鬼の末裔 5
「まさか、鬼族だったとは。でも、みんな角生えていないよな?なんで、アンタだけ立派な二本の角が生えているんだ?」
やいちがさらなる疑問をぶつける。
「いや、みんなちゃんとそれぞれの角は持っているんだ。ただ、通常の状態では現れない。我々はエルフとも、妖族とも違う魔力器官を持っていて、その器官が角なんだ。と言っても、彼らよりも特殊でね。抽出した魔力はそのまま自在の操ることが出来ないんだ。ほら、魔力を使う奴らって、魔法のほかに肉体の能力を向上させたり、体全身に纏って攻撃を防いだりするでしょ?でも、鬼族はそれが出来ない。魂から抽出された魔力はそのまま魔管と呼ばれる体内に張り巡らされた管を通って、肉体を強化させるんだ。そして、私以外の者達も魔力を普段よりも多くだそうと思えば、頭から角が生え、通常の肉体よりもさらに能力を向上させることが出来る。私の場合は、常に抽出している魔力が他の鬼族よりも多いから、このように角が常に出ている状態になるし、もっと出そうとすれば、角はもっと伸びる」
「自分の体について、かなり詳しんだな」
やいちがその説明を聞きながら、ふと全く別の疑問が出てくる。
普通、医者などであれば話は別だが、人間の体の構造を詳しく説明できるなど、そうそういないだろう。胃であったり、心臓、脳などの部位に関しても、ちゃんとやいち達が義務教育という概念が存在する世界で暮らしていたから分かりえる話で、こんな辺境に住んでいる者が、村長という立場であろうと、自分の肉体の構造をより理解している事に、少し違和感を感じたのだ。
「それは、近くに住んでいる者に優れた錬金術師がいてな」
「錬成術師?」
博士が少し興味深そうに追究する。
「ああ、彼はジョウキリからやって来たのかは知らないが、二百年近く生きてきた私が物心つくころには、この辺りに住み着いていた」
「村にはいなんだな」
「そうだな、彼は集団行動を苦手としているようで、何処を住処にしているかは知らないが、一人で籠って実験をしているみたいだ。まだ私が村長などという立場でもなく、まだ四十五歳の若い頃……人間の寿命に当てはめるのであれば、十三歳とかの頃だ。野外活動中の彼と数日間、共にしたことがあった。村の者たちは、彼には近づくなと言われていたが、私は彼に興味があって……。っと、危ない。話が私の昔話に向かいそうだったんな。とりあえず、彼が私の体を錬成術で調べ、鬼族の体を解明させたんだ。まだ時折、村の外で徘徊しているのを見かける。少し話を戻すのだが、本当に食料に困ったら、彼に助けを求めるつもりなのですよ」
「ふーん、そういえば結局、食糧難の原因って何なんだ?」
「それは、私にも分からん。最近、ゲブルウルフも見かけなくなってきているし、逆にベイルウルフが増えていたり、ベルフッドも何者かに伐採されているみたいだ。何が起きているかは知らないが、最近おかしなことばっかりなんだ」
ゲブルウルフとは、この辺りに生息している群れで生活する狼型の魔獣で、ガルウを襲っていたのも、このゲブルウルフであった。しかし、ベイルウルフは妖国寄りに住んでいる全く別の狼型魔獣で、この周辺にいること自体がおかしい。
しかし、確かにやいち達が妖国を出発しても、すぐに魔獣に遭遇することはなく、かなり空白地帯の奥まで入り込んでから襲われるようになった。
「その錬成術師が何かしているわけではないのか?」
「確かに、彼は時折大規模実験をする、彼ならば、その前に私に相談してくるだろう。だが、今回は一切何も聞いていないし、数日前彼に会ったが、彼も調査中だということだ」




