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転生したら楽をしたい ~召喚術師マリーの英雄伝~  作者: 風来坊 章
第三章 英雄達は楽ができない
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第76話 新たなる陰謀

 そしてすっかり日も落ちてきた。


 どれくらい走ったんだろうか、そろそろ、私がいる宮殿に帰らないと。


 転生してからと言うものの、激戦に次ぐ激戦で私もかなりレベルアップした。


 もうね、普通のRPGだったらラスボスとかチャレンジできるんじゃないかってくらいは。


 でも走るのはやっぱしんどい。

 もう、ぜえぜえと私も息してるし……。

 合間に杖の素振りとかしたし。


 それにインターバル走とか久々にやったし、ちょっとは瘦せたかな? 


 いや、そんなに早く効果なんか出ないか。


 ワンコは涼しい顔して舌とか出してへっへっへっへって言ってるし。


「娘よ、鍛錬は終わったのか? 腹が減ったぞ」


 そういえば、この柴犬っぽいワンコの名前知らないな。


 先生は拒魔犬の兄貴って言ってたけど。


「あのう、先生は拒魔犬って言ってましたけど、あなたのお名前は?」


「うむ、私の種族名は公魔獅子(デビルロードレオン)。かつて魔界の森林地帯で、ケルベロス公やラドーン公、パイアー公らと勢力争いし、敵対していた竜族共を焼き尽していたが、今は閻魔大王様に仕える身だ」


 ちょ、こんな見た目してるのにドラゴンと戦ってたとか恐っ!


 いや、変身するとおっきな、まるで神社の狛犬みたいな魔獣、いや神獣になったけか。


「それで名前か? 拒魔犬はいわば官職名だ。私は魔界で百魔獣の王という異名を持つ、いわゆる元は魔王だった。親から引き継がれた名前は、バナス・パティラジャーピューン・ロンド・キャチャブレイムル・バリパネエヒンビュズー・チャロナラーン・ンドゥーだ」


 名前なが!

 めっちゃながいし、舌噛みそうな名前だ。


 うーん、一々こんな長い名前で呼べないし、どうしよう。


 バナス……えっとロンド……最後ンドゥーだっけか。


「あ、えーとバロンさんって感じですか」


「うむ、それでよいぞ」


 よし、このワンコの名前はバロンって呼ぶことにしよう。


 なんかいい感じにカッコイイ名前になったし。


 すると、ワンコがピクッと何かに反応するけど、なんだろう?


 その時、夕暮れの空が一気に真っ黒になり、まるでロキがこの世界に現れたような、凶悪な魔力反応がヴィクトリー王国の方角から発せられた。


「ちょ!? なにこれ? 何なの一体!?」


「大王様がお呼びだ。マリーと言ったな、お前もだ。これから向かうが行くぞ!」


「へ? 向かうって……ちょ!?」


 ワンコが遠吠えすると空間が歪み出して、私達は、いつの間にか床が石畳で、壁に紫色の炎が灯る灯籠が沢山壁にある、大きなホールまでワープしたようだった。


 そして、ホールの先にはでっかい玉座に腰掛けた、赤ら顔で髭がすごい長くて顔が怖い神様が、私達をジロリと見つめる。


「我が臣下よ、ご苦労だった。突然呼び立ててすまんの、マリーよ久しいな」


 おお!? 閻魔大王様だ。


 相変わらず怖い顔してるけど、なんだろう? 私を呼んだって。


 とりあえず私はその場で頭を下げて正座し、ワンコのバロンもお座りする。


「えーと……」


「うむ、用とはお前に情報を伝えるためじゃ。まず一点目は、お主の世界ニュートピアに、マサヨシとロバートの派遣が出来なくなったわい」


「え!?」


 どう言う事なの?

 どうして先生達が来れなくなった?


