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転生したら楽をしたい ~召喚術師マリーの英雄伝~  作者: 風来坊 章
第二章 魔女は楽になりたい
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第47話 勇者の陰謀

 よう、俺だ。


 あ? 俺って言ったら決まってんだろうがよ、転生後に数々のワル共ぶった斬って、男を見せてきた、勇者にして最強極道のマサヨシ様だよ。


 そんじゃあ、話を整理すんぜ。

 

 まず、この世界について。


 この世界はニュートピアって言う、地球世界に似た社会築いてて、地球出身者が大勢転生してる、上辺だけ小綺麗な最悪の世界だ。


 まあキリスト教やらイスラム教みてえな、宗教があったらなお面倒くさかったが、今の所この世界では世界宗教みてえなのは確認されてねえ。


 ジーク教って言う宗派が信仰されてるが、今のところ、ロレーヌって国でしか流行ってねえし、他の国でも少数派の宗派らしいが油断は禁物だな。


 いつかの世界救済の時、何度もこの宗教って奴に足を引っ張られたからよお。


 特に、カルト教団みてえなのが支配してる世界なんてやばかったね。


 けどこの俺様と任侠道を信仰する、新興宗教作ってよ、目障りなカルト教団を一掃して、俺様のシノギに変えてやって、今じゃ全世界の俺の上りの中で、上位3番目くれえに入るくれえに育てたぜ。


 信じる者と書いて儲けるとは、昔の人はうめえこと考えやがったね。


 人様の心も救えて、ワルぶっ潰して縄張り奪った後、俺が好き放題できる世界とかにして、金儲けできるとか、やっぱり勇者稼業はたまんねえぜ。


 話は変わるが、この世界の何が最悪ってアレよ、まずこの世界を形成してるのは新たに生まれてくる魂の他に、地球世界でなんらかの原因で、魂に傷を負った奴らが転生してて、その傷によるものなのか、魂が変質してるのか、多くの奴らが性悪になっちまってる。


 俺の冥界魔法で探ったから間違いねえ。


 レベルだかラベルだか知らねえが、精度と魔力が落ちてやがるせいか、いまいちシャキッとしねえしキレが悪いけど。


 だがこの俺様の勘ピュータと、経験からの推測だが、どうもこの世界で転生した野郎は、元々の魂というか、心が変節しちまうようで、転生前に善良だった奴や正義感とかあるやつが、酷いザマになってやがんだ。


 この世界、思ってた以上にやばい。


 ハッキリ言って、歴戦の俺でもやべえ予感がビンビンきやがる。


 もうね、この世界のクソバカ共が絵図描きまくりで、こんがらがった配線を、アホみてえにコンセント挿しまくって、タコ足配線した挙句、ショート起こして大火災起こしそうな感じだ。


 ま、原因はわかってんだ。


 この俺様をハメて(たま)取ろうとしてやがる、フレイアって元神のアホ(アマ)が、大元の絵図描いてやがんのよ。


 たくよお、女を口説いてハメるんじゃなくて、口説いてもいねえ女にハメられんのは、勘弁ならねえし、ふざけんなって話だ。


 神も務まらなかった、ハンパ者のクソボケが、ヤクザなめやがって。


 しかも俺がてめえの(スケ)とR18的なお楽しみしようってんで、女も脱いでくれたし、俺様も、意気揚々と男を立てて全裸になったところを、弱体化されてこの世界に呼び出されちまって、往生したぜ。


 おかげで本来の10分の1以下の力しか出ねえし、俺本来があれば、この世界の支配者連中を恫喝(クンロク)しまわって、楽に救済に持っていけんだが、しょうがねえ。


 けど、そのおかげであの子に出会った。


 今じゃあ俺の娘みてえに、色々と物を教えてやってる、マリー……転生前は高山真里だっけか? 


 あの子が俺を呼び出したのは、偶然じゃなく必然かもわかんねえな、なぜならあの子は……まあいいや、今それを考えると隙ができる。


 あの子は最初、転生したら楽してえとか言ってやがって、まだ16のくせになかなかの乳してて、可愛いツラしてたから、ちょこっと育てた後、適当に口説いて俺の女にしちまおうと思ってたが、なかなかどうして、よくやってんよ。


 あの子のおかげで、俺が転生前の若い時に死んじまった舎弟、金城の野郎にまた会えたし、デリンジャーって言ういい男にも会えたしな。


 あの子は自分でも気がついてねえけど……ありゃあかなりの男たらしだ。


 俺の転生前で例えると、ケツモチしてたスナックとかクラブの女の子でも、接客とか所作とか勉強したり、真面目に毎日出勤したり、中には整形とかしちまう子もいるし、そういう自分への投資や、色々努力を惜しまねえ子が指名ナンバー1を取る。


 極道の世界も似たようなもんだし、カタギの世界でも似たようなもんだろ?


