神座闘争 7
その無数の影がゆっくり歩いて近づいていく。
「おいおい、死王……流星の勇者をここまで連れて来るとは…どういうだ、ワールド・ルーラーである我々を裏切ったのか!?」
「ワールド・ルーラーだと……?」
やいちは影を睨む。
この激しい吹雪の中、相手の様子は分からない。だが、確かにそこに誰かいるのか、それだけは確かであった。
「おっと、流星の勇者すぐそばにいたか……。アンタは殺せない…いや、ブライハも殺したくはないんだが、ここまで流星の勇者を呼び込むなんて…馬鹿か!?」
「奴らの計画は神の座の破壊……それを阻止するためにここまで来たんだ!!何の問題がある!」
ブライハの声が響く。やはり、この吹雪の中、姿は見えない。
「アンタ…神の座の降臨条件を本当に知っているのか!?アイツらは流星の勇者の力を使って降臨させる気なんだぞ!?それに、ここには死王ブライハに、創造王の子孫、トゥリストも来ている!空白地帯の東方にはレイビィアもいる!これがどういうことか、分かるか!?」
「分かっている。だが、流星の勇者避難をさせた所で計画の阻止は不可能!!であれば彼らの力を借りて共に戦った方が良い!それに、確かに力を貸したことはあるが、仲間になったつもりなど俺には無い!」
何やら、もめているようだな……。
(何だ!?)
突然、やいちの頭の中に直接声が響き始める。それは、他の者も同様であった。
だから言っただろ、ブライハ……貴様は平和ボケしすぎたと…。いや、元からか。アンタは力を持っておきながら、優柔不断だったからな。力を持つ者は、決めないといけない時が来る。大を救って小を捨てる……だが、捨てきれず、その末路がこれだ。アンタは、正しい判断が出来なくなった愚か者だ!!
「それはどうかな!?」
負け惜しみか?まぁ、良い。既に計画は発動可能段階までやって来た……もうすぐ、魔王の目的を我々が成し遂げられるのだ!!って何だと!?こ…は…な…が起こって……。
ザザッ!と突然ノイズが混じったような声になり、どんどんヴァルロットの声が小さくなっていく。
「どうやら、上手く妨害が出来ているようだな……今のうちだ。急げ、流星の勇者……ここから逃げるのだ!!」
ワールド・ルーラーを名乗る者たちがこちらに近づいてくる。
「どういうことだ、何が起きている!?アンタ達は俺たちの敵じゃないのか、ブライハがワールド・ルーラーを裏切ったって、ブライハはワールド・ルーラーのメンバーだったのか!?」
「今は説明している暇など無い!!早く―!」
やいちは相手のいう事が信用できず、剣を鞘から抜く。
「来るなら来てみろ!!」
「くそ…状況が読めない馬鹿が、納めて、俺たちのいう事を聞け!!」
「こっちだ、ヤイチ君!」
いつの間にか、やいちの後ろにブライハが立っており、やいちの手を引っ張っていく。
「スピネル、さっきから様子を伺っているんだろ!?今がチャンスだ!」
「チッ!アンタの言うことに従いたくないんだけどな!」
スピネルの声が地面から聞こえてきたと思うと、積もっていた雪が解け、そこから博士と格闘家を両腕に担いだ一人の女性が現れる。
「ふん、大人の姿にも成れるのなら、常にそうしていたまえ!」
「いやよ。少女みたいに小さな姿の方が魔力の消費量少なくて良いんだから!」
そう言い合いながら、やいち、ブライハ、そして二人を担いだ大人の姿をしたスピネルがその場から逃げ出す。




