第95話 大統領官邸占拠事件 後編
先生は、私に何点かアドバイスして、この後で先輩から呼び出しがあるって言って、元の世界に戻っていった。
先生が敬意を払ってる先輩って、多分勇者の中でもすごい人なんだろうけど、どんな人なんだろう。
先生って一応、年長者とかには敬意を払ってるっぽいし、あの先生が二つ返事で無条件で会いに行くって、多分すごい人なんだろうな。
そういうわけで、私とジローは、先生が教えてくれた空中飛行方法で、シシリー島からパリスに移動する。
睡眠や休養は、フランソワに上陸して、パリスに着いた後でいい。
ワンコのバロンも抱き抱えながら、途中で魔法のポーションを飲みながら、防寒衣を着て中央海上を飛行し、途中コルス島で休憩しながら、何本も魔力回復ポーションを飲んで一気に移動した。
うん、ぶっちゃけ超遠い。
強盗しまわって、フランソワの地理は頭に入っているけど、めっちゃ遠いってこれ。
まるでパーキングで休憩のたびに、栄養ドリンク飲んでトイレに行った後、再び目的地目指す長距離ドライバーみたいだ。
「懐かしい。昔の話だが、こんな感じで旅をしたのを思い出す。ヤミーお嬢様やマサヨシめは、私の防寒対策とか全然考えてくれなかったから、凍え死にそうだった。あいつなんて最初酷かったんだぞ、まるで私をボールみたいに敵に投げつけたりしてな」
「うわぁ、さすが兄貴ぃ……無茶苦茶やいびーさぁ。俺ぁが代わりに謝りますー、わっさいびーん」
バロンがなんか思い出に浸りながら、呟いてるけど、きっと先生の事だから、こんな感じで無茶苦茶な旅してたんだろうなあ。
ていうか、ワンコ敵に投げつけるとかひどっ!
それとバロンは先生が連れて行けと言った。
彼の嗅覚は冥界でもトップクラスで、ケルベロスの次に凄いらしい、ケルベロスがどれくらい嗅覚が凄いのか知らないけど。
そしてバロンの嗅覚は、比嘉兄弟との戦いで実証済み。
見た目柴犬っぽいけど頼れる人、いや犬だ。
リオンの街で朝食をとり、食休みする間もなく時間が惜しいので、また空を飛んでパリスまで到着したのはお昼だった。
夜通しぶっ通しで海飛んで、ここまで来るのに休憩も入れて10時間以上かかったよ。
飛行機とか、多分先生の組織が支配してるスカンザ共同体にしかないだろうし。
「にりぃーさー。でーじ、慌てぃはーてぃさー、マリーちゃん大丈夫? 疲れてない?」
「めっちゃ疲れた」
とりあえず、休憩できる宿を探そう。
仮眠取らないと流石にきつい。
なんだろう、地球と違って魔法やアイテムっぽいので肉体的な傷とか、疲労は多少取れるんだけど、精神的なケアみたいのとか、娯楽とかあんまないんだよね、この世界。
あ、モンマルトーの丘にちょっと豪勢なホテルっぽいのある。
ここでちょっと一休み……。
「!?」
気のせいだろうか、ニコニコしてるジローの顔の目が一瞬見開いて、ちょっといやらしい顔付きになった気が……いや、多分気のせい、疲れてるしね。
とりあえず、持ち金が足りるかどうかだけど休憩だし、別々の部屋で……。
「はいさい、受付のお姉ちゃん。一番いい部屋頼むさぁ、景色良さそうなところとか、ゆたさる感じなー。三人部屋さぁ」
「えっと、お客様。犬はちょっと……」
ジローは受付台に金貨ジャラジャラの革袋をドンと置く。
そして受付嬢の手を握った。
「君、ちゅらかーぎーから通常料金よりも多めにするさー。俺ぁのお願い聞いてほしいなー」
「あ……はい、こちらへどうぞ。最上級のスイートにご案内します。そのーしかしこれは少し貰いすぎで……」
「君のチップでいいさあ、これは俺ぁからの気持ちさー」
あ、受付嬢の人目がうっとりして、私達を部屋に案内した。
なんていうか、天然の女たらしだこの人。
全然不自然ぽく無く、普通の感じでやってのけちゃってる。
「ふいー、これで少し休めるさー、じょーとーやん。なかなかセンスいい部屋さー。ほら、シャンゼリーゼ通りから、ぽってかすー共に占拠された大統領宮殿とか見渡せるやん」
ジローは私を手招きして、窓の外の景色を見せてくる。
「ほんとだー、すごいいい景色」
すると、いきなりジローが私の肩に手をかけてきたけど、えっと……これって……。
「好きな女とこういう景色観るの最高やん。俺ぁ、君のくとー好きやん」
えっと、ちょ、え?
