鬼の末裔 2
男は「はッ!」と目が覚める。
この寒い中、男は上半身裸であるのにも関わらず、あったかい。
体を起こして周囲を確認する。
ズキッ、ズキズキッ!
体全身に痛みが奔る。どうやら体中に怪我をしているようだ。脳が覚醒したばっかりのため、肉体の感覚が最初麻痺していたみたいだが、今よく見てみると、体が包帯でぐるぐる巻きにされている。だから、この雪の中上半身裸にされていたのだな、と理解する。
そして、雪の中、どうやったのかは知らないが、上手く火をつけて、焚火をしている。そして、それを囲むように五人の男女が座っている。
「おっ、目が覚めたみたいだな」
そのうちの一人がこちらに近づき、自分と目線を合わせるため、わざわざしゃがみこんでくれる。
「一応、回復魔法を使って治療したけど、さすがにスピネルでも完治させるのは難しかったみたいでな」
『しょうがないでしょ。私は炎系の魔法しか使えないのよ。そもそも回復魔法が専門外なの』
「誰も文句は言ってねえよ。さて、体の調子はどうだ?」
「……あ…えっ…?」
まだ頭が混乱している。
そういえば、俺は何故怪我をしているんだ?なんで、村にいないん……そうだ、俺は狩りに出ていて、それで?そうか、魔獣の群れに襲われて……そこから…えっと。確か必死に逃げたが、群れの中の一匹が執拗に追いかけてきて…結局、食われかけた……。
「アンタらが…助けてくれたのか?」
「そうだよ、あっ、とりあえず自己紹介しておくか。俺の名前はやいちな」
「やいち……名前からして妖国から来たのか?」
「まぁ……そうだよ」
出身地ではないが、実際妖国から来たのは嘘ではないし、ここで上界人だとか言って相手を混乱させるよりかは、このまま妖国出身者だと思わせた方が良いだろう。
「一瞬奴らかと思ったが、どうやらただの旅の一行みたいだな」
「奴ら?」
「ああ、なんでもない。独り言と思って構わない。はぁ、ようやく思考回路が元通りになって来たよ」
そう言って、男はゴリゴリッ!と首を大きく鳴らす。
「さて、とりあえず俺を助けてくれた事に感謝する。俺の名前はガルウ。この近くにあるハバ村の者だ。あと、さっき尋ねてくれたが、今の俺の体に異常はない。痛みこそ感じるが、命に別状はないよ。そもそも、俺たちの体は人間より頑丈だからね」
「そうか、なら良かった」
「話の会話からして、女の子が回復系の魔法で治療したみたいだが……」
そう言って、辺りをきょろきょろと見回す。が、さきほどやいちと会話していた者の姿だけが見えない。
『ああ、私はここよ。妖精のスピネル、よろしく』
やいちのズボンのポケットから赤いきれいな宝石が出てきたと思えば、光り出して喋り出すではないか。
「なるほど、妖精だったのか。俺の治療してくれて、改めて深く感謝する」
そう言って、大きく頭を下げる。
その後。
もう少しガルウの体と頭が落ち着いてきた所で、お互いの事を話し合う。やはり、恩人とはいえ、初対面の人間であれば、警戒をしてしまうのが人である。だから、多少の素性は話すことにした。
ガルウは一体何故、自分が魔獣に襲われていたのか。何しに村の外へ出ていたのか。
やいち達は、シンへ向かうために空白地帯を横断していること。べルフィーを彼の住むハバ村に移住させたいこと。
ある程度、お互いの素性が分かれば、警戒を緩めることが出来る。
そして次の日、彼の案内で無事、ハバ村に到着した。