「理由はじゃな、オーディンの眷属神の陰謀により、あの世界にはすでに勇者が派遣されていたのじゃ。あの世界の時間軸、20年前にオーディン配下の天使身分の輩が密かに申請を通しておった。通達書も、隠蔽工作に近い巧妙な隠され方をしていたのじゃ」


 うわぁ、先に勇者が派遣されてたって。 


 多分それはワルキューレの誰かが陰謀を企んだんだろう。


 サキエル、いやブリュンヒルデもそうだったけど、ワルキューレは天界の天使の身分を持ってた。


「うむ、その通りじゃ。我は創造神様と大天使長殿の許可で、神界法の特例により、あの二人の活動を認めたのじゃ。が、理由はどうあれ、先にオーディンの眷属神めが、勇者の派遣をした件が発覚した以上、法律に基づき我の派遣申請許可は無効となる。そして、再申請には時間がかかる」


 そうなのか……。


 その割には、全然勇者らしい救済とかされてないって言うか、意味わかんないし。


「しかし法律にも抜け穴があっての、お主の持ってる指輪と召喚魔術で呼び出せる可能性がある……が、お主ヘイムダル殿を呼び出してみよ」


「あ、はいわかりました。出でよヘイムダル!」


 私は召喚魔術を発動したけど、ヘイムダルは姿を見せず、辺りがシーンとなった。


「え? あれ!?」


「うむ、我もお姿を拝見したかったのじゃが、やはりな。おそらくヘイムダル殿はお主が世界の救いを求めた時か、危機的状況にならなければ姿をお見せしないようじゃな」


 そうか、あの神様は確か私が世界の救いを願う時に力を貸すって言ってたから、気軽に召喚には応じてくれないという事。


「うむ、それで今度はマサヨシの召喚じゃ。その前に状態確認をしてみよ」


 えーと、状態確認(ステータス)っと。


 ダメだ、ステータス画面開いたけど、勇者マサヨシが召喚不可にされてる。


 これはきっと、神様の法律とやらで、先生の召喚が不可能になったからだわ。


 ならば指輪の力で……。


「出でよ、私の先生……勇者マサヨシ!」


 私のHPとMPが大量に消費されて、指輪が光り輝き先生は召喚された。


 ……また全裸で。


 なんか腰に両手を当てて、ふんぞり返ってて、ドヤ顔してるし……。


 えっと、パンツもはいてなくて股間が……ちょ!


「ちょ、きゃああああああああ! なんでまた全裸なんですか先生!!」


「は!? え!? おい! ちょ、お、俺のお楽しみがああああああああああ」


 先生は全裸で閻魔大王様の方を向くと、めっちゃ冷や汗流して怯え始めて、先生は全裸で土下座とか始め、閻魔大王はものすっごいため息ついた。


「親分すんません! ちょっとした手違いで、お見苦しいものをおおおおおおお。やべえよ、やらかしたか俺!? 全裸で親分のいる会合っぽいのに出るとかあり得ねえだろ? 小指(エンコ)か!? 詰めるしかねえか!? ケジメ案件かこれえええええ」


「要らぬわ、たわけが! どうせお主の事じゃから、どこぞで女遊びでもしとったのじゃろうて。まったく、アースラの馬鹿に本当にそっくりじゃわい。お主も今から話すことを聞くがよい」


「へい、わかりやした。チッ」


 うわぁ、先生がこっち睨んできて舌打ちとかしてきたんだけどー。


 しょうがないじゃない、浮気とかしまくってる先生が悪いんだし。


 私が先生の状況とか知りようもないし。


「それでマサヨシよ、ヤミーから聞いておるじゃろうが、ニュートピアに派遣されていた勇者の名はイワネツ。担当神がユグドラシル出身の冥界神ヘルじゃ。このヘルには、ロバートの調査で判明したのじゃが、冥界の魂システムの器物毀棄及び不正アクセス違反の嫌疑がかけられとる。つまりは……」


「へい、そいつが冥界の裏切り者って奴ですね。なめやがって、クソボケが。それで、そいつがヴァーツェ・スラブ・イワンコフ、イワネツを転生させたというわけですかい?」


 うげ、つまりはあれだ。


 私達と、そのロシアマフィアの人は敵対関係になるって事だろうか。


「このイワネツという男、大焦熱地獄でも魂の浄化に手間取っていた極悪人じゃ。我が携わった罪人ではないゆえ、天界の許可を取り情報開示請求をして、其奴を調べたのじゃ。刑期が人の身であるにも関わらず、10万を超えておる。こんな刑期、地球世界で情状酌量の余地もないような、身勝手な犯罪や虐殺を行ったものでないとあり得ない刑期じゃ」


 うわぁ、冥界の裁判長してる閻魔大王様がここまで言うとか、めっちゃ極悪って事じゃない。


「すげえなイワネツの野郎。俺やロバート二人合わせても、刑期が1万とか行かなかったのに。ていうか、ダメだろ? あんな野蛮野郎をシャバに出したらよお」


「えーと、先生はイワネツという人について詳しいみたいですけど」


「おう、ロシアがソ連と言われてた時代から、うちの組やロバートのイタリアマフィアとビジネスしてたからよ。面と向かって会った事はねえが、やつの噂はソ連崩壊後に嫌というほど聞いた」