 だが、別に目立った努力とかしてねえ子が、ナンバー1とかとっちまう事も稀にあるのさ、天然の男たらしみてえなのが。


 あの子はその類だ。

 

 そういう子は、学生時代パッとしねえ子が多く、恋愛経験も少なくて、夜の仕事が初めてってのが多かったが、そういうのが世の親父にはウケがいいのか、太客掴んじまったりするんだわ。


 遊び慣れた旦那衆が、新鮮味を感じるところもあるんだろうね。


 だが、男を知らねえし世間を知らねえってのも考え物で、こういう子はよくトラブルに巻き込まれる。


 ペテンかけられて他所の店に引き抜かれたり、クソバカの変態ヤローに付きまとわれて酷い目に遭ったり、クズなヤローに引っかかって、情婦(イロ)にされて店辞めたりとかね。


 そんなんで、結構往生させられたなあ、いい勉強になったがよ。


 え? 俺がケツモチしてる店の女に手を出すクソ馬鹿が仮にいたとして、その後どうなるかって?


 まあ、地獄の沙汰も金次第だから、それ相応の対価は払ってもらうし、払えなきゃとりあえず金目や有り金を全部吐き出させて、そいつが金にもなんねえような、箸にも棒にもかかんねえクソ馬鹿か、縄張り(しま)荒らしなら、車に乗せてドライブよ。


 どこにって? ご丁寧に重機(ユンボ)も用意してある山の産廃処理場や工事現場かへキャンプか、沖まで船で連れてって、海で海水浴さ。


 川はダメだな、浮いちまうから。


 昔はそんな感じで、暴対法なんかも無くてサツの取り締まりも雑だったところもあるから、世間様からクズを消すのは許されたが、今はそういうことが出来ねえもんだから、半グレみてえなガキが調子乗るのよ。


 おっと話を戻すが、まあそんなんで、あの子は無自覚で天然物の男たらしだから、同姓の女共からやっかみ受けたり、嫉妬の対象になるだろう。


 あの子が、フレイアに目をつけられたのも、それが影響してるかもな。


 で、あの子が宿した召喚魔法だっけ?


 多分フレイアの絵図にちげえねえが、冥界におわす俺の親分、閻魔大王様が封印したのにも関わらず、その封印解いたヘイムダルって神が現れて、マリーに力が宿った。


 あの使えねえ馬公、スレイプニルの話によると、その神はもう死んでるらしいが、意味がわからねえ。


 ヤミーの分析によると、どうやら魔力回路だっけか? 切り替わってるようで、もうモンスターとか召喚しねえかわりに、もしかしたらあの指輪の力が無くても、色々と召喚出来るかもしれねえらしいとの事。


 それに俺の事を先生とか言って懐いてきてよお、情が出来ちまったから、なんとかしてやりてえし、あんな素直で心根が優しい子を、道具みてえにしたフレイアって馬鹿(あま)には、絶対落とし前つけてやる。 


 で、この世界の北方にある亜人国家って呼ばれる領域は、フレイアの兄貴であり、精霊界の元老にして最上級神に最も近いって言われてた、フレイって野郎の縄張り(しま)だろう。


 この世界のエルフやらドワーフと、ヒトの喧嘩を見てわかったが、間違いねえ、兄妹喧嘩してやがる。


 最初俺は、奴らが組んでて俺をハメたんじゃねえかって思ったが、どうやらそうじゃなさそうで、フレイの眷属の亜人共は、フレイアが関わってたヒト種を滅ぼす気満々のようだ。


 クソ共め、てめえらが勝手な真似を色んな次元世界でやったせいで、俺が最初に転生した世界の奴らもあんな悲しいことになってたのは奴らのせいだ。


 人間の尊厳を、魂を弄びやがってクズ野郎共め。


 そんで、あの破滅神ロキとかいう野郎な。

 あの野郎、ハンパじゃねえ。

 

 しかも何考えてるかまるで読めねえし、いざ喧嘩になったら、応援に来たロバートの兄弟もろとも返り討ちにされちまったよ。


 野郎のせいで、俺を救援にやってきたヤミーも、小人化されちまって、おかげで俺の自慢の男も立つ瀬がねえ。


 ていうかよ、旅の途中とかでいい女とか見ても小人化されてたら……勃たねえんだよ……ふざけやがってあのクズ野郎!


