神座闘争 5
普通、魔力は魂から抽出されるエネルギーだ。しかし、ナナシの魔力は魂から抽出されず、別の場所からやって来ていることが分かった。
いや、もっと詳しく言うと、魂の存在を確認できなかったのだ。
「私たちも、あなたを一目みて、この世の者ではないと理解したわ。でも、しっかり調べたわけじゃなかったから、確証は得られなかった。でも、アンタが今万術会の実験結果を教えてくれたおかげで、この予測はほぼ完ぺきな物へと成ったわ」
「それで?結局私は何者なの?」
「それはな―」
ナナシはヴァルロットから真実が伝えられる。
自分が何者で、何処から来たのか。そして、自分がすべき事を……。
「なッ…私は……そんなが…?」
「ええ、そうよ。でも、万術会の実験結果からでは断言はできない。だって、私もあなたのような存在と同じ力が使えるからね?」
「え……?」
「魔王様は一度、神座を降臨させた。でも、彼の目的は失敗に終わった…その時、その場にいた者は覗いてしまったのよ、この世界の片鱗を……。その時から、私も世界の力を一部使えるようになったわ」
「世界の、力……」
「ええ、あなたも勿論、使えるはず。私たちよりも強力なものが……。でも、まだ分からないわ。この計画が成功したその時、私たちの仮説が証明されるはず。だから、手伝いなさい。それが、あなたの存在を知る糸口になるわ」
確かに、ヴァルロットの言う事は、あながち間違っていないのかもしれない。
何処かで自分はその真実から目を逸らしていたのかもしれない。もし、知ってしまえば、自分はまたこの世界から消える存在になるのだから……。
でも、彼らの目的は……それが成功すれば……。
私は、私のままでいられるかもしれない。
ならば―。
「分かった、私も、私のために…あなた達のために働こう」
「オッケー、だったら、まずこの魔法陣を発動させるための歯車になってほしいわ。魔力の出し方は……私が今から伝える」
そう言った直後、ナナシの頭の中に膨大な情報が行き渡る。
「うッ!な、何!?」
「まぁ、驚くわよね。でも、この力は私とあなたが世界を通じて、知識を共有させただけよ」
自分の頭が異様に膨れ上がっているような錯覚を感じる。それは、一度に学校の全ての科目の教科書の内容が一言一句間強制的に脳内に記憶させられているからだ。
「世界と繋がっていると、こんな事も出来るんだね……」
はぁ、はぁ、と深く息をしながら、苦しそうにつぶやく。
「さて、大体の情報が渡ったのなら、自分のすべき事は分かるはず」
「ええ、全て分かったわ。でも、魔法陣が完璧になるのにまだ数十分は時間がかかるようね。それまでは、少しのんびりしておくわ」
そう言うと、黒い風がナナシを中心に吹きだし、ナナシは消えていく。
「やはり、世界の力はすさまじいものだな、魔族の魔法を一瞬で使えるようになるとは……」
ナナシとヴァルロットが話している間に、黒髪の男のエルフ……ベリウスの部下であるクリシーがやって来ていたようだ。
「魔族の魔法は魔王が死んだ後、悉く禁術として排除させられたからなぁ。これが、負けた種族の末路だ、っていうのを、改めて実感させられたよ」
懐かしいような顔で、その瞳は哀しみのものであった。
数百年も昔の苦しかった思い出……しかし、あれを乗り越えたからこそ、今の自分がいる。
「魔王様の果たせなかったものを、私たちが成し遂げる日がとうとう来たんだな……」
そう言い残し、ヴァルロットも黒い風と共に消え去っていく。




