↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したら楽をしたい ~召喚術師マリーの英雄伝~  作者: 風来坊 章
第三章 英雄達は楽ができない
96/311

第93話 皇太子暗殺未遂事件 

 ごきげんよう、マリー・ロンディウム・ローズ・ビクトリーです。


 今、私はとんでもない事態に見舞われている。


 超大国バブイール王国皇太子にして私達の仲間の龍さん、元倭寇の大海賊鄭芝龍ことアヴドゥル・ビン・カリーフが、突如ロマーノ連合王国南部最大、都市ネアポリに意識不明の重体で姿を現した件。


 おそらくは、風の魔法で空を飛んで無我夢中で脱出してきたのだろうか、体中傷だらけで血液が不足している状態なのか体が冷え切ってしまってて、私も血の臭いでむせ返りそうになる。


「あぎじゃびよー! 急いで手当てするさ。(ぬー)でぃこいつが!?」


「わからない! わからないけど早くしないとこの人死んじゃう」


 さっきまで比嘉大吉が憑りついていたペチャラが、急いで応急処置と回復魔法で手当てする。


 が、駄目。


 出血は止まったけど、意識が全然戻らない。


 この人は前世で海賊以外にも、前世であの宮本武蔵から剣術習ったり海軍の将軍とかしてたり、フレイアとの戦いで勝利の決め手になったようなこの人が、ここまでボロボロにされるなんて意味がわかんないし。


「マリー様、おそらく何らかの毒も作用しているかと。おそらく神経毒の一種で、それを証拠に手足にしびれがあるのとこれを見てください」


 ペチャラは、アヴドゥルの靴を脱がすと足の裏を縦になぞるように、持っていたペンで刺激を与えたら、彼の足の親指が甲の方に反り返り、他の4本の指がじゃんけんのパーのように開く。


「自分の足でやっていただけるとわかると思いますが、通常ですと足の親指は下方向に屈折します。しかしこの患者さんの反応は、神経系異常をきたしてると所見できます。一刻も早く解毒しないと命の危険が。それと、もし助かっても重度の障害が残る可能性も」


 どうしよう……。

 私の仲間が、このままだと。


「ふむ、娘よ。これを使うがよい、冥界の状態異常の妙薬だ」


 冥界のワンコにして先生が兄貴と呼んでいるバロンが、口からぺっと、黄色の液体が入った試験管を吐き出す。


 そうか、先生と女神ヤミーが小人化を治した時の回復ポーション。

 

 これがあれば、龍さんを治療できる。


「ありがとうございます」


 私はバロンに頭を下げて、龍さんに急いで試験管の中身を飲ます。


 だがだめ、口には含むけど感覚がマヒしているのか飲み込めない。


 どうしよう、せっかく治療薬があるのに注射か何かで投薬しなきゃダメだった?


「なんくるないさーマリーちゃん。そういう時はこうするさー」


 ジローは横たわる龍さんの傍らに片膝をつくと、左の指で鼻をつまんで右の指で彼のアゴを上へと押し上げ、えっとこれは……。


「さすがジロー様、患者様の気道を確保してあとは……」


 ん? 気道確保って確か中学の保健体育の授業で習ったけど心肺蘇生法だっけ?


 確かその後ってまさか……。


 すると、ジローはいきなり龍さんの唇に自分の唇を重ねて……。


 ちょおおおおおおおおおおおおお!

 何なのこの状況、イケメン同士がなんかキスして。


 私にはこの絵面と場面は刺激が強すぎるっ!


「ふいー、これで飲み込めたさ。あとこいつー、髭があたってぃ気分(くくち)()っさんさー」


 ジローは立ち上がると、地面にペッと唾を吐くが、うんまあそうだよねー。


 あくまでも応急処置だし、男同士のキスとかさすがにねえ……。


 でもちょっと、なんか……。


 いやいや、そんな考えに浸っている場合じゃないし、一刻も早くこの人を病院かどこかに運ばないと。


 すると龍さんがゴホッと吐血する。


「マリーちゃん、この状況しにまずいばー。シーサーさんぬ薬でも効能が違うようでぃ、ちょくっとしか回復しねえさぁ」


「ワオーン、すまぬ。どうやら魔法効果ではなく物理的な現象のようだ。魔法を触媒にした複合毒のようで、猛毒状態については解除する事が出来た。それに、総合薬だから体力は幾分か回復した筈。だが、依然体内に複数の毒の効果が残ったまま」