 巨人軍とか組織してやがるようだが、読売ジャイアンツかってんだよ馬鹿野郎。


 その時点で中日ファンとしてはムカついてきやがるが、そんな事はともかく、多分俺が今まで戦ってきた中で、相当やべえ野郎だ。


 しかも神専用の特別な刑務所(むしょ)の世界に封印されてたようで、マリーを利用してモンスター召喚とか、こいつを復活させる陰謀を企てたのは、フレイアの馬鹿女だと思うが、ロキが復活した瞬間、凶悪な魔力反応が複数しやがったから、多分フレイアに協力してるのは、ロキの関係者で間違いねえだろう。


 しかも、俺が子分にフレイとフレイアの件を吹き込んですぐ、エリザベスのガキが多分フレイアに利用されて、ロキ召喚が起きたって事は……神界か冥界にロキの協力者がいやがる。


「マサヨシィ、腹が減った。我に早く昼食の用意をするのじゃ! ついでにスイーツも……」


「うるせええええ、今、大事な考え事してんだよ! 腹減ってんならそこらへんの草でも食っとけ、そこの使えねえ馬公みてえによ!」


「なんじゃと!? 女神たる我に対してその物言い、後悔させてやるわい! 兄様や爺やに言いつけるからの!」


 うっせえよこのボケ!


 そんなくだらねえ事で、親分や兄貴がいちいち動くわけねえだろってんだよ。


 まったくこいつも、上級神に出世させてやったってのに、いまいちこう、威厳というか神っぽい感じしねえし、もっとシャキッとしやがれってんだ。


 まいいや、オーディンが送り込んできた、このスレイプニルとか言う馬公、何度も言うが使えねえ。


 俺が忠告したのにも関わらず、神界法違反しやがって、ボンクラすぎんよ。


 今じゃ、そこらにいる年がら年中発情中のバカ馬だが、奴の目的は多分俺達冥界の動向を探る、スパイで間違いねえだろう。


 そんで、この件のケジメ取らせろって、しゃしゃり出てきやがった、オーディン率いる神域ユグドラシルの連中。


 ハッキリ言ってあいつら胡散臭えし、奴らの探りいれたが、影で相当ワルさしてる感じがするね。


 まず、奴らの神域ユグドラシルは何層にもわたって階層化してやがる。


 それで俺の調査結果だが、奴ら天界に似たヴァルハラって所作って、天使の代わりに戦乙女(ワルキューレ)ってのに管理させてやがんのね。


 そんで奴らの居住区が、アースガルズって形で、神界領域にもう一個神界作ってる。


 あとは妖精や精霊を管理するアルフヘイムって所は、エルフとかドワーフとかホビット等の魂の循環を行って、精霊界とも密接につながってる感じで、管理者はフレイの野郎だったそうだ。


 ヴァナヘイムやヨトゥンヘイムという領域もあり、ヘルヘイムと言う冥界のような機能を持つ世界もあるらしい。


 もうわかんだろ? 奴らは独自の神界や天界、精霊界、冥界を持っていて、好き勝手運営してるって事はよお、奴ら力をつけてきたら、いずれ独立言い出して、神々のトップの創造神さんに喧嘩売るぜ?


 そういった危惧を大天使連中がしてるって、ポロっと破壊神シヴァさんが教えてくれたのよ。


「これは独り言やマサヨシ君。あのガキら、最近糞生意気な態度とってるさかい、君も気を付けなアカンで? あのガキら絶対なんか企んどる。ヤマ君は人がええから、気が回っとらんけど、あのガキら……最近ワイの事ナメとんねん。いや、ワイだけやなく他の神々もな。まあ、ワイが本気出せばパパパってやって終わりやけど、やるには大義名分と創造神はんの許可ないとアカン。せやから君、ちょこっと探りいれといてくれへん?」


 みたいな感じで、世界救済の傍ら奴らの探りいれてたら、女とお楽しみの最中、この世界に呼び出されちまったわけだ。


 俺の勘だが、奴らフレイアとフレイにロキ潰した後、これ幸いとフレイアの縄張り(しま)だったこの世界を奪う気だろう。


 そうはさせねえけどな。


 とりあえずはアレだ、北方のノルド帝国だっけ? あのクソ馬鹿共を俺達の縄張り(しま)にしちまおうか?