確かにジローは仲間で、前世も今もイケメンだけど、えっと私こんな事初めてで、心の準備が……その……。
あ、ジローが優しく髪の毛撫でてきて……。
どうしよう……。
ちょっと胸がドキドキして、えっとこれは……。
ジローの顔がどんどん迫ってきて……。
「ふむ、メスを口説くのはいいが腹が減った、上等な肉を持て」
「あ、わっさいびーんシーサーさん。さっそくホテルの奴に用意させるさー」
バロンが尻尾振ってお座りしながら、ご飯を要求してきた。
なんか、良かったのかよくないのか複雑な感じだけど、ま、いいか。
「さあて、疲れたしちょっとベッドで寝ようっと」
私は、ジローがウェイトレスを呼ぶ間、防寒着脱いでベッドに横になった。
ドレスにしわついちゃうけど、どうでもいいや眠いし、今はそのほうが楽。
すると、ジローは鼻歌しながら服脱いで、ベッドまでやって来る。
「据え膳食わぬは男の恥。せっかくのいいムードやん……ここは一発」
え、ちょ、そんな意味じゃないって。
でも、体が泥のように重くて疲れてて、私。
すると、バロンが思いっきりジローのお尻に噛みつく。
「あっがあああああ、シーサーさん!? なんだばああああああ」
「メスを口説く順序が違う! まずはオスの方がメスに臭いを嗅いでもらって、メスが承諾しオスを受け入れれば交尾だ! 以前マサヨシにその話を聞かせてやったら、さすが兄貴だと感心しながら聞いておったぞ!」
いや、意味わかんねえしそれ感心しちゃうんだ先生。
もういいや寝よう、そのほうが楽だ。
そして、目を覚ますとすっかり夜になっていた。
「うむ、私がケルベロス公と出会った時はな、お互いに魔王同士で敵同士であったが、一緒に冥界で仕事をするうちに雄雌の間隔が芽生え」
「はえー、さすがやさー。すりでぃ……んごー!」
「おい、また寝るな、愚か者が! ここから先が肝心な話で」
えぇ……ジローが全裸で正座しながらバロンの、のろけ話聞いてるんですけど……。
私が寝てから、ずっとあんな感じだったのか。
すると、私の水晶玉に着信があった。
龍さんからだ。
「はい、マリーです」
「現場に着いたようだな、ジローの言う通りイワネツから連絡がきた。実際に話してみて、わかった事がある」
ジローも眠たい目を擦りながらこちらにやってくる。
「それで、どうでした? 何かわかりましたか?」
「あいつの本質は、まるで餓鬼だな。傷ついた心の子供のまま体だけ大人になり、人間的に成熟もしないまま、餓鬼大将をやってるような男だ。永遠の反抗期とも言えるか?」
ああ……そんな感じなのか。
なんとなく彼の人となりがわかった気がする。
「だが、信頼には値する男でもあるな。私との会話で嘘を言った感じはなかったし、頭の回転も早いというか、おそらくかなり切れ者だな。それとジローの言う通り、根は悪には染まっていない気はしたよ。ただし、暴力と盗みに生きているような、良心というか、そういう人間的なものが欠如しているところはありそうだがね」
「そんな感じですか、やはり」
「うむ。そしてあの男は、とにかく自己中心的だ。だが上に立つ男は皆、そんなもの。何もかも自分が決めなければしょうがない性格をしている、そう私はみた」
やはり、龍さんは前世で大船団の船長や海軍将軍、こっちの世界でも皇太子やってただけあって、人の本質を見極める能力に長けてる。
「すりでぃ、結局あいつーは信頼出来るっちゅうわけか?」
「今はな。だが、シミズは奴と敵対状態になるやも知れんし、我が友ジョン、デリンジャーとは、ソリが合うかどうかだが」
たしかに、そうだ。
