↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したら楽をしたい ~召喚術師マリーの英雄伝~  作者: 風来坊 章
第二章 魔女は楽になりたい
57/311

第55話 精霊神フレイ 中編

 広大な皇帝の間に、それぞれの勢力が睨み合って膠着状態になり、直ぐにでも戦闘が始まりそうな状況の中、先生は精霊神フレイに、ロバートさんは帝都残存勢力に、そして私達はエルフ以外の全てを見下す皇帝ヨハンと、フレイ配下の精霊達。


 この張り詰めた一触即発の静けさの中、最初に動くのは間違いなく……。


「行くぞおらぁあああああ!」


 先生が光り輝く長ドスを手に持ち、フレイが剣を抜いた瞬間に斬りかかり、鍔迫り合いになった瞬間、あちこちで、戦端が開かれる。


「薄汚いヒト種めが!」


 皇帝ヨハンが先生に弓を射ろうとした瞬間、私は向けていた杖から、炎と風を組み合わせた、魔法を放った。


熱風(ブラスト)


 だが、白い鳥のような精霊カラドリウスが羽ばたくと、炎と風のエネルギーが、強烈な羽ばたきで無効化される。


「今だエルフよ、まずはあの女からだ!」


 皇帝から射られた弓は、軌道を変えて私の喉目掛けて真っ直ぐ飛んで来たが、デリンジャーが早撃ちで弓を撃ち落とす。


「くらいやがれ、こいつを!」


 デリンジャーは、強力な炎の散弾タイプの魔力銃を連射してカラドリウスを攻撃するも、彼の足に木の根が絡みつく。


「シット! なんだこいつは!?」


 まるで意思を持ったような木の根が、デリンジャーをその場から投げ飛ばし、彼の体は壁に叩きつけられた。


「ぬおおおおおお、だがこれで注意が俺に向けられたぜ! ヴィトー……いや、伊達男(ダンディー)ジロー、ぶっ飛ばしてやれ!」


 ジローは壁に向けてジャンプすると壁を蹴って飛び、30メートルほどの高さの天井まで到達すると、今度は天井の壁を蹴って、木の根を操ってる植物精霊、ドリアードに炎を纏った蹴りを放つ。


「三角蹴りやああああ、えいさああああああ!」


 ジローの炎の蹴りを受けたドリアードが、一気に燃え上がって……やっつけた?


 彼が着地した瞬間、木の根が床から生えてきて5体のドリアードとなり、ジローに襲いかかる。


「チッ、まるで木人相手の組手稽古さぁ!」


 ジローは襲いかかるドリアード達を、払いながらパンチしたり、肘打ちしたりして、流れるような動きで倒してしまうが、どんどんドリアードの数が増えていく。


 おそらく……ウンディーネと同じタイプの敵で、ジローと戦ってるのはおそらく分身体。


 本体はおそらく、皇帝の間の床から生えてきて、今じゃ高さが30メートルはあろうかという、天井をも突き破ってしまった巨木が……この精霊の正体のはず……勘だけど。


 私は炎と風の魔力を組み合わせて、杖に魔力を込め、魔力銃ルガーと一体化させ、脳内で魔法をイメージをする。


 確か、テレビかネット動画で見たけど、関東大震災の時のように、大規模な火災が巻き起こると、上昇気流が生じて横風になった瞬間、風が回転して竜巻のようになり、火災旋風という現象が起きるという。


 その風速、秒速百メートル以上で、火炎温度は1千度を遥かに超える。


 あの木は天井を突き破ったから、空気穴っぽくなってるし、この広大な空間の酸素は十分の筈。


 私は、杖を巨木に向けて引き金を引いた。


「いっけええええ火災旋風(ファイアストーム)


 炎と風の魔法で生じた気流を、横風をイメージして回転させる魔法を繰り出すと、瞬間的に物凄い高温の炎の竜巻が具現化し、巨木を燃やす。


「うわあああああ、僕の水分が! 干からびて燃やされちゃうよお!」


「トリアード、今助けて……うあ! 強烈な炎の旋風に巻き込まれて、うまく飛べ……ぐああああああああ」


「ヒト風情が精霊様おおおおお」


 皇帝ヨハンが乗ったカラドリウスが、火災旋風に巻き込まれて炎の渦に消え、皇帝の間が炎に包まれ出す。


「あの、金色鎧のヒト女……火だ! 畏れ多くも皇帝陛下の玉璽の間に火を放った! 守護精霊様達も巻き込まれて……なんて卑劣な!」


 このエルフ達、私が卑劣?