 げっ、魔法の毒じゃなく物理攻撃だから効果が少ないって事なのか。


 それになぜこの人がこんな事に。


「多分、こいつーがこんな目に遭わされたってぃ事は、きっとバブイールでまずい事、例えば政変が起きてぃる可能性があるさー。俺ぁの国に置いておくことがバレたら、政変が起きたバブイールと喧嘩になる。あんしぃ、とりあえず中立地域のマリーちゃんのシシリー島まで運び入れよう」


 私達は、とりあえずネアポリから私の領土のシシリー島まで彼を過去ぶ手筈となった。


 辺りはすっかり夜となり、島に着いた後、私の仮住まいのノーマン宮殿まで運ぶ。


 あとは水晶玉の通信で根回しをしたから……。


「出でよ、風のシルフことブロンドさん!」


 先生の子分にしてスカンザ共同体にいるブロンドさんを、指輪の召喚で呼び出した。


 彼はエルフで薬学の知識も豊富だから、龍さんを救えるはず。


 ブロンドさんは、龍さんの状態を確認するとこくりと頷いた。


「なるほど、そちらの医師見習いのペチャラさんの所見通り、これは自然毒によるもの。おそらくは毒草と毒蛇、そして毒虫の混合毒による影響でしょう。大分軽減はされてますが、まだ予断は許さぬ状況と思われます。ならば……彼の力が要りますね。マリーさん、金城の叔父さんがDrブリュワーズとDrスランを召喚してください。彼らは僕の世界の名医です」


「わかったん! いでよDrブリュワーズ」

「いでよ、Drスラン」


 ジローはHPとMPを消費して、お医者さんを召喚した。


 けど、召喚された人は白衣着てて、確かにお医者さんっぽいけど、瘦せ細ってて車椅子姿で、点滴棒や心電図計が表示されてる医療機器が繋がってて、なんか今にも死にそうな感じがする。


 あと、もう一人の医者の姿が見えない。


 ブロンドさん召喚で、HPとMP消費したから、私の力じゃ足りなかった?


 それにこのブリュワーズって人、お医者さんなのか、患者さんなのかわかんない感じで、世界的な名医のようだけど、生きてるのか死んでるのかわかんないような感じで、眠りこけてるし。


 あ、ブロンドさんが懐から出した針で、出てきた医者の腕をチクッと刺した。


「ふい~~~~~昔やったへロンクラックを静脈に注射したような懐かしさが……おやブロンド様、私に何か用でございましょうか?」


 ええっと、ブロンドさんが針でつついて起こしたら、いけないお薬っぽい名前呟いてた気がするけど、大丈夫なのかなこの医者。


 ブリュワーズ医師は、震える手で龍さんの血液を消毒した針で採取すると、舌でぺろってなめて……。


 ていうかこの人、本当に名医なの? 


 感染症とか毒とか全然考えてないような感じで、いい加減なヤブ医者っぽいし、死にそうだし。


「なるほど、トリカブトのアコニチンとプロテアーゼ効果を持つ出血毒にアジトキシン、カリブドトキシン、スキラトキシン、ドクドクダリウムなどの、ジャイアントキラービー、デス・スコーピオンやテイオウアリにも似た神経毒も確認できますな。クランケの持って生まれた生命力や心臓でなかったら、即死しているような毒ですね」


 なんか何言ってるのかよくわかんないけど、どうやら本当に医者っぽくて安心した。


「これは私の助手の力が要りますな。失礼します」


 ブリュワーズ医師は、その場で震える手を喉に突っ込むと、どっかのホラー映画みたいな感じで魂っぽい口から何か、エクトプラズムっぽい感じで出てきて、床に塊がベチャッと吐しゃ物っぽい液体になった。


 何ていうかこういうことを思うのあれだけど、その、超キモイ。


 あれだ、昔の駄菓子、ねるねるねるねのでっかいバージョンみたいな感じだ。

 

 すると水色の液体はボールのような塊になったと思ったら、人型みたいな形になる。


 なんだろう、まるで意志を持っているような……。


「ぼ、ぼくは悪いスライムじゃないよ。はじめましてドクタースランです」


 えっと、水色の粘々がいきなりしゃべりかけてきたと思ったら、どうやらスライムらしい。


 ゲームだと雑魚だったり、めっちゃ強かったりするんだけど、このスライムがお医者さんの助手をしているって事は、先生の世界で医療目的で活動してるモンスターって事なのかな?