 奴ら、このフランソワで大量虐殺やったから、大義名分はバッチリよ。


 ケジメつけさせてやんぜ。


 そんで、俺の舎弟の金城ことヴィトー・デ・ロマーノ……名前長いから、やっぱ金城でいいや。


 あいつに一口のらねえかって、誘いの連絡をマリーにしてもらってるんだが……。


「はいさい! いやー、寂しかったさー、マリーちゃんと話せなくて。今さ、沖縄(うちなー)文化も取り入れて、この国改革してんのよ。マリーちゃん、沖縄来たことある?」


「うーん、行ってみたいなーって思ってたし、私の転生前の高校の修学旅行先、沖縄だったみたいだけど、結局行けなかった……死んじゃったから。あー、美ら海水族館行ったり、サーターアンダギー食べたかったなー。あと琉球ガラスのアクセサリーとか欲しかったー」 


「そうかー、残念さー。あ、そうだ、じゃあ俺ぁがロマーノ文化に、沖縄文化をてーげーな感じで取り入れて、この世界に第二の沖縄作れば、マリーちゃん楽しめるなー。そしたら俺ぁと一緒に、ロマーノ国内巡ってさ、一緒に楽しめたらいいなって」


 この野郎、兄貴分である俺の隙突いて、マリーを口説こうとしてんよ。


 俺と同様、どうしょうもねえスケコマシだわ。


「よう、金城! 今から北方のノルド帝国って所と喧嘩しに行くからよ、おめえも来い。迎えのもん寄越すから」


「兄貴ー、俺ぁこう見えても色々やんなきゃならん事多いのよー。それに、アンリ君とマリーちゃんの、楽しそうなギャング団入れてもらえなかったしよー」


 チッ、この野郎拗ねてやがんな。

 しょうがねえ野郎だぜ。


「お? いいのかい? おめえアレだぞ? もうね、デリンジャーの野郎はマリーの胸に響く、男っぷり魅せまくってんぜ? 野球だとタイムリーヒット2、3本打ってるね。おめえ、いいのかよ」


「はあ!? ちょっちゅ待ってぃさー兄貴! (わん)だって、色々とマリーちゃん助けとーたやんが! 納得いかねえさぁ!」


 ヘッヘッヘ、野郎食いついたな。


 舎弟であるおめえの心なんざ、俺には全部お見通しなんだよ。


「そしたらおめえアレよ。おめえの男も見せてやらねえと、リード拡げられんぞ? 俺はよお、どこの馬の骨ともしれねえ野朗よか、義理も情もある、他ならぬおめえに、あの子にいいとこ見せた方がいいんじゃね? と思うわけだ。どうよ?」


「わかったん! 兄貴今どこさ!?」


「フランソワ北部シャンペーニュー地方のランヌってとこだ。今、迎えに行ってやっからちょっと待ってろ」


 さて、野郎の迎えに行くのは、あの世界の転移のゲートか、転移魔法が必要だが、今の俺にはそんな超上級魔法は使えねーし、あの世界で子育て中の義理の娘に、いちいち負担かけんのもアレだし……おっとそうだわ。


「マリー、吸血真祖のカミーラ召喚しろ!」


「ハイ、出でよ吸血真祖カミーラよ」


 眩い光と共に俺の女が現れるはずだったが、現れたのは、キャバ嬢とか好きそうな、ド派手なデコアートしてやがる棺だった。


「チッ、しょうがねえ女だぜ」


 俺は手に持った五寸釘をテコの原理で棺の蓋を開けて、いびきかいて歯軋りしてる俺の女を起こした。


 まあこいつレベルの吸血鬼なら、日の光受けても死なねえし、日焼けサロンみてえなもんだ。


「きゃあああああ、まだ昼間じゃないの!? しかも何で屋外!? 太陽の光浴びたら日に焼ける! この私を誰が!? 殺してやる!」


「俺だよ、カミーラ」


 小人化した俺をカミーラはジーッと見つめた。


 そして、雑に右手で掴んだあと胸にぎゅーっと押し付けて……あだだだだ折れる! やべえ! 骨が砕ける、死ぬ、死んじまうって!


