鬼の末裔 4
やはり、永久凍土という厳しい環境であるため、村の家屋もこれまで見てきた物とは少し変わったものになっていた。
無論、こんな所で建物の材料になるのは魔樹のベルフッドぐらいだが、それだけでは家の中を温めるのは難しい。故に、まるでかまくらのように、雪で覆うことで、外の外気を遮断し、内部が冷えることを防いでいる。
そして、やいち達はきっとこの村長、シュオウキの家へと案内される。やはり、村長という立場であるからだろう。周囲の家に比べ、大きい。
ガルウも一緒に歩いていたが、家の中にまでは入らず、そのまま出入り口で待機する。
(なんで、入らないんだ?もしかして、そういう文化なのか?)
村長の家には、招待されたものしか入れない。そんなしきたりでもあるのかもしれない。
その後、大きなテーブルがある部屋に通され、上座の方にシュオウキが座り、下座の方にやいち達が座る。そして、使用人からお湯を出される。これも、普通であればコーヒーであったり、お茶なのだろうが、こんな所にそんなものは無く、客人をもてなすことが出来る飲み物など、お湯ぐらいなのだろう。
「さて、体も温まったことだし、君たちは私に何か話があるのではないのか?」
「はい、実は……」
ここでべルフィーの事を話す。彼女が故郷を去り、空白地帯まで逃げ、今は居場所がないということ。そして、ここでしばらくは身を潜めたいということ。
シュオウキはそれを一言一句、しっかりと聞く。
「なるほど、それは大変だったな。私も悪魔ではないし、同胞の恩人の一人であるべルフィーさんの件、良いだろう。だが……開いている家は無いため、私の家であるここで同居する形にになるが、それでも良いか?」
「問題ないです!!」
「そうか、では、ここでしばらくは過ごすと良い。あと、家の前で待機しているガルウに今から村の中を案内してもらうと同時に、ここのしきたりとか、規律を教えてもらうこと」
「わ、分かりました」
そう言って、べルフィーは家から出ていく。
郷に入っては郷に従え、と言う。今後、ここで暮らしていくべルフィーには、この言葉を贈るのがぴったりだろう。
「さて、君たちも今日ぐらいはここで夜を過ごすと良い。さきほども言った通り、今この村には食料に関する問題がある故、食べ物は用意出来ないことは許してほしい」
「別にそれぐらい大した問題じゃないし、そこまでおもてなしされるつもりで来たわけじゃない。にしても、この辺りじゃあ食料が無いってことは多々ある事なのか?」
やいちがさきほどから疑問に思っていたことをぶつける。
「いや、私も数百年生きてきたが、食糧難になることはあまり無かった」
「一体、何が原因なんだ?私は錬成術の知識はある。頑張れば、食料ぐらいは錬成出来るぞ?味の保証は全く出来ないし、実際食える物とは思えないほどまずいのだがな」
確かに、錬成術は人間の細胞さえも創り出すことが出来る。のであれば、野菜、果物、はたまた牛や豚などの細胞も錬成して生み出すことが出来るのかもしれない。まぁ、博士自身が既に試して美味しくなかったようだが……。
「いや、そこまでは大丈夫だ。我々は普通の人間とは違って、魔獣を食える体を持っているからな」
「そういえば、アンタら。人間じゃないよな。エルフ族でもないし、妖族でもない。一体、何の種族なんだ?」
格闘家がそう言う。確かに、やいちも角が生えた種族など見たことない。
「私たちは妖族によって滅ぼされた一族、鬼族の生き残りだ。君たちも妖国からやって来たのであれば、ある程度妖国の神話は知っているだろう?大昔、妖国の支配をめぐって、鬼族と妖族の二種族の対立が起き、神々が妖族の味方をすることで、鬼族を滅し、妖族の単一国家が誕生した。しかし、そう簡単に何百万人もいる種族を亡ぼせるわけがない。妖族の奴らも全く気付いていないが、我々の先祖は空白地帯に逃げのびることで、鬼一族を存続させることに成功した。これが三千年前ほどの出来事だという」