「ご紹介します、スラン医師は元は旧魔界の特殊部隊にいた人で、今は我々の世界における薬学のスペシャリストです」


 そうなんだ、ブロンドさんの言うような元特殊部隊っぽく見えないけど。


 するとスライムのお医者さんは、龍さんの体に纏わりつく。


「毒の成分はわかったよ、この程度の毒ならば回復可能。だけど、患者さんはかなり体力を消耗しているようなので、当分は手足にマヒが残るかも」


 そっか、でも何とかなりそうで良かった。


「やっさ、なんかよくわかんない妖怪(マジムン)っぽいの出てきてぃどうしようって思ったしが、何とかなりそうで良かったさぁ。先生方、にふぇーでーびる」


「ありがとうございます、先生達」


 本当、ジローの言う通り一時はどうなる事かと思ったよ。


 すると、龍さんは体力をある程度回復できたのか、ベッドで目を覚ます。


「ここは……? そうか、どうやら私はロマーノ王国、いやシシリー島に辿り着けたという事か。私は全魔力を振り絞り、こちらに逃走するのが精一杯だったんだ。すまないジロー、それにマリー君、迷惑をかけた」


「お前助けたのは、兄貴の子供(わらばー)とぅ、スランってぃ水色のネバネバな先生とぅ、そこの車椅子の先生さんさー。礼はまず、この人達に言うのがスジだばー?」


 龍さんは体を起こし、皆に頭を下げる。


 問題は、どうしてこの人が大怪我して毒状態でこっちにやって来たかと言う事。


「私は、王族たちから粛清されそうになったのだ。我が父、ハキーム・ビン・カリーフによって」


「なんで龍さんが、まさかフレイアの件で?」 


「ああ、その件もある。だが……可悪(クソッ)! よりによってなぜこの世界にあのお方が! 李旦(りだん)の老船首!」


 あ……。


 そうか、閻魔大王様が言ってた地獄の業によってこの世界の誰かに憑依した、龍さんの師匠でもある倭寇の大海賊、李旦。


 もしかして、龍さんが暗殺されそうになったのもこの人が……。


 龍さんは再び気を失ったので、私達はお医者さん達から言われた通り、この場で用意できる果実から、魔法効果でブドウ糖を抽出。


 塩と、解毒剤を混合させて点滴剤を作り、お医者さん達が魔法で作ったガラス瓶と持ってきてくれたチューブと針で、龍さんに点滴を施す。


 召喚の効果が切れてブロンドさんやお医者さん達が帰っていき、私達は簡単な食事を取ったあと、点滴で体力が回復した龍さんは、私とジローに暗殺事件の真相を話し始めた。


「私は、あのお方に恨まれて当然のことをしたのだ。あのお方と私は、前世でも親子の契りを交わした。私にとって本当の父親のような御方だった」


「ええ」


 それは私も知っている情報。


 確か、前世の若い時の龍さんに、色々教えてくれた、龍さんが実のお父さんよりも尊敬してたって。


「前世で、私達は倭の徳川将軍より朱印状の認可を受け、顏思齊(ヤンシチー)の大兄と共に、大明帝国の絹糸を倭国の銀に替える、貿易事業を展開していた。老船首は、当時自分の所有する長崎平戸の屋敷を、イギリス人に貸し与えていたのだ」


「え? 貸し与えていたんですか? お屋敷をあのイギリスに? 借りてたんじゃなくて」


「そうだ。李旦の老船首はカピタン・アンドレアの名で、イギリス商人リチャードと商いで組んでいた。徳川将軍と繋がっていたウィリアム・アダムスという男の部下だ。このコネクションがあったから、元は倭寇でありながら、我らは幕府より許可を得て朱印状で合法の商いをできた」


 すごいスケール大きい話だけど、つまり李旦はイギリスと関係してた、海賊にして大商人だったと言う事らしい。


「そして老船首には実子がいて、私の兄貴分だった国助(グゥオヂゥー)、洗礼名をアウグスチンという。本来は彼が、李国助の兄貴が船団を引き継ぐべきだった。が、私は彼を追いやり、最終的に死に追いやってしまった」


「何やん? お前と兄弟分なんだる? 跡目争いが?」


「それもあるが、老船首が亡くなる少し前、半ば同盟状態だったイギリスとネーデルランド間が、アンボイナという東天竺の島で利権争いするようになった。これは後に英蘭戦争のきっかけとなるのだが、私は当時、ネーデルランドと商いで繋がっていたため、イギリスと関係深い兄貴と抗争状態になった。結果私は……李旦老船首の死後、大恩ある李旦老船首の一族を追い出して、私が船団を引き継いだ」