 そうか、先生の年代は東西冷戦してて、ロシアがソビエト連邦という国だったっけ。


「あいつは間違いなく、個人では最強にして最恐、そして俺が知る中で地球一最悪のヤクザ者だ。人生全てが暴力に生きてたと言ってもいい。野郎が直接ぶっ殺した人間は、千人はくだらねえだろうぜ。コロンビアのカルテルや、メキシコ組織よりも冷酷さは上だろう」


 ちょ、そんなやばい人なの!?


 先生が野蛮だの暴力的だのって言ってるくらいだから、ハンパじゃないんだろうなあ。


「ああ、ハンパじゃねえというか同じ人間だったかも怪しいぜ。あいつは、暴力性が群を抜いてる。それでな、笑えるほど力が強い」


 えーと、力が強いって……。


 権力を持っていたのか、資金力があったのか、戦闘力が高かったのだろうか?


「野郎はどっかで頭のネジを、落っことして生まれたんだろうな。単純に力が強いのさ。野郎がオリンピック選手だったら楽勝で金メダルとか取れるだろう。それくらい個人の力が化物じみてたと聞いた事ある」


 うん?

 身体能力がすごいって事かな?


 でも先生は転生前も、剣と喧嘩の達人で世界最大のヤクザの頂点だったらしいし、ロバートさんも軍歴あって銃や戦闘の達人で、世界的な影響力を持つマフィアでゴットファーザー的な人だったはずだが、その力ってどういう……。


「あー、それな。例えばやつにはチャカの弾丸(まめ)が効かねえ。本当かどうか知らんが、ライフルでも止めちまうらしい、筋肉とかで」


 ちょ!? ええええええええええ。


 嘘でしょ、そんなの化物だまるで。


「でな、そんな筋力で力込めて殴ったり投げられたりすると、当然相手は死ぬ。やつをぶっ殺すには、結局のところ軍用だとか狩猟用の大口径狙撃銃で、野生動物みてえに不意打ちして殺すしかなかったらしい」


 はあああああああああ!?


 まるでそんなの漫画やアニメの世界だって。


「しかもよ、あいつ刑務所(むしょ)を屁とも思ってねえ。トレーニングジム兼、手下を作る遊園地とか、自宅くれえにしか思ってなかったらしいぞ?」


 えぇ……。

 刑務所の意味ないじゃんそれ。


「あいつ、アメリカでもおまわりに捕まって房にぶち込まれたらしい。通常の檻だと破られるから、あの野郎が入れられたのは、ロッキー山脈のどっかにあるセキュリティMAXな刑務所。特殊合金製の檻で出来た、脱獄不可能な刑務所があんのよ。奴は10年ほど完全独居房にいて、房の外は自動小銃持った看守や、軍用犬が24時間張り付きだったんだと。普通はそんな独居房に1年いただけで気が狂うんだが、野郎は鼻歌交じりで、ずっと筋トレとかしてたそうだ。やべえだろ?」


 うぇ、なにそれ。

 なんかもう、存在自体が……。


「ああ、漫画の世界だよ。旧ソ連は、マフィアだとかの存在を認めてねえから、あの国のワルは徹底的にしょっ引かれたらしい。だが、奴はソ連軍とかKGBの秘密警察を、暴力と麻薬と金で逆に手下みてえにしたってさ。米ソが全面戦争にならなかったのは、半分イワネツのお陰だって言われるくれえよ」


「はは……先生それ、さすがに作り話ですよね?」


「いや、やつならやりかねねえ。しかもやつは頭もキレる。国営企業や民間企業の乗っ取り、マネーロンダリングや、盗難車を中東とかに売る事で、荒稼ぎしてた。あとは密輸や密漁か。奴が携わった麻薬や銃の密輸量は、世界の3割以上を占めてたという」


 えーと、もうそこまで突き抜けると笑えてくるけど、つまりは……。


「ああ、50年とか100年に一度現れるかどうかの、稀代のワル。それもワルの中のワルだ。資金力は俺が上だったが、暴力やワルとしての権力とか影響力が、俺やロバートの兄弟よりも上だった。だって考えてみろよ? ヤクザとかマフィアを認めねえソ連という共産主義の超大国が、存在を認知しながら消せなかったやつだぜ? その時点でやべえから」


