鬼の末裔
数日後、やいち達は村へと向かってこの魔樹林の中を歩いていた。
「なぁ、こっちで正しいのか?」
「知らないよ。私だって初めて空白地帯に来たんだし、正確な地図も何処にも売ってなかったからな……。でも、空白地帯に入る前に集めた情報から推測すると、こっちの方角にあるって思うんだけどまぁ」
このメンバーの中で、空白地帯を事前に調べていたのは博士だけであったので、村までの道のりは博士の知識だけが頼りであった。
「お?少し待て」
先頭を歩いていた博士が急に止まり、しゃがみこむ。
「何か……獣の足跡と人の足跡がある。む、数メートル先には、雪の上に血痕もあるな。どうやら、狩りでもしていたみたいだぞ?」
この雪の降る中、まだ痕跡が残っているということは、つい最近のものであるというのは誰でも分かることであった。
「っていうことは、近くに人がいるってことか?」
「みたいだぞ…………って……この血、獣のものじゃない。人間だ……」
その一言で、みんなの警戒心が一気に引き上げられる。それと同時に、この中で戦闘を得意とするやいちと格闘家、スピネルが急いで獣の足跡を追いかけ始める。
もしかしたら、まだ怪我した者は獣に襲われている最中かもしれない。
べルフィーとナナシは戦闘が出来ない。そのため、ついていっても邪魔にしかならない。だからといってここに置いていけば、別の魔獣に襲われる可能性がある。そう一瞬で判断した博士はその場に残ることにした。
「足跡と血痕は続いているな」
「だが、やはり大分やばそうだな。足跡の方をよく見てみろ!」
格闘家に言われ、よく観察してみると、足の形が崩れている。これは、しっかり歩けておらず、かなりおぼつかない足取りだ。これが、獣から慌てて逃げているからか。上手く走れていないからなのか。どちらにせよ、危険な状態であるのは変わりない。
「見て、あれじゃない!?」
スピネルが指をさす方向には、一体の魔獣が。そして、その口には、一人の男が咥えられている。魔獣の犬歯が男の胴体に突き刺さっており、血がだらだらと出ている。そして、足にも、噛まれた大きな傷があった。
「おい!!」
やいちが大きな声で叫び、魔獣の意識をこっちへと向けさせる。
「グルゥゥ…ッガァ!!」
敵意丸出しであるやいち達を認識すると、男を地面に置き、その鋭い二つの目でこちらを睨みつける。
先に飛び出したのはスピネルであった。が、それに少し遅れて格闘家も一緒に獣に向かって走り出す。
「おらぁ!!」
まず最初に格闘家が魔力を込めた拳で強い一撃を放つ。
魔獣も魔力を肉体から放出させ、バリアを展開。格闘家の拳は魔獣には当たらず、そのまま威力を殺され、止められてしまう。
「ちぃッ!」
その間にスピネルは魔獣を中心に大きく回り込んで、気絶している男を救出する。そして、魔獣と距離を取り、叫ぶ。
「これで巻き込む可能性は無くなったわ。もう大丈夫よ、本気出しても!!」
「ああ、分かった!」
格闘家は後方にいるやいちを確認すると、やいちの右手からバチバチィ!と電気を激しく纏わせている。格闘家もその一撃に巻き込まれないよう、大きく後ろへ飛び下がる。
「喰らいやがれッ!!」
バシュンッ!と一瞬、眩く光る物が高速で飛んだかと思えば、その直後に魔獣は体に大きな穴を開けられて倒れこむ。
「どうやら、もう終わったようだな……」
遅れて博士たちがやってくる。
「すごい……。なんなのよ、あなた達……」
これほど戦闘能力の高い集団など、そうそういない。
べルフィーはシン国に居た時、聞いていた。流星の勇者が現れ、世界を旅している、と。
もしかして……彼らが…。




