神座闘争 4
空白地帯……そのさらに北方では、ある計画が進行していた。
そこは巨大な魔法陣が描かれており、その大きさは半径二キロはあった。もうほぼ完成していると言っても過言ではないが、黒いローブを纏った者たちが、一部描きなおしていた。
「おい、そこは少しずれているぞ」
「はッ!すいません!!」
こんな風に、より正確になるよう、描きなおしていく。
そんな謎の魔法陣の中心には、一人の女が立っていた。それは、ベリウスであった。
「おいおい、本当にこれでいけるの?」
なんだか不安そうに、つぶやくベリウス。それに答えるのは、周囲の者と同様、ローブを着た男であった。また、彼の声からして、ジョウキリでやいち達と戦い、全帝であるフェイク・ライによって体内から爆発させられた男だと分かる。
「大丈夫だ、条件は満たしている。魔法陣も、着々と修正して完璧なものに近づけている。これで失敗するとしたら、外部からの邪魔が入ったときだけだ」
「外部からの邪魔、か。そういえば、その外部の連中はどうなんだ?あの、ワールド・ルーラーとか、別派の魔王残党軍はどう動いている?」
「流星の勇者は、そこまで深く考えなくても良い。ちゃんと空白地帯へと来ているのは認識済みだ。魔王残党軍も、北極を通って、こちら側に侵入しているのを確認しているうえ、既にお互い一度ぶつかり合っている。問題はワールド・ルーラーだ。奴らも来た痕跡は見つかるが、肝心の本体が見つからん。どこに潜んでいるのやら……」
と話していると、二人のすぐそばで黒い風が吹き荒れ、その直後にヴァルロットと仲間であるローブの男。そして、ナナシが現れる。
「今戻ったぞ。無事、ナナシの回収に成功した」
「さすがだ、ヴァルロット。であれば、あとは魔法陣の完成を待つだけか」
「……ここは?」
ナナシは辺りをキョロキョロと見渡す。
(ここは初めて見る景色、知らない場所のはず……なのに…)
何故か、既視感があった。
いや、本当にここの景色は見たことが無いはずなのだ。この広い雪原、魔樹も何も生えていない、真っ白な世界。
だが、何故かナナシは思った。
昔来たときよりも、だいぶ変わってしまった、と。
「やはり、な。お前は今思っているんだろ?久しぶりだな、と」
「な、なぜ、それを!?」
まるで心の中でも読む能力でも持っているのか、と疑いたくなるほど、今のナナシの心の状況を言い当てて見せる。
「やっぱり、アンタ達は知っているのね!?私が何者なのかを……!」
「……知っていると言われれば、ちょっと違うな。……ふむ、なんて説明すれば良いか……」
ヴァルロットはしばらく黙りこみ、深い長考へと入る。そして、ある程度頭の中が整理し終わったようで、口が開き始める。
「実は、君と…我々の魔力は全く違う、というのは分かる?」
「え、ええ。一応、妖国で印条さんに私の体を調べてもらったんですよね」
博士も元々、何処から来たか不明のナナシを、もしかしたら上界人ではないのか?と予測していた。しかし、やいち達のように電気エネルギーを生み出すことが出来るわけではなかった。無論、やいち達の世界にしか電気エネルギーは存在しないのかもしれないし、電気エネルギーの有無が、無数にある世界の上下を分ける条件の一つなのかもしれない。
しかし、やはり全ては憶測の域を超えることは無かった。であるならば、ちゃんとした施設で、知識を持った者たちと一緒にナナシの肉体を調べる必要があった。
故に、万術会本部という一つの国の大きな研究機関で調べてもらった。すると、ナナシの魔力は全く別の場所から抽出されているのが分かった。




