鬼の末裔 3
ハバ村には、魔獣などの外敵から守るためであろう、木で出来た大きな柵で取り囲まれていた。そして、村に入るための門には、二人の見張り役が立っていた。
「止まれ、お前ら、よそ者か!?って、お前は―」
そう言って、最初は槍を向けて、明らかに警戒していたが、ガルウが居るというのを目視すると、槍を下げ、警戒心も落ち着いてくる。
「良かった、無事だったんだな!!二日ほど経っても、狩りから帰ってこないもんだから、死んだと思っていたぞ!!」
「ああ、俺も死んだと思ったよ。でも、彼らが助けてくれたんだ」
「そうだったのか……君たち、ガルウを助けてくれて、ありがとう。彼は我々の大事な同胞だ。名前なども聞きたいが、それらは後にしよう。今、村長に君たちを入れる許可を貰いに行ってくる」
「じゃあ、俺も行こう、ということだ。みんな、まだ待っていてくれ」
そう言って、見張り役とガルウは村の奥へと行ってしまう。
「あ、そういえば、今更の話になるんだがよ。なんで格闘家って魔力が使えるんだ?」
普通、人間であれば上界人であったとしても魔力は使えない。エルフであれば、魔力を抽出する体内機関があり、それ以外の種族であれば、妖精と契約し、妖精を外部の魔力抽出器官として利用しない限り、ほぼ魔力は使えない。
やいちは契約をした、博士は錬成術でエルフの魔力抽出器官を造り、それを体に埋め込んだ。
格闘家は妖精と契約していないようだし、もしかして博士のように、わざわざ体内に入れたのだろうか?
「ああ、そういえばゲーマーには説明していなかったな。俺のこのグローブを印条が魔具にしてくれたんだ。だから、俺はこのグローブを通して、魔力を生み出すことが出来るんだぜ。まぁ、博士や、ゲーマーみたいに一度に多くの魔力は出せないがな。さすがに人工で造られた魔力抽出器官はそこまで便利性は無いみたいだな」
なるほど、それならば納得がいく。
そう話していると、再びガルウが村の奥からこちらに向かって歩いてくる。そしえ、ガルウの横には、頭に大きな二本の角を生やした女がいる。
「彼らが、俺を助けてくれた旅の者達です」
「そうか……。ガルウから一連の流れは聞いた。我らが同胞を救ってくれて、改めて感謝する。私はこの村の村長であり、一族の王であるシュオウキだ。普段であれば、客人としてもてなしたい所だが…最近はあまり収穫が無くてな。ベルフッドの肉しかない」
やいち達はベルフッドと聞いても、それが何なのか分からなかったが、事前に情報収集していた博士はそれがやいち達が食べていた肉のついた魔樹で、空白地帯に住む者たちはこの魔樹をベルフッドと呼んでいるのだ。
そして、簡単に手に入る食材ではあるものの、肉を刈り取ってしまえば、そのベルフッドが再び肉を生むのは一年後、待たなくてはいけなくなる。だから、住民の間では食べ物が無くなった時に食べる非常食とされている。
それしか食べるものが無い、ということは……。
「もしかして、今かなり村は危険な状態ってことか!?」
博士だけが、それに気づく。
「なるほど、あなたはかなりの知識人のようですね。私も空白地帯を横断する旅人を見てきましたが、この辺りの事を知っているものなど、ほぼいませんでした。まぁ、ここで立ち話するのもなんですから、中に入ってください」
そして、ようやくやいち達は村の中へと入ることが出来た。