 いいや、違う!


「卑劣で卑怯者はあなた達だ! 神に命令されたからって、罪もない人々を大勢殺して、苦しめて! もうそんな事は今日で終わりよ!」


 私の魔法で、皇帝の間が炎に包まれ、ロバートさん達、異世界マフィアが次々とノルド帝国の兵士達へ銃撃して、戦闘不能にしていく。


「殺すなよおめえら! 俺が敬愛するミスターは殺しを望んでねえ。それ以外は、このpiece (ゴミカス) of() shit(クソ) に、何をしてもいい。fuck off(消え失せろ)! mother(クソゲス)-fucker(クズ野郎)!」


 うわぁ……汚いスラング英語連発してるこの人……。


 テレビだとピーって入ったり、ネット配信とかだと最悪運営にBANされる、Fワードってやつだこれ。


「人間め! この程度の炎でやられるか!」


 いつの間にか床に落下したカラドリウスは、翼を広げると、無数の羽の矢を私目掛けて放つが、私を庇うようにして立ったデリンジャーが、三脚立てのお化けのような機関銃を具現化し、発射する。


「ぎゃああああああああ、なんだこの武器は!」


 ダダダダダって、いかにも機関銃ですって発射音と、形成されているのが徹甲弾なのだろうか、カラドリウスが飛ばしてきた羽の矢を粉々にして、カラドリウスが出血して、真っ赤に染まり、叫び声を上げた。


「へッ、未来の機関砲はすげえな! 俺の海軍時代はポンポン砲って呼んでたが、ロバートに教えてもらった、35ミリブッシュマスターだっけ? 反動のバイブレーションが、たまんねえ、じゃじゃ馬だぜこいつは!」


 機関銃通り越して、機関砲だそうだ。


 そうか、この人は転生前に少しだけ海軍にいたって言うから、こういう兵器を具現化するのはお手の物。


 カラドリウスは息を荒くして、弱った鳥のように蹲ってヒューヒューと、悲しげな鳴き声をあげ戦闘不能になった。


「ヒトめ、よくもカラドリウス様を! あんな風と炎程度で調子に乗るなよ! 余が本当の風の魔法を」 


 皇帝ヨハンが魔法を唱え始めたが、もう遅い!


「たあっ!」


 私は魔法の杖をフルスイングして、皇帝を壁際まで吹っ飛ばす。


「ぐあああああ、よくも余を!」


 先生の戦い方や、他の人の戦いを見てきたせいか、今まで人を叩くとか魔法を放つ前の、抵抗感や忌避感みたいなのも、薄れているようだ。


 前の私だったら、こんな事を他人に出来なかったのに、慣れって怖い。


夢想流弓(ドロムヴォ―ゲ)


 皇帝は弓を私に構えて、物凄い速さで魔法の矢を連射し、私の鎧の隙間に何本か魔法の矢が刺さる。


「負けるもんかあああああ」


 私は杖の先端をU字型に変えて、柄も土の金属魔法で3メートルくらいに伸ばす。


 あとは、これで皇帝の動きを止める。


「ええい!」


 風の推進力を応用して、一気に皇帝に間合いを詰め、さすまたと化した杖で、思いっきり体を突き、壁へ思いっきり押し付けた。


 そう、防犯用のさすまたの使い方の基本。


 確か小学校の時だったかな? 