デリンジャーは、人殺しや殺人を憎む人。
彼とイワネツの相性は、もしかしたら最悪かも知れない。
「それで、確かそっちでロバートという男を召喚する手筈となっているな? 彼のことは知らないが、シミズと兄弟分だったか?」
「はい、あの人は信頼できる人です。アメリカのニューヨークで、イタリア系組織、マフィアのトップだったようです。そして勇者でもある」
「ふむ、イタリアか。確かカトリックの総本山だったか? 君が信頼できると言ってるならそうなんだろう。今、時刻にして20時といったところか? ならば彼を召喚し交渉を担当させるといい。その隙に君たちは大統領宮殿に」
なるほど、ロバートさんを向こうと通話させて、隙を突く作戦か。
私達は、ジローが用意させたホテルの食事を取り終わり、彼を召喚する。
彼はやはり強力な力を持つので、私とジローの生命力と魔法量の力を合わせ、もしも戦闘状況になってもなるべく長く活動できるように指輪のダブル召喚を試みた。
「いでよ、勇者ロバート! 私達に力をお貸しください!」
眩い光と共に、ロバートさんは召喚された。
ビシッとスーツを着て、相変わらず清潔感が漂う感じで、葉巻を口に咥えていた状態で。
どうやら、私達に召喚されるのを待っていたようだ。
「久しぶりだなマリー君、事情は兄弟から聞いている。ミスターの危機だそうだな? 相手は、あの伝説のベイビーフェイス・ネルソンと、赤いドレスの女のアンナか」
「伝説の男なんですか? 相手も」
「そうだ、ベイビーフェイス・ネルソンは当時シカゴ最強のギャングと呼ばれた男。その最後は壮絶で、身体中蜂の巣にされながら、敵対するFBI捜査官達を道連れに、皆殺しにしたくらいだ」
うげっ、それが本当ならヤバい奴だ。
デリンジャーも、自分より強いって言ってたっけか。
まず、手筈としてはジローが根回ししてくれた元憲兵騎士団、今は連邦保安局の面々とフランソワ広場で落ち合い、救出作戦を開始。
ロバートさんは、相手の気を引きながら通信に夢中にさせて、頃合いを見計らって私達が突入開始した時に、私達と合流する計画を立てる。
「彼らと通信をつなげてくれ、私は彼らの事は詳しい。憧れだったからな、デリンジャーギャング団は」
私は、大統領宮殿にいるレスターに通信をつなげた。
「よう、待ってたぜ通信を。ジョンの野郎は寝ちまっているがな」
「あなたと話がしたいって方がいます、通信を代わります」
ロバートさんに通信を代わった。
「あなたが伝説のネルソン、ビッグ・ジョージか? あなたと話が出来て光栄に思う。私はロバート・カルーゾと言う。この世界では、栄えある憧れのデリンジャーギャング団のメンバーにしていただいた」
「なんだ、俺を知ってる野郎か? その訛りはニューヨーク訛りだな、おめえも合衆国出身か?」
「ああ、その通りだミスターネルソン。あなたも一時世話になってたかのアルカポネと兄弟分だった、ラッキー・ルチアーノや偉大なフランクが作った組織と同じ流れ、6大ファミリー含む、とあるコミッションの議長もしたこともあった」
「6大? ニューヨークの組織は5大ファミリーだろ? お前適当なこと言ってやがるのか?」
「それについては、表の話だミスター。前世の話だが沈黙の掟により訳は話せない。が、そうだな、私もデリンジャーギャングだ。あなたに敬意を表して訳を少し話そう。私のファミリーは表舞台には沈黙の掟により決して出ないが、ニューヨークの不良共は誰もが知っている。父と祖父の世代が偉大なフランクと取り決めた話だ。我々以外のファミリーは、時代の流れにより父親がシチリアやイタリアの血を引いてれば、組織に入れる。だが、やはり我々はシチリアとの関係や、欧州やカトリックとの血とルーツの関係は切れないのだよ。だから決して表には出ない我々のようなファミリーが、純潔性が必要となったのだ……。あなたが生きていた時代に決まった話だ」
