本当にそれだけ?)
やいちはベリウスのその言葉を何度も頭の中で繰り返す。
奴の言いたいことは何だ?
俺は……。
……。
…………。
やいちは、先ほど見ていた夢を思い出す。
(そうだ、俺は何故か、無意識のうちに…あの娘を、助けるつもりで……!?)
分からない。
やいち自身、自分が何を思っているのか、理解できなかった。
頭が痛くなる。
「やはり、流星の勇者は味方でありながらも、敵らしいな。それに、まだ『真実』にもたどり着けていないらしい」
「それは……どういう…!」
「さぁな。私も詳しいことは知らん。アカシックレコードを読み取ったヴァルロットから小耳にはさんだレベルで、奴のように実際に見聞きしたわけじゃないし、私には関係ないこととして聞き流していたからな。だが、とりあえず、今、神座を呼び出した現在、私から見ればお前は不要だ。邪魔な駒でしかない。私は先に行く。クリシー、お前に流星の勇者の相手を任せる」
「はっ!わかりました!」
そう言って、ベリウスは上にある高い島をに見上げる。そして急に消えたかと思えば、いつの間にか空中におり、その後も瞬間移動しながら、上へと移動していく。
(私の能力である圧縮を使えば、こんなのあっという間に神の座へ……!)
そう思った時、
「!?」
足に違和感を感じる。
「これは……!?」
右足には弾丸に撃ち抜かれた跡が。
急な出来事で意識がぐちゃぐちゃになり、まともに能力が一瞬使えなくなってしまう。
「ちぃッ!」
落下しながらも、深呼吸し、落ち着くとすぐに能力で空間を圧縮させ、近くにあった島へとなんとか移動する。
「これほどの射撃能力、お前しかいないよなぁ。シリウス……!」
ベリウスの目の前に帽子をかぶった、中性的なエルフが降り立つ。一体どこから飛んできたのか、分からないが、錬成術によって肉体改造されているシリウスであれば、何処であろうと、ひとっ飛びで別の島へと移動可能だろう。
「ボスはどうした……?」
「ボスは、まだ…眠りから……覚めてない。だか、ら……周囲の見張りをして…た、ら…お前が、見えた。だから……撃って、邪魔…した」
「そうか。だったら……ここで栄華の時出来なかった決着をするか」
既にベリウスの右足の傷は癒えていた。やはり、彼女もまた、錬成術によって異常なほどの治癒能力を持った者だからだろう。
こうして、ベリウスとシリウスの死闘が始まった。