 学校に、制服のおまわりさんと刑事さんが来て、不審者対策というので、先生とクラスメイトでやった記憶がある。


 そしてU字の先端を金属棘にし、私自身も身体強化したおかげで、壁に皇帝ヨハンを固定することに成功する。


 私が杖の引き金を引くと、U字の金属部分が外れ、元の杖に戻った。


「お前のようなヒトに、世界を統べるエルフの私が……」


 美しい顔を醜く歪める女帝の前に、私は野球のバットを構えるように立つ。


「ちょ、やめろ! この余に何を!」


 ヒトを侮辱するような表情で見つめる皇帝へ、私は思いっきり、綺麗な顔目掛けて杖をバットのようにフルスイングしてやった。


 先端部が皇帝を強打して、口の中と唇が切れたのか口から血を流し、蔑んでた表情が一変し、目の色に怯えが見える。


「う、薄汚いヒトめ……この余に……」


 私は今度は大上段に杖を振りかぶって、皇帝の頭に何度も杖を振り下ろした。


「ぎゃ! やめ、やめろ! やめて……」


「陛下あああああああ! 兵士達! 早くお守りしろ! あの薄汚いヒトの女を討ち倒すのだ!」


 駆けつけようとするエルフの長老達を、ジローが次々と殴る蹴るして、蹴散らす。


「くぬ、ぽってかすーが! (わん)は年寄り殴るの嫌いやんしがー黙ってぃ見てぃろ! たっ殺すど!」


 先生とフレイの剣同士が、打ち合う音だけ皇帝の間に響き渡る以外は、精霊達や皇帝がすすり泣く声しかせず、ノルド帝国兵達も、ロバートさん達に制圧されており、なんとか勝利したようだった。


 周囲は木の焦げる匂いと、血の匂いが充満し、吐きそうになりながら、私は皇帝を見やる。


「あなた達の負けです。皇帝陛下、降伏してください」


 頭から出血して、美しい顔が腫れて血まみれになった皇帝に降伏を促すと、何やら呟いているようで、私は耳を澄ます。


「薄汚いヒトめ……。ヒトの分際でなぜ私がこのような目に……。精霊様達も酷い事に……呪ってやるぞ……醜いヒト共が」


 頭に来た私は、左手で血に染まった皇帝の薄っぺらい巫女服を掴み、顔に近づける。


 皇帝は、今までの態度とは全く逆で、私に怯えていた。


「ひっ、やめて! フレイ様の命令とはいえ、もう余は貴様ら汚いヒト種共に手は出さぬと誓う! だからこれ以上余の体に野蛮な真似をしてくれるな!」


 野蛮……ですってええええ。


 この女、散々自分以外の人を差別して、この国の人達や、デリンジャーの国の人たちを虐殺したくせに!


「あんたが野蛮だ! 自分以外の他者を見下して、人々が殺し合った事を、神のせいにして! あんたが皇帝だから、多くの人が血を流して、傷ついて! この無責任女!」


 もう絶対に許さない!


 私は握った右拳で、杖を持ちながら何度もヨハンの顔面を何度も殴打した。


 初めて私は、自分の拳で人を殴ったけど、歯か何かに当たって拳が切れて、指の周りが痛くて……そうか、人を殴ると相手も痛いが、自分も痛いんだ。


 ……だが、それがどうした。


「あんたと私の何が違うんだ! 耳の形と肌の色と髪の毛以外、違う所なんてないじゃない! 流れ出る血だって同じ色だし、私だってあんたと同じで、いじめや暴力なんて大っ嫌いだああああああ」


 振り上げる拳を何者かに止められる。


 振り返ると、ロバートさんが私の手首を掴んで首を振っており、デリンジャーやジロー、そして先生の子分の、ブロンドさんにガイさん、メリアさんが心配そうな顔して見つめる。


「マリーさん、相手は負けを認めたんで、もう十分です。ロバートの叔父御、金城の叔父貴、あの皇帝、同じエルフである僕がなんとかしますんで……」


「うむ、君が諭してやりたまえ」

「やっさー、落とし所決めとけー」


 ブロンドさんは、皇帝ヨハンの前に立つと、精霊魔法系統の回復呪文を唱えて、ヨハンの顔を元通りにする。


「皇帝ヨハン、極悪組若頭ブロンドとして君に進言する。君は、君達は間違った神に、同じく間違っていた精霊界に忠と信を捧げてるんだ」


「……精霊界と神フレイを裏切った、エルフの言う事など信用できぬ……」


 ブロンドさんは、胸から何かを取り出すと、蝶の羽のような形を象った、青い宝玉が入った銀色のペンダントトップを皇帝に見せた。


「これは、我らエルフからはとうに失われた、正統王家の証。そなたは……やはりこの世界ではとうに滅びた我らが祖、ハイエルフにして、全てを統べると言われる、(いにしえ)の王……いや皇の一族か」


