神座闘争 2
やはり、彼女は王の器を持っている存在だ、と改めてブライハは思った。
約二百五十年前、なんとかこの未開の地に逃げ込んできた彼は、今日まで周囲の人間に警戒され、遠ざけられていた。
正体不明。
謎の錬成術師。
この険しくありながらも、平穏な地に何かを運んできた、歪みを与えた存在。
しかし、今自分を見ているシュオウキは違った。
正当な王の血を引き継ぐ者であり、村を引っ張っていく存在。しかし、頂点に立とうとしなかった。彼女は知っていた。何かの上に立つということは、孤立してしまうことと同一であるというのを。
だから、彼女は俺を頼る。
異端であった俺を対等な存在として、扱う。
「ははっ、やはり君なら、再び各々の村を統一し、鬼族の単一民族国家を建国出来るだろうね」
「……急にどうした?」
「君のその眼差しがね、今はそんな事はどうでも良い。さきほども言っていた通り、緊急事態だ、村の者を避難させろ。あと、ここに客人が来ているはずだ、彼らは流星の勇者だ。彼らも叩き起こして、今すぐ北方へと行かせるのだ」
「……?…!?いや、待て、話に追いつけない。何を言っているんだ?確かに、ガルウを助けてくれた旅人たちを泊まらせているが、彼らが流星の勇者?しかも、村人を避難って…もしかしてとうとう妖国が侵攻してきたか?」
「確かに、奴らも来ているが、奴らは所詮ここの地下に溜まっている魔樹古石が狙いだ。きっと、抵抗しなければ、案外良好な関係が築けるだろう。問題は奴らだ
「奴ら……?」
「ああ、アイツらは―」
「私たちのことを言っているのかしら?」
突然、知らない女の声が響く。それと同時に大きく地面が揺れ始め、大きな衝撃を与えていく。
「誰だ、お前ら!?」
何処にいるか分からない者たちに向かってシュオウキが叫ぶ。
「今、ここに来てまだ状況が理解出来ていないようだな。約千五百年生きたお前が、まだ避難だとか、危ない状況だとか、少々平和ボケしすぎてるんじゃないのか?」
そう言って、大地を割き、地上に姿を現したのは赤い髪の女と、黒いローブを身に纏い、深くフードを被った男であった。
この騒ぎでさすがに起きたやいち達が、外へと出てくる。
「一体、何が起こっているんだ!?」
やいちたちはきょろきょろと周囲を見渡す。ようやく太陽が顔を出したものの、まだうす暗い視界に慣れず、目の前の物全てを確認ですることが出来なかった。
「あ、あれは……!」
真っ先に気づいたのはスピネルである。
「ヴァルロット!」
スピネルがそう叫んだ次の瞬間には、皆がそれぞれの武器を手に、戦闘態勢に入る。しかし、スピネルはもう一人、見知った顔を見つける。
(ブライハ!?なんでここに……)
そう考える間もなく、ヴァルロットが語りかける。
「また会ったな。お前らも重要だが、それより一層重要な奴を回収しに来たんだよ」
そう言って、ヴァルロットが指をさしている相手は……
「わ、私!?」
ナナシであった。
「お前のおかげで計画は数年単位で縮まった。無駄な抵抗をしなければ、戦わずに済むし、村の物にも一切触れずに帰ってやるよ」
しかし、やいち達はナナシを守るかのようにナナシの前に立ち、ヴァルロットを睨みつける。
「お前らの言う事を信頼できるか!!それに、ナナシを渡したら、ナナシ本人はどうなるんだよ!?」
「分かった、ナナシにも傷ひとつ、つけはしない。逆に丁重に扱ってやるよ。まぁ、計画の柱に据えるから、絶対安全ってわけにもいかないし、計画を阻止しようという奴らに襲われる可能性はあるが……それでもダメか?」
やいち達は動かない。