 当時のオランダとイギリスは、アジアの貿易で同盟していて、スペインやポルトガル勢力と対抗してたけど、イギリスがスペインを海戦で打ち負かしたから、オランダとイギリスは同盟を組むメリットが無くなり、アジアの海でも利権争いをしてしまった。


 この流れで、倭寇も兄弟の関係にあった仲間同士が争い合い、龍さん側が勝利したという事なんだろう。


「もっとも、兄貴とは方針の違いでも対立していた。彼は老船首の考え通りに、合法的な商いを通すべきだと主張していたのだ。私は膨れ上がった船団の船員を食わすには……商いや商船警護以外に、無制限ではないにしろ、密輸や海盗も行うしか道はないと思っていたのでね。表の仕事だけでは、部下達や船員の家族を養うのは不可能だった」


 なるほど、大国間の利権争いもあったけど、方向性の違い。


 例えばバンドグループとかアイドルグループでも、それが理由で解散なんかになるが、当時の倭寇でもあったんだ。


「合法的な活動を当初望んでた兄貴は、船団から追放された事で、食うために残虐な海賊に落ちざるを得なかった。一方、非合法的な活動も含めて視野に入れた私は、その手腕を買われて明で立身出世したという、皮肉な話だよ。そして明軍は兄貴とその一族を、海盗の罪で処刑する。もしもその事実を、李旦の老船首が知ったならば……私は殺されても文句は言えまいよ」


「……それで龍さんの師匠である、李旦がこの世界に現れた……ということなんですね?」


「そうだ。バブイール王国第一王子、今は皇太子となったが、ジャースィム・ビン・カリーフ。この世界の兄が……前世の李旦の老船首だった」


 うわぁ、よりによってこの世界の龍さんのお兄さんに、李旦の魂が取り憑いたんだ。


「バブイールで私の身に何があったか、順に追って話そう。あれは、マリー君の稽古の通信が終わった後、私は国王であるハキームに呼び出された。嫌な予感がしたんだ、前世で私が死んだ時と同じような感覚がした」


「それでぃ、呼び出されたお前は不意をつかれたという事か?」


「ああ。私が王宮の王の間に向かうと、王族達は私が女神を討伐した事に非難して、裁判の様相となっていた。そして、王族達は次々に刃を私に突き立て、第一王子はこう言った。前世でも確かお前はこのように、処されたのであろう? 飛虹(フェイフォン)よと。第一王子の側に立っていたのは、第二王子のウカーブだった。彼はこう言った、この男が前世で親父の船団を私物化したのだと」


 そうか、第一王子に取り憑いたのが李旦なら、なんらかの弾みで前世の記憶を思い出したのが、第二王子のウカーブ王子。


 おそらくは、彼は前世で李旦の息子にして、龍さんの兄貴分だった、アウグスチン国助だ。


「意識朦朧とする中でハキーム王はこう言った。久しいな、この世界の息子にして海賊よ。お前も前世を思い出したようだが、よもや今度は神殺しの大罪でお前の、処刑の下知をまた下すとは思わなんだぞと」


 え……龍さんを前世で処刑するよう命じたのって……まさかその人は。


「王の前世は……おそらくは大清のアムフラン・ハーン。またの名をヒョワンエ、愛新覚羅玄燁ともいい、齢8歳にして大中華の皇帝に即位した天才だ。そして、前世で俺を殺した男」


 やばい、バブイールが人材の宝庫で私達ナーロッパよりも優れた超大国と聞いてたけど、前世で優秀だった人たちがこんなに集まってるなんて。


「ああ、康熙帝やん。中国歴代最高の名君の一人、大帝とも称される伝説の皇帝さー。晩年は二人も息子を廃太子にして、王子同士の暗闘で、失意のうちに死んだとされてるさー」


 うん、やっぱりめっちゃやばい人だそれ。


 私が転生前にハマってたソシャゲの、英霊レベル星4とか5で出てきてもおかしくない人だよ。


「そうか、なるほど。だから皇帝も魂に傷がついてこの世界に……それも私の父にか、因果なものだな。どうやら女神フレイアの例の映像が流れた事と、私の戦いぶりを見て、前世を思い出したかもしれん」


 ジローは口に煙草を咥えて火をつけた後、龍さんの口に咥えさせた。


「それでぃ、お前はくりからどうすんだばー?」


「そうだな、私がいなくても前世の記憶を蘇らせた彼らならば、あのバブイール王国の舵取り出来るだろう。私もアンリ、いやデリンジャーのように一人の男として王族の名を捨て、一からやり直すのも悪くない」