「いやーん、私の彼が超可愛いくなってる! このまま棺に入って一緒に寝ましょ!」


 クソ、下手打った。

 このままじゃコイツと一緒に棺に入って……。


「うりゃあ!」


 ヤミーのやつが、カミーラの後頭部に飛び蹴り打って、俺まとめてカミーラを吹っ飛ばす。


「久しぶりじゃのう? 神をも恐れぬアンデッドの女王よ。我のマサヨシを解放せよ! 今度こそ我がお主の魂を、冥界に送ってやろう」


「はあ? 何であんたまで小さくなって。ちょうどいいわ駄女神、あんたの血を全部抜き取って、部屋に人形として飾ってやろうかしら」


 おいおい、勘弁してくれよ。

 この女共相変わらず仲悪すぎんよ。

 全然話が進まねえ。


 コイツに転移魔法使わせて、金城の野郎をこっち来させる予定なのに。


「先生、アンリの……デリンジャーの意識が戻りません。どうしよう、回復魔法で外傷は完全に癒えた筈なのに……」


 ああ!? マジかよ。


 クソ、さっきので血を流しすぎちまったんだ。


 ノルドとか言う奴らをカタにはめる絵図には、デリンジャーは不可欠、どうすりゃあいいか……いや待てよ。


「おいカミーラ、ちょうどいいわ。そこで意識失って倒れてる青髪の野郎がいるだろ? そいつに輸血してえんだけど、血液型わかるか?」


「ふーん、私のマサヨシほどじゃないけど、いい男じゃない。ちょっと待ってて」


 カミーラは、地面に流れたデリンジャーの血液をペロっと舐めた。


「うーん、O型かな? この中にO型の人いる?」


 あー、O型かー。

 俺は確かBだから、合わねえや。


 ていうかここの世界、自分の血液型とか知ってるやついるのかよ?