「そうです。だが、こんな証は僕の身分を保証する、ただの王家の証にしか過ぎない。僕の今の生き方には無縁のものだ。あなたは、どうやら僕の先祖と分家のような存在らしいが、そんな事はどうでもいい。トワのエルフ王、グルゴンとして申し上げます……あなた達は可哀想だ」


 本名を名乗ったブロンドさんは、涙を流して皇帝ヨハンを抱きしめると、明らかにヨハンは動揺し始め、その様子を私たちは静かに見つめる。


「僕達の世界のエルフは、異種族間で千年以上も長き時の中で殺し合い、エルフの男は僕を含めて年老いたもの達数名しかいない、滅びゆく存在でした」


 ヨハンはブロンドさんの話に絶句する。


 先生が救った世界は、エルフが絶滅の危機に瀕しながら、それでも戦争を繰り返していた、悲しい世界だったようだ。


「そんな状態であったにも関わらず、神も精霊も、僕達を助けてくれなかった。魔界の侵攻によって太陽も当たらず、毒性の高い植物ばかりで、水だってまともに飲めた状態じゃなかった。僕や僕達は、エルフとして、人としての思いも尊厳も無くしていたんです」


「そんな……そんな話など!」


「僕の耳に誓って嘘は言ってません。僕たちの世界を救ったのは、あなたが信仰する神と精霊界でもなければ、同族のエルフでもなかった。女神ヤミー様と、我らが父たるヒトの勇者マサヨシ様です。見てくださいあれを」


 ブロンドさんが指差す先で、先生が血を流しながら、鬼気迫る表情で、精霊神フレイを追い詰めていた。


「なぜだ! 闘神にして大魔王だった貴様は、ヒトの身に堕ちたはずなのに、これほどの力を!」


「うるせんだよクソボケ! てめえの作り出した世界も救えねえで、まともに神が務まらなかったハンパ野郎が……任侠貫くって決めた俺を、極道を、人間をなめんじゃねえぞ」


 先生はフレイが持つ剣の攻撃に物怖じせず、フレイの剣に斬られながら、足払いで彼のバランスを崩すと、鍔迫り合いになった。


 すると、先生は顔を仰け反らせたと思ったら、フレイの顔面に何度も頭突きを繰り返す。


 先生の頭突きの攻撃で、フレイの整った鼻から出血し、右眉のあたりが切れ、唇から血が流れてる。


 今の一連の頭突きで、目、鼻、口と急所ばかりを攻撃したんだ。


「くっアースラめ、オーディン様に取り戻していただいた、神剣レーヴァテインの……必中の神剣の斬撃を受けてるのに……地球で行われた神精霊大戦で互角に戦った時以上の力を……なぜだ!?」


「何が神剣だ馬鹿野郎……何が神だ……てめえが俺より弱いからだろうがよお! おう? クソ野郎! てめえが見捨てた世界の子に、野面かまして詫びも入れずに、てめえの都合ばっか能書き垂れやがって……俺の可愛い子分に! なあ、そうだろうが!? ハンパ野郎が!」

 

 先生が、長ドスを木刀に変えて、フレイの首に両手でかけると、何度も何度もフレイの顔面に膝蹴りを繰り出し、美しかったフレイの顔から血が吹き出す。


「おうコラ!? てめえがやったことをわかりやすく言ってやるぜ! 子供をてめえの都合で争わせた挙句に育児放棄しやがった馬鹿親が、今更子の前に姿現して、お前達を愛してるけども、てめえの過ちは認めねえ、お前達は俺の為に生きて死ね、こう言ったんだぞ!? 他ならぬ俺の子供らに!! てめえ俺の子分を、身内を侮辱するのもいい加減にしろボケ!! おう!? クサレ外道コラ!!」