 デリンジャーのようにか。


 あ、そうだ。


 デリンジャーもデリンジャーで、レスター・ギリスの魂が乗り移ったって男を見つけて、連絡を断つって言ってたんだ。


 彼らに、その事を伝えないと……。


 その時、龍さんの懐が振動する。

 多分、魔法の水晶玉の着信だ。


「すまない、誰か応答してやってほしい。多分、マリーク戦士団のザイードからだ」


 ジローは、龍さんの懐から水晶玉を取り出すと、微弱な魔力を流して通話状態にした。


「私だ、アヴドゥルだ」


「殿下、よくぞご無事で。国中、殿下の逝去の報が流れましたが、殿下が死ぬはずはないと思ってました。やはり、殿下を殺そうと考えていたか! 王族の我日你(クソッタレ)!」


 ん? なんだろう。

 今、この人中国語使ってた気がする。


「ザイードよ、お前は一体!? 何を!?」


「あんな畜生に劣るような女神を信奉する、白痴共に国の舵取りは任せられませぬ! あいつらは我らの殿下を亡き者にしようとした! もう二度と私は貴方を失うのを我慢できませぬ、飛虹(フェイフォン)の老船首! やつらの、悪辣な貴族趣味に反感を覚える民は多い、私やマリーク戦士団含めてだ!」


「お前は……私の部下だったか……前世の。やめろ、ザイードよ。お前は、あのハキーム・ビン・カリーフに、前世で康熙帝と呼ばれた男には勝てぬ」


 この人も前世の記憶を思い出した?


 フレイアを討伐してから、世界の有り様が変わって行ってるような気がする。


「……もはや、我らマリークの反乱は止められませぬ老船首。あなたを慕う民は多い。あなたはこの国に求められているのです。Até(また) um dia(会い) destes(ましょう)……Líder(リーダー)


 通信が切れた。


 マリーク戦士団って私でも聞いたことがある、東方ナージア最強の軍団の一つで、龍さんが作った魔法の戦士団だっけ?


「やばいよ、これじゃあバブイールが内戦状態に」


「あいつは……施琅(しろう)か……そうだったな、どこか前世の面影があった。クソ! まずい事になったぞ。これでは俺の生まれかわった国が、内戦が鎮圧されたとしても、ロレーヌあたりに攻め込まれたらバブイールは……」


 龍さんは起きあがろうとするが、下半身が麻痺しているのだろうか、上半身を起こすのが精一杯の状態のようだ。


 すると今度はジローの水晶玉に着信が入る。


「俺ぁだ。なんだって!? チーノ大皇国が!? すりでぃ、うん、うん、皇族が皆殺し!? 国名も大幻ウルハーン皇国に!? わかったん! 引き続きヒンダスで情報収集しろさー」


 今の通信ってまさか東方ナージアのチーノ大皇国でも政変が起きたって事?


「ヒンダスで情報収集させてた、海軍武官からの情報さぁ。チーノ大皇国がハーンなる武装勢力に簒奪されたさー。地球世界のモンゴルのような連中で、血に飢えたしにヤバイ奴らさー」


可悪(クソ)! 最悪のタイミングで最悪の事態だ。今のバブイールの状況は、奴らハーンに奪ってくれと言ってるようなものだ! いくらあの皇帝でも、ロレーヌとハーン共に挟まれたら、ひとたまりもない!」


 せっかく私達が大戦を止めたのに、同時多発的にあちこちで戦争の火種が出来上がっていく。


 これはまさかこの世界にやって来た、ワルキューレの影響なのだろうか?


 それとも……。


「どうしよう、この状況。せっかく私達が戦争を止めたのにこれじゃあ……」


「私がバブイールを奪還するしかないようだ。まずはくだらぬ内戦を終わらせないと」


 私達がお互い顔を見合わせて頷きあった時、私の宮殿に財務官僚達が、血相を変えて部屋に入ってくる。


「マリー殿下! 大変です、フランソワ共和国の大統領宮殿が、何者かに占拠されたそうです! 多数死傷者が出ている状況で、アンリ元王子、フランソワ大統領閣下が生死不明であると、パリスの武官より報告が!」


「なん……ですって」


 トラブルはよく立て続けに起きるというが、この時がまさしくそうだった。

トラブルというのは不思議なもので、立て続けに色々な要因や状況が重なって起きますよね。

続きます

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。