空白地帯 4
これらの経緯を知り、やいち達は考える。
「おいおい、向かってるシンっていう国、結構ヤバそうだな……。無事入国できるのか?」
「うーん、一応他国からやって来た別種族に関しては問題ないと思うし、NEU加盟国に所属している国の国民は、それぞれの加盟国に自由に行き来するのは許可しているから、シンに逃げ込んだりしている人たちも珍しくないよ。でも、やっぱりある程度差別はされるでしょうね」
やいちの疑問にベルフィーがそう答える。
「あ、でも私を助けてくれた彼女を利用すれば、なんとかなるかも……」
「それほどアンタを助けてくれた奴って、信用できる…っていうか、頼りになるのか?」
「そうね、彼女であれば、シン国軍も手だし出来ないし、NEU反発国内でもかなりの地位にいるしね」
そんなに上手く立ち回っている者がいるみたいだ。にしても、ジャーナリストで、知りたくないものを知り、絶望を見てきたはずであろうベルフィーがそれほど信頼している存在。
一体何者なのだろうか。
「そういえば、ベルフィーはこれからどうするつもり?私たちはシン国に向かっているし、アンタの話を聞いても、その目的地は変えられない。シン国から離れようとしているアンタとは全く目的地が変わるんだけど……」
やいちの次に今度は博士が質問する。
「私も色々考えてるんだけど…このまま妖国にでも亡命しようかな?と考えたりして……けど、妖国は島国だし、このまま歩いてはいけないよねぇ」
「それに関しては、問題ないよ。今、妖国の季節は冬で、氷で大陸と繋がっている。私たちもそれを利用して空白地帯まで歩いてきた。でも、その装備で、しかも食料無しでここから歩くってなると、難しいなぁ。昼も夜も頑張って歩き続ければ、一週間で行けるけど、そんなのは不可能だし、最低でも半月以上はかかると考えて……うん、無理っすね。食料になるような、例えばこの辺りに生えている魔樹は妖国へ向かえば向かうほど少なくなるし、私たちがこうして焚火出来ているのは、炎系の魔法が使える仲間がいるからの話で……あー、話が長くなったけど、とどのつまり無理ってことだね」
「どうしようかしら……」
「おい、博士。お前この前言ってたよな。空白地帯にもある程度人が住んでるって」
格闘家が思い出したかのように、言う。
「あ、ああ。そうだが」
「だったら、ソイツらに頼ったらどうだ?べルフィーさんはエルフだし、ある程度の魔法なら使えるんじゃないのか?であれば、原住民の村でもある程度活躍して、それなりの役割を持てるだろ」
「え、ええ。一応、シンでの義務教育内で魔法を習うことが必須になっているから、使えはするわね。どれでも、日常で扱える簡単なものよ。回復魔法なんて、こけた時に出来る擦り傷を治すレベルだし、炎もマッチと互角よ」
「それでも、魔法が使えるんだったら、試してみる必要があるんじゃないのか?」
しばらく、ベルフィーは考えていた。しかし、自分が生き残るには、それしかないと思い、格闘家の案に乗ることにした。その他のやいち、博士、ナナシ、スピネルも良い案が思いつくことは無かった。
しかし、べルフィーを一人で行かせるのは危険だ。道中魔獣に出くわすかもしれないし、魔樹の中には食肉植物がいるという。なので、原住民の村まで送ることにした。