 先生は、膝蹴りをフレイに繰り出した後、背中の6本腕と先生の拳で、滅多打ちにした。


 まるでサンドバック状態、神を相手にしてるのに、もう誰が見ても、先生の優勢は明らかだった。


「私の剣が、通じず……こんな……」


 怯んだフレイの体に、先生がぶつかるように刀を突き刺し、捻りを加えた後、ヤクザキックみたいな前蹴りをして、フレイを吹っ飛ばした。


「あれが、僕が実の父よりも尊敬してる親父さんです。ヒトだろうとエルフだろうと関係なく、僕たちが困ってたら、どんな相手だろうと一歩も引かずに守ってくれる、強い父です。そして僕は、あの人のような、強い勇者になりたい」

 

 目の前で行われてる神に対する凄まじい暴力に、皇帝ヨハンも私達も身動き一つすらできなくなり、フレイは膝をつき、奇麗な顔が先生の攻撃で出血して腫れあがり、悔しそうな涙を流す。


「立てよクズ野郎……立て!! てめえは自分を、子を虐げる最低なワルと自覚してねえ、クズ野郎だ! おうクズ野郎が。俺に意地を見せて見ろ、勇者である俺に……少しは神としての意地を見せろ! 外道!!」


 これが……本当の勇者の力。

 神を超え、悪魔をも超えた、最強の勇者の力。


 どんな悪にも一歩も引かずに、数多の世界を救済してきた男の本当の力なんだ。


「お前に……好き勝手生きてきたお前に何がわかるんだ! お前だって、人間と自称しながら神の力を取り戻し、その身は呪いまみれとなり、人間からとうにかけ離れておるくせに! 歳も取らず老いることもなく、自分の子孫が老いて死にゆく様を嘆きながら、永遠に近い時の流れを生きていくしかない。神でも魔でも人でもない中途半端な存在がお前だ!」


 え? そんな……。


 神も魔も人をも超越してしまった勇者には、どんなに、人を愛しても子を成しても、愛する者が先に死んでしまう、悲しい運命が先生に待ち受けているなんて……。


「それがどうした。たとえこの身が人ならざる者に変化しようが、例えこの先に何があろうが……俺は人間だ!」


 先生は膝をついたフレイの顔面を蹴り飛ばし、あまりの威力に宙を舞ったフレイの肩口を袈裟斬りで斬撃を加えて、地面に落とす。


「外道と言われた俺が、永遠の時の中で、可哀そうな世界と、人々を救う事! これこそが俺に課せられたケジメと生き方だ! てめえみてえな、チンケで神も務まらなかった、ハンパ野郎に否定されるいわれはねえ!」


 やはり人としての覚悟が、生き方が私なんかとは違いすぎる。


 だからこそ、この人は神だろうが悪魔だろうが、人だろうがこの人を好きになって、勇者と呼ばれる存在なんだろう。


「兄貴、俺ぁ、兄貴に惚れてぃ弟分(うっとぅ)になってぃ良かった……兄貴は(ちゅー)くて、(いきが)ん中ん(いきが)さー。生まれ変わっても、くぬ世界でも!」


「男だ、こんな男初めてだぜ! 戦うために生まれてきたような男だ。あいつ神相手でも、一歩も引いてねえ! すげえクレイジーだ!」


 ジローとデリンジャーが先生を称賛してるが、男と男が惚れ合う意味をやっとわかった気がする。


 男女の惚れ合いは、この人イケメンだなとか、この子かわいいなあ、みたいに始まるけど、男と男が惚れ合うというのは、親友というのもちょっと違う。


 同じ男として認めて、生き方とか強さとか、優しさとかに、羨望して憧れにも似た感情を抱くから、男同士は惹かれあって惚れ合うんだ。


「私を……なめるなよ人間! 私の強さは神界ユグドラシル序列3位だ。本当の私の強さを見せてやる!」


 フレイは、先生に背を向けて皇帝の間の奥にある扉に手をかけ中に入る。


「待てやコラァ!」


 先生や私達もフレイの後を追うと、扉の奥は広大な空間になっており、見上げると無数の星々が煌めきながら、多くの光の球が飛び交っていた。


「ここは精霊界とも繋がる異空間だ。精霊達よ、私に力を貸すのだ! この人でも魔でも神でもない化け物を滅ぼす力を、この私に!」


 フレイの体が徐々に変質し始め、眩い光と共に、異形の神が姿を現す。

後編に続きます

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。