 えぇ……それ勇者にしちゃダメな人だ。

 なんでそんな人がうちの世界に。


「うむ、やつの流した武器や麻薬で、様々なテロや紛争が起きた事も確認されておった。マサヨシの言う通り、稀代の悪じゃな」


「転生前の俺たちヤクザが使ってたチャカも、粗末な安物の中国コピーが多かったが、コピーじゃねえ真正物もあって、日本全体のチャカの1割か2割くれえがイワネツの息がかかった、ロシアからの密輸品。トカレフとかマカロフとかよ」


 ええとなにそれ怖い。

 ていうか銃とか私、あんま知らないし。

 スイーツなマカロンとかなら知ってるけど。


「トカレフとかマカロフってなんですか?」


「ん? ああ、おめえ元はカタギの学生だもんな。親分の前でアレだけど、俺からの特別授業だ。まずな……」


 先生はピストルの種類と、ランクについて教えてくれた。


 まず最高ランクがヨーロッパのピストルで、ほとんど自動拳銃というもの。


 映画とかで出てくる銃身が長方形っぽいやつで、一発撃つと薬きょうが飛び出して、ガス圧とか反動で自動装てんされ、弾丸が連射できるピストルの事を言うらしい。


 確かロバートさんやデリンジャーが使っていたのも、薬莢は出ないけど自動拳銃のピストルタイプ。


 有名どころは、シグだとかグロックとかベレッタという名前だそうで、このクラスだとヤクザでもお金持ちの組織や、ガンマニアじゃないと持ってないらしい。


 次のランクがアメリカ製のピストル。


 コルトだとかスタームルガーとか、スミス&ウェッソンとかの回転式弾倉のピストルや、コルトガバメントって言う、大口径の軍用自動拳銃で出所が米軍の型落ち品が、ヤクザに好まれたと聞いた。


 あと、デリンジャーが魔力銃で変化させて使ってるのもガバメントだそうだ。


 それと、アメリカ製のマグナムピストルは、やはり高級品らしく、ヨーロッパのピストル並に高ランクで、これもガンマニアなヤクザしか持ってなかったらしい。


「俺が若い時は、コルトとかが出回ってたし、格好良くてすげえ人気だったな。値段もそこそこ高かったしよ。フィリピンの質の高いコピーとかも出回ってたが、だいたいが米軍のお流れよ。金城なんかそれシノギの一つにしてたから」


 うん、ヴィトーことジローは、優しくて人当たりもいい人だけど、やっぱり前世で悪かったヤクザなんだよねー。


 次が、イスラエル製で連射ができるウージーとかイングラムとか呼ばれてる、ピストルタイプの機関銃で、先生いわく大量の弾丸をばら撒けるが、ドラマや映画みたいにはいかず、すぐに弾切れになるそうだ。


「中東戦争とかしてた時は、やはりこいつも出回ってきたね。これとは別に、東欧のなんちゃらってメーカーの、スコーピオンってピストルタイプのマシンガンも見たことがある。けどサツの野郎らは、俺らに対抗して最高級品のドイツ製ヘッケラーの、MP5とかいうピストルマシンガンとか持っててよ、あいつらがやっぱり日本最大の暴力団だよ」


 いや、暴力団がマシンガンとか持つようになったからじゃないのかなって、言おうと思ったけどやめた。


 そして下のランクが旧ソ連製のピストルで、さっき出たトカレフとかマカロフってピストル。


 ただしこれにもランクがあって、出回ってたのが中国製のコピーがほとんどで、コピーじゃない方の旧ソ連製やロシア製のピストルは欧米よりもいくらか落ちるが、そこそこランクが高かったそうだ。


「これは、だいたいソ連崩壊前後に一気に出回ってきた。トカレフは安全装置もねえ安物とかって馬鹿にされるが、7.62ミリ専用弾使った殺傷力が高いピストルだ。弾丸が針みたいになってて、鉛玉の中に鉄芯とか入ってるから、防弾チョッキとか抜けちまうんだ。安くて殺し向きのピストルで、一時流行ったな。だがやっぱり専用弾が必要だからって、トカレフは廃れて小型のマカロフになった。ロシアの軍用拳銃で、うちらが持ってる22口径弾も使えたし、9ミリ弾も中国から大量に仕入れられたし」


 そして最低ランクが、モデルガンとか改造した模造銃で、先生も格好悪いし、みっともなくてこんなものは使えないと言う。


「ていうかピストルって、だいたいが海外製なんですね」


「日本も国産で作ってはいるがな、ライフルとかも。使ってるのはピストルはサツと、ライフルは自衛隊だけどね。うちらヤクザには出回ったことのない代物だ。元サツや元自衛隊で撃った奴の話だと、結構性能いいらしいぞ。まあ、近寄ってってブチ込むし、使い捨ての道具に精度とかクソもねえけど」


 へ? 使い捨て?

