神座闘争 3
そこに、ブライハもやいち達と一緒に拳を構える。
「流星が言う通りだ。彼らは信用できない。共に戦うぞ!」
「アンタが誰かは知らんが、助かる!!」
シュオウキも少し遅れて、ブライハの隣に立つ。
「なるほど、それでも私を信じれない…と。エルドラの賢者からも信用されてもらえないとは、悲しいことだ。しかし、当の本人はどうかな?ナナシは……私たちの所へ来たくはないか?」
皆、後方にいるナナシの顔を伺う。
「……私があなたについていって、得があるんですか?」
「得、ねぇ。私たちについてくる報酬は、お前の正体、ってのはどうだ?」
やいち達全員が驚く。
格闘家はともかく、栄華国で出会った博士たちは彼女の正体について、とても興味があった。特に、海賊との戦いから、栄華国に来るまでの記憶を失っているやいちは、ナナシが何故自分と一緒に居たのか、とても知りたかった。
「何で、お前らが知っているんだ!?」
「そうか、やはり、勇者も知らなかったか。だが、今ここでは言えないな。さて、どうする、ナナシ?」
ナナシの表情がどんどん変わってくる。警戒のものから、覚悟を決めるものへと……。
「ダメだ、ナナシ!!」
やいちはナナシを守るように立っていたが、今度はナナシを邪魔するように立つ。
「そうだぞ!あいつらが本当にお前の事を知っているとは限らないんだからな!」
ブライハもまた、必死に止めようとする。だが、ナナシは覚悟を決めてしまった。
「分かった、あなた達についていくわ!!」
「オッケー、本人の言質は取った。お前らが私たちを止める資格は無い!!」
ビュン!と風を切り、一瞬でやいち達の後方にいるナナシの元へとたどり着く。
「なっ!?」
「は、速い!!」
そして、一秒と経たずに、黒い風となって、ヴァルロットと、黒いローブを身に纏った男がその場から消えていく。
一気に物事が進んだうえ、ナナシの意思によって、彼らについていかれてしまった。
彼女の選んだ道が、どんな結果になろうと、彼女はそれを覚悟して行ったのだ。我々が追いかけて止める資格など無い。今後、どうするべきなのか。さえも思い浮かばず、思考が停止したまま、一分近く時間が過ぎる。
「さぁ、どうする?流星の勇者たち、ナナシって奴はついていってしまったが、あの魔王残党軍の計画なんて、とんでもないものに決まっている。私は奴らを止めに行く」
そう言って、ブライハは歩き出す。
「彼らが何処にいるのか、私は検討がついている。シュオウキは早く村の者を避難させるのだ。ほかの村の者たちも出来れば逃げてほしいが……他村の村長の言う事を素直に聞いてくれるものなど、何人いることか……」
「分かった、とにかく先にハバ村の者全員を栄華方面に避難させよう。それが終わり次第、すぐにお前の手伝いに行く」
「ああ、お互い、死なないように頑張っていこうぜ…っと。さて、君たちは決めたかな?」
ブライハはやいち達に視線を移す。
「もちろん、俺たちはアンタについていく。ナナシの事は保留にするとして、奴らがここで何かをしようとしているんだろ?だったら、奴らを止めるしかないよなぁ!!」
やいちは叫ぶ。
「やいちの言う通りだ。ここで奴らを仕留める!」
博士は同意する。
「アイツらの事はよく知らんが……良い奴らじゃないのは、確かなんだろ?だったら、見逃すわけにはいかんな」
格闘家は指をボキボキ鳴らしながら、言う。
「……」
「おや、スピネルさんは何も言わなくても良いのかい?」
「言わなくても、分かるでしょ?」
「そうか。じゃあ、俺たちも覚悟を決めたということで……行くか」
こうして、五人は空白地帯の南へと向かった。




