空白地帯
空白地帯……そこは一年中大地は凍り、常に雪で真っ白な世界が造り続けられている北方の地。
そこでは、色んな魔獣が生息し、見える木、葉、全てが魔樹である。また、そこに住む原住民もこの環境に適した生活、体に変化している。
例えば、普通の人間は魔獣を食うことは出来ない。魔力を使えるエルフなどであれば問題ないが、魔獣の死体に残り続ける魔力を人間は分解できず、そのまま腹痛や体調不良へと繋がる。しかし、空白地帯の原住民は人間であるにも関わらず、消化させることが出来るのだ。
人間までも劇的に変化させるこの空白地帯……そこにやいち達こと流星の勇者一行は足を踏み入れていた……。
「はぁ、くそ暑ぃなぁ!」
そう言いながら、額から汗を流す流星の戦士こと、格闘家であった。
「お前が汗っかきなのは知ってるが、我慢しろ。厚着してないと凍死するぞ」
そう忠告するのは流星の賢者こと、博士であった。
「分かってるよ、でもよぉ、こんな厚着して歩き続けていると、どんだけ寒くなっても、体温は爆上がりしてしまうだろうがよぉ!」
「……まぁ、そろそろここらで休憩でもしないか?ナナシも疲れているだろ?」
「ですね、私もそろそろ休みたいです」
この旅に慣れてきているのか、かなり体力がついてきたみたいだ。戦闘では役に立つことは無いだろうが、それでもなお
そう提案するのは、流星の勇者こと、やいちであった。
「そうだな、じゃあ一旦スピネルの力で辺りの雪、氷を溶かしてくれないか?」
「オッケー」
そう言って、スピネルはやいちのズボンのポケットに入っていた赤い宝石の中から飛び出し、少女の姿として現れ、手のひらから炎を出す。
「じゃあ、燃やせる物を集めるか……」
「そういえば、こんな永久凍土によく木が生えているなぁ」
やいち達の周囲は雪で覆われており、決して植物が耐えられるような空間ではない。しかし、あらゆる所に木が生えており、森を形成している。
「そりゃあ、コイツらは地から魔力を吸収して育つ魔樹だからな」
「はえ~、植物が魔力を持つなんてな……これを使って焚火でもするのか?」
「もちろん、根っこの部分とか、あとは葉の部分は燃えるな」
「枝とか使えるんじゃないのか?」
「枝は食料にはなるが……焚火に使うもんじゃないな」
「というと?」
「まぁ、見てな」
そう言って、木の枝を博士は勢いよくバシッ!とへし折る。すると、なんとそこからドクドクと勢いよく血が噴き出るのではないか。
「おわっ!?」
「変な声を出すなよ。空白地帯に生殖する魔樹はこの寒さに耐えるべく、なんと体温を持つ面白い進化をしているんだ。しかも、この肉、ちゃんと食えるし、血は飲めるんだぜ?」
そう言って、試しに博士は折れた枝の断面から出ている血を口の中に一滴入れてみる。
「うわぁ~、絵面がヤバいぞ、お前……」
「おん、飲めるが、まずい。鉄の味しかしねぇ。大人しく雪溶かして、飲むのが良いな」
そう言いながら、樹皮をバリバリとはがし、肉をナイフでキレイに刈り取っていく。
(おいおい、どこぞのホラー映画だよ……)
こんな血がだらだらと流れていて、見るに堪えない。叫び声などが無いのが、唯一の救いであった。
「安心しろ、コイツらには神経が無い。だから、痛覚なんてないから、心配する必要はないさ」
でもぉ……と思いながらも、やいちは温まるための焚火の準備を始めるのであった。