ロバートさんが話をしている間、私達はそそくさと部屋から物音を立てずに出て、ホテルに外出の許可を取ってフランソワ広場に向かう。
広場にはすでに連邦保安局が軽装鎧に身を包み、剣やロマーノ製のライフルで武装していた。
「数が多いさあ、こんな人数じゃあ勘づかれるさー」
その時、黒い背広を着た集団が姿を現す。
全員若い感じで、その中にはフランソワの宮殿で会った、元アサシンのハッサーンもいる。
「我々は連邦保安局治安介入部隊、黄金竜騎士団です。ロマーノ元首ロマーノ公と、ヴィクトリーのマリー姫殿下、我々こそフランソワの精鋭、我らが英雄の大統領閣下救出を担当いたします」
すごい、みんなロマーノ製のライフルとか持ってて、面構えが他の騎士団と全然違う。
「それに我々は閣下を、前の人生と言ってもいいのか、知ってるのです。彼は、前の世界でも英雄で、皆のリーダーだった。この世界でもです。それに、我々はレスターという人物も、うっすらとだが覚えている」
この人達は、多分前世でデリンジャーギャング団だ。
前世の記憶を思い出していないだろうけど、みんな背広姿が格好よく決まってて、よく見るとイケメン揃い。
「んちゃーなるほどねー。つまりここに集まってるのも囮ってやつさぁ、マリーちゃん。やっさ、すりじゃあぽってかすー共とぅ喧嘩すんさー」
ジローは、魔力銃ウッズマンに長い筒のような消音器を具現化した。
「みんなー、獲物にこの筒ー具現化しみーんさぁ。音が抑えられて命中精度上がって便利さ―。あんしぃ、連発すると効果がすぐなくなるし、弾丸の速度抑えんとぅ音鳴るさー。定期的に魔力使ってまた具現化しなきゃならんさ」
これ超便利そう、私のルガーちゃんにもつけておこうかな。
「あ、兄貴とかマリーちゃんの回転式にはあんま意味ないさー。弾倉むき出しやくとぅ、音ぬ派手んかい鳴るさ」
え? そうなんだ。
せっかくカッコイイ感じでアクセサリー付けられると思ったのに。
こうして突入チームを我々は分けた。
ジローが指揮するAチーム。
私が指揮するBチームに、ワンコのバロンも加わる。
まず、デリンジャーが軟禁されている可能性が高いのは、全体が見通しやすい大広間のフレイア礼拝堂。
騎士団によるとレスターも馬鹿じゃないから、フランソワの連邦保安局の動きが丸見えであると仮定して、大人数の人質を一か所に集め、手下のギャングを配置するには、最も適した場所らしい。
次に、デリンジャーの軟禁場所として考えられるのは建物2階の旧王座の間。
ここは窓もなくてそこそこ広いから、入り口とかに障害物とか色々置かれてると、突入するのはかなり難しいという。
バロンに、そのあたり嗅覚で探ってもらう。
「うむ、突入作戦か。懐かしいな……お嬢様とマサヨシ達で魔界の大魔王宮殿に乗り込んだものだ。対象の臭いは2階と1階を定期的に行ったり来たりしていて、おそらく用足しで行ったり来たりしているのだろう。今は……1階に多くの人間が集まっているが、デリンジャーという男は2階だ。主犯格のメスの臭いもする」
なるほど、あとは私達の突入をどこからやるかだわ。
この大統領宮殿、2代前の王が作ったようでめっちゃ広いし、入り口は無数にあるけどレスターはおそらく手下を、ポイントポイントごとに配置しているだろう。