 何で? もったいない気がする。


「ああ、使い捨ての理由はよ……」


 銃器犯罪は警察の科学捜査が発展したおかげで、すぐに使った犯人がわかっちゃう仕組みになってるらしい。


 そのおかげでピストルとか刃物の殆どが使い捨ての道具で、仕事で使ったらそれっきりで、海とかに捨てちゃうらしい。


「うーん、何十万もする道具を使い捨てとか、ヤクザの喧嘩ってお金かかるんですね」


「ん? ああ。金もかかるし体もかけるし、命がけよ。そんなんだから、専門的な手入れがあんまり必要なくて、油紙やラップに包んで長期間隠しておけて、確実に撃てる回転式の拳銃が一番いい。極道ではよくレンコンって言ってるが、こいつが玄人向きでベストなのさ。俺も自分の喧嘩道具で、いかつい魔力銃パイソンとか持ってるのもそれよ。見栄えがいいし、やっぱ喧嘩ならレンコンよ。おまわりも、ゴル●13もレンコンだろ?」


 いや、よくわかんないけどそうなのかな。


 私のルガーちゃんもそうだけど、確かに回転する弾倉がレンコンのように見える。


「昔はよく、目をつけたサツに貸を作るって感じで、レンコンと弾1発をコインロッカーに入れて、サツへの点数にしてやったよ。そうすっと、貸を作ったそのサツ野郎が出世したら、俺達もいい目が見れるって感じで、持ちつ持たれつってよ。暴対法変わってそんな事もできにくくなったがな」


 レンコンかー、お肉の挟み焼きとか食べたいけど、この世界ではお目にかかったことないしなー。


「そんでチャカ以外にも、麻薬(ヤク)にもランクがある。地球世界においてのランクだが、イワネツが扱ってたのは、主に高純度のヘロイン。麻薬の王様って言われてるブツよ」


 先生はヤクザなだけあって薬物についても、私に教えてくれる。


 薬物にも種類がある。


 ケシという植物の実が原料の阿片系列。


 この阿片に化学処理する事で、鎮痛作用のモルヒネという医薬品と、効果を10倍以上に高めた麻薬目的に使われるヘロインに大別されるといい、ヘロインが世界的に一番高価な麻薬だという。


 それとコカの葉が原料のコカイン。

 これも欧米で取引されてる麻薬。


 ヘロインの次くらいのランクで、これも結構高価な薬物だという。


 けど日本には特殊な事情もあって、一番需要があるのが、メタンフェタミンが主成分の覚醒剤。


「まあ、ヤクザって言ったら覚醒剤、シャブを扱うのが多い。こんな事言いたくもねえが、日本人の体質にあってるかもわかんねえな。戦前は軍が使ってて、戦後間もなくは疲労がポンと取れるヒロポンって、市販薬で売っててよ。アレ合法だったんだぜ? あり得ねえだろ? 今の世の中じゃ」


 うん、ぶっちゃけマジでありえない。


「まあ、そういったシャブは台湾だとかタイとか韓国とか中国、北朝鮮製もあったらしいが、外国で生成されたブツが、日本に流れてくるのさ。これを卸売りみてえな感じで、製造元から仕入れるのは日本のヤクザよ。で、仕入れた薬を子売に流す。理由は外国組織のクソボケやヤクザ以外の素人が、勝手に売打てねえようにして、徹底管理してんだ。俺もそれに関わったことがあるが、クソみてえだろ?」