「あのー、私……多分O型だと思います。確か転生前もOだったし」


 よっしゃ、でかしたぜマリー。


「ふーん、あんたO型? どれ」


 カミーラは、マリーの指に爪で傷をつけて、ペロっと血をなめる。


「うん、私が好きなO型の乙女の血ね。じゃあちょっと吸わせてもらうわ」


 カミーラはマリーの指に口付けすると、一気に血液を抜き取る。


「きゃああああああああ、なにこれ!? 血の気が一気に引いて、頭クラクラする! 献血とかそんなレベルじゃないってコレ!」


「うん、いい感じね。じゃあこのイケメン君に」


 カミーラは、仰向けに寝てるデリンジャーの首に牙を立てて、血液を戻した。


「これで大丈夫な筈。ついでに対価としてちょっと血をいただいたけど、まだ女を知らない体のイケメンの血って美味しいわねえ」


 この女、ちゃっかり趣味と実益兼ねてデリンジャーの血液もらってやがるが、まあいいわ。


「よおし、じゃあおめえに、もう一人イケメン用意してやっから、ちょっと俺と一緒に行くぞ」


 俺は、脳内にこの世界の地図思い浮かべて、カミーラがそれを読み、金城の自室まで飛んだ。


「きゃあああああああ!」


「ちょっ!? 兄貴、来るのが早いさぁ! ていうがなんで小さくなとーん!?」


 野郎……椅子に座りながら女乗っけてお楽しみしてやがった。


「呑気に女コマしてんじゃねえボケ! ほれ、行くぞ金城! おい姉ちゃん、お楽しみの最中悪いが、こいつ借りるぞ!」


 俺は女が飛び退き、間抜けにもズボンのチャックから、てめえの男丸出しな金城の右耳引っ張って、カミーラの元まで連れてく。


「あいや兄貴、喧嘩前にちょっちゅ金玉(やっくゎん)軽くしてぃおこうと思ってぃ……」


「うっせえ! あとでセンズリでもこいてろ! 行くぞオラ!」


「ちょっ! なにコイツ! ちょっとマサヨシ、確かに彼イケメンだけど、なんか浮気性っぽい最低な男っぽいんだけど!」


「いいから、いいから。ホレ、転移魔法でさっきの場所まで戻ってくれ」


 カミーラは、怪訝な顔して魔力を高めて転移魔法を発動させる。


 すると、元の場所まで戻ると、ヤミーが顔真っ赤にして金城を指差し、マリーも目を背ける。


「ん? あ、マリーちゃん。いやー会いたかったさぁ。俺ぁが来たからには、なんくるないさー……?」


「いやああああああああ、ズボンからなんか出てるんですけどおおおお」


「変態じゃあああああ! コウモリ女とマサヨシが変態つれてきおったあああああ」


 この野郎、男気を女に見せる前に、てめーの剥き出しの男を見せてどうすんだよ。


 あ、そういやコイツ、女とお楽しみしてたばっかで、チャック全開だったの忘れてたわ。


 悪りぃ、悪りぃ、金城。


「ちょっ!? 俺ぁそんなつもりじゃ……アギッ挟んだ! チャックに! あっがあああああああ!」


 俺は、かわいい舎弟の滑稽なザマに大爆笑しながら、今後の絵図を考える。


 まずノルド帝国を、ロバートの兄弟と俺の組で夜までに落とし、ついでにフレイの野郎の(たま)とるか、屈服させちまおう。


 そしたら、ヴィクトリー王国とロキの野郎らの目論見は崩れて、大混乱だ。


 あとはヴィクトリー王国をロキ含めて、今夜中に総力を上げて、最低でも弱体化させるか、ぶっ潰す。


 問題はロレーヌにいる、俺のかわいい孫と同じ名前した性悪女の女皇帝に、バブイールのアヴドゥルとその親父。


 アヴドゥルの前世の魂の源流は、どこのどいつか知らねえが、海賊って言ってたっけか?


 海賊ねえ……古くはヴァイキング、中世は私掠船で有名の海賊出身の提督、キャプテンドレークとか、カリブの海賊の黒髭のエドワード・ティーチとが有名だな。


 若い奴らには、漫画のワ●ピースって言えば聞こえがいいが、俺のイメージは、船に乗った武装商人でアウトロー。


 まあ俺が本で読んだ海賊は皆ロクな死に方してねえが、転生前息子に裏切られて死んで、魂に傷がついたか……。


 わからねえ、皆目見当つかねえぞ。


 だが、あれほど頭がキレて男気がある野郎、きっと転生前はやべえ奴だったに違いない……できれば野郎は味方に率いれてえな。


 あいつの魂の源流は、正しい心を持ってる。


 自由と地元と女を愛した伝説の遊び人(アシバー)、金城。


 義賊とも呼ばれた、犯罪王デリンジャー。


 それに匹敵するか、もしかしたらそれ以上の器量を持ってるだろう。


 けど、ロレーヌ軍は金城が命令したシュビーツの傭兵団が山で嫌がらせしてるし、ロレーヌとバブイールは戦争状態。


 こいつの相手は後だな。


 そしてジッポンのノリナガと言われる、イワネツこと、ヴァーツェ・スラヴ・イワンコフ。


 確かにロバートの兄弟の言う通り、転生前にあんな暴力で飯食ってたような、野蛮野郎を、この世界のヤバさを感じ取ってた親分が、送り込むわけがねえ。


 ヤミーのやつも知らねえって言ってたし、もし知ってるのならば、職務上の秘密云々言う筈だ。


 野郎、ジッポンで何してやがる?


 それさえ掴めれば、なんとか今後の方針を、マリーに示してやれるんだが……。


 まあいいわ、とにかくこの喧嘩、この1日が勝負どころよ。


 それに救済の目処立てなきゃ、親分の面子が潰れちまうし、子分の俺がそんな不細工な結果させてたまるかってんだ。


 そして、マリーをこの世界救済の立役者、救世主に仕立て上げてやる。


 救済した暁には、この世界を表向きヤミーの縄張りにしちまって、救世主の立役者様のこの俺様が、遊んで楽しめる世界に変えた後、もうちょっといい女に育てたあの子を頂いちまおうか。


 源氏物語の光源氏さんが、若紫を育てたみてえに、俺好みのマブい女に変えてやって、ヘッヘッヘ、たまんねえや、これだから勇者はやめられねえ。


 おっと、今ヤミーの野郎が睨みつけてきたから、これ以上は考える事はやめておこう。


 俺様の夢と希望と将来の楽しみのために、あの子には頑張って貰わねえとなあ。

悪いヤクザが悪巧みしてますが、次回は主人公視点に戻ります

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