「うむ、銃を持っている男達の臭いの配置は、こことここ、ここだ」
バロンは肉球に赤インクを付けて、敵の配置エリアにペタペタとマーキングしていく。
そして黒いインクで、人質の臭いの位置をペタペタとマーキングした。
敵は全部でレスターとアンナを一人とカウントして、20人か。
あとは、レスターとロバートさんの通信状況だけど……。
私はホテルの部屋に、自分の水晶玉を通話モードにしておいているから、会話の内容は騎士団の持っている水晶玉で聞こえるはず。
「さすがジョンだな、後世ではデリンジャーギャング団は英雄視されてんのか」
「ああ、ミスターネルソン。あなたも有名だ。FBI捜査官を皆殺しにした、バリントンの戦いは我々の伝説となっている。それにアイオワのメイソンシティ第一国立銀行強盗事件も」
「ほう、よく知ってんじゃねえか。ジョンの野郎、俺がリトルボヘミアでやった、サツと州兵相手の銃撃戦で死んだって思ってたらしく、アンナのアバズレが知らせを聞いたジョンの野郎泣いてたって聞いてな……。ったく、くたばるわけねえだろっての、あれくれえで。俺が死んだのはジョンがくたばった後だ。FBIのフーバーとかいうナード野郎が、俺を公共の敵ナンバー1なんかに指定しやがった」
この人も公共の敵ナンバー1だったんだ。
もう一人の犯罪王が、彼と言うわけか。
「それであなたは、決戦の地……あなたがミスタージョンの仲間になったイリノイで、伝説の戦いをしたという事か。FBIデリンジャーギャング特捜班、マンハントを指揮したカウリー警部との対決」
「そうさ。俺の大切なダチ公たち、ホーマーやプリティ・フロイド、ハミルトン、トミー、そしてジョンを、汚え手を使って連邦捜査局の野郎らぶっ殺しやがった。ピアポントを電気椅子に送りやがったクズ共だ! だから俺は、あいつらに報いるために正々堂々男らしく戦った! 国道12号線でサツ共誘き寄せて、俺のマシンガンとライフルで穴だらけにしてやったぜ。俺はジョンや、仲間の仇を取ってやった。体中穴だらけにされちまったけどな、ハッハッハ」
そうか、地獄から蘇ったのはやっぱり彼に会いたかったんだ。
生まれ変わって、また一緒に仲間になりたかったのが彼の動機だ。
けどそれは、殺人を伴う行為は、デリンジャーが一番望まなかったであろう形。
そしてアンナはもう一度彼に会って、今度こそ彼を愛して、添い遂げようとしている。
「なるほど、あなたもまた男の中の男。FBI長官のエドガー・フーバーか……彼はその後、影の大統領と呼ばれ、絶大な権力を我が物にした。もちろん愛国者としての彼は評価すべきだ。だが彼はアメリカ大統領暗殺や、公民権運動妨害の負の側面が大きい。彼の正体はKKKだったからな」
「けっ、カス野郎が」
「だが彼は、やり過ぎた。我々との盟約も裏切ろうとしたから、父達世代が当時の大統領や議会に、彼を潰すネタを渡したのさ。秘密と権力の座を追われるプレッシャーと恐怖に、彼の心臓は持たなかったようでね、ポックリ逝った。そして彼のスキャンダルな話はな……」
ロバートさんが指を二回鳴らした。
私達が突入する隙を与える合図。
「おう、なんだよ勿体ぶるんじゃねえよ、ロバート。後輩のくせに生意気だぞ、早くそのネタ教えろ」
「彼は、副長官とデキてた。ホモだったのさ。国家機密ってやつだ」
「はーはっはっはっは! こいつは傑作だ! やべえよ腹が捩れそうだ、あーっはっはっは!」
私達は顔を見合わせて、二手に分かれて敵勢力を無効化するため、大統領救出作戦を開始した。
次回バトル回です