 先生の顔が無表情になって、血の気がなくなった感じになり、閻魔大王様もなんか悲しげな顔して先生を見ていた。


「実は先生、ジローのいるロマーノで薬物が流行ってるようです。ケシを原料とした阿片のようなものが」


「なんだとコラ? まさか金城の野郎いじってねえだろうな?」


 うわぁ、めっちゃ怖い顔になった。

 いや、ジローは関わってない。

 おそらくは……あの悪徳伯爵が。


「ああ、あのいつぞやのカスか……ぶっ殺しとけばよかったな。いや、今から殺しに行けば……あ、すんません親分」


 先生がペコリと正座しながら、閻魔大王様に頭を下げるけど、まあ確かに冥界の裁判官の前で殺害予告とかまずいよね。


「それに関して、2つ目の情報提供じゃ。マサヨシ、そしてマリーよ。我が裁いたフレイアは、肉体が死ぬ直前に禁呪法を唱えおって、あの世界に地獄から4人の男達、罪人の魂が呼び出されておる。それは、我があの世界の転生に携わった者達と縁ある者達じゃ。カルマに囚われた亡者といってもよい」


「マジか……やべえですねそれ」


 え? 何それ? カルマ?


「より正確に言うと、お主が面倒見しておる、鄭芝龍、ジョンハーバードJr、金城二郎の事じゃ。お主も含め地獄の刑期を終え業は清算しておるが、フレイアに呼び出された奴らは業を清算しておらん。そして、こやつらはお主達に恨み、または情念を抱いておる。これも情報開示請求をしたので今から名を読み上げる。李旦、レスター・ジョゼフ・ギリス、比嘉大吉、九頭竜大神ドラクロア……以上じゃ」


 名前を聞いた先生は思わず舌打ちした。

 そして私もこの中の一人を知ってる。


「二人ほど知ってる野郎がいますぜ。ハブの大吉とドラクロア。一人は金城を前世で殺した、沖縄最強の殺し屋。ドラクロアは俺が転生後に戦った野郎でも、3本の指に入るほど厄介なクズだ」


「先生、私も一人知ってます。李旦とは、龍さんの海賊の師匠だった人です」 


 まずい事になった。


 フレイアの性悪女、なんてことをしてくれたんだ。


 おそらくは、私の世界で麻薬をばらまいてるのは、現代の知識を思い出したサルバトーレ伯爵こと比嘉大吉で、デリンジャーギャング団と名乗って、殺人を繰り返しているのはレスターと言う男だろう。


「幸いな事に、ドラクロアは魂だけゆえ、かつての力を失っておる。本来の力を呼び覚ますと、あの世界が滅びかねんしのう」


「へい、力だけならシヴァ神に匹敵するやべえ奴でした。隙を見つけなきゃ勝てませんでしたし。ただ野郎も悪知恵働きやすから、それはそれで面倒くせえです」


 うげ、ドラクロアってもう名前からしてやばそう。


 歴戦の勇者な先生が戦った中でも上位の実力者とか、その時点でヤバイ。


「そして3つ目じゃ。ここからが肝心な話でな、ロキの奴め……まずい事をやらかしおったぞ。封印されし、古の大逆神、ティターンのクロヌスをあの世界に呼び出しおった。天界指定4類、(いにしえ)の神でもあり、上級神や魔神を凌ぐ化物じゃ」


 うわぁ、空が真っ暗になったのってそれが理由?


 もしかして呼び出したのって……。


「うむ、呼び出したのはお主のあの世界の姉、エリザベスじゃ」


 やっぱりいいいいいいいいいい。

 何してくれるんだ、あの女!


 ロキだけでも厄介なのに、更に化物を呼び出すなんて。


「幾分か弱体化しているとはいえ、ロキのように力を取り戻すのも時間の問題。そして、現在の最上級神含む、上級神達と遺恨のある神で、オーディン以外にも神界の神々からの介入も予想される。よってマサヨシよ!」


「へい!」


「お主は我の名代として、最上級神ゼウスの一派を説得する傍ら、指輪のシステムを用いてこのマリーの召喚に応じてやるがよい。そして後で、お主には我が考えた切り札を教えよう。神界法の抜け道じゃが、これはお主にとってもあまりよろしくない手段で、あくまでも緊急時対応で他言無用じゃ。よいな?」


「へい! わかりやした」


 こうして、この世界に新たなる陰謀と新たな私達の敵が出現した。


 その後、戦乙女達ワルキューレの存在とオーディンの使徒エドワードと、悪の大王ジークによって、この世界は更なる混沌に向かっていくこととなるのを、この時の私はまだ知らなかった。


 そして、史上最悪の暴力団と言われて心が死んでいた彼の、本来の人間性が呼び覚まされ、この世界で正義に目覚める事も、世界を救うための切り札となることもまだ、私は知らなかったんだ。

次回は、極東の勇者。

ロシアのヤベーやつの話です

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