第97話 フランソワの薔薇 前編
私が左親指の指輪に力を込めると、女神ヤミーがイラストされた真っ黒いヘルメットと、重装甲な黒のプロテクター、この世界の魔力ライフルよりも、数段優れてるようなライフルを持った集団が4人現れた。
そして、ロバートさんも透明化魔法を解いて姿を現す。
「諸君、まずは黒の背広の男達を生かして逮捕だ。味方は、縛られた青髪の男、それに召喚者。了解か? 特殊部隊諸君」
「了解! 我ら武神隊、弱きを助け強き悪を挫くため、これより正義を執行する」
銃を構えようとするレスターの手下を、素早い動きで銃も撃たずに、制圧術みたいなので一気に拘束していく。
「てめえら! ハメやがったな!」
「ホーリーシッ! マリー、こいつら異世界のサツか!?」
レスターが銃を構えるも、ロバートさんは銃を抜いてピンポイント射撃でレスターの銃を弾き飛ばし、左手からワイヤーを出してレスターの体をグルグル巻きに縛った。
さすが歴戦の勇者だ。
対人戦闘ならば、先生も正面からは相手をしたくない一人って言ってた人。
「すまない、ミスターネルソン。敬愛するミスターデリンジャーを救出させていただく。武神隊諸君は、一階に行き対象を制圧したまえ!」
「了解、引き続き対象の検挙に入ります」
私が呼び出した、真っ黒い集団が部屋から出て行って、一階で激しい銃撃戦が繰り広げられる音がした。
「ロバートさん、彼らは!?」
「ああ、彼らはマサヨシが異世界で作った警察特殊部隊だ。兄弟は最初の異世界救済で、警察機関を掌握したからな。マリー君は早くミスターを!」
私はダッシュで執務机に向かい、奪われていた机の上のドスを手にして、デリンジャーの縄をテコの原理のように引き切った。
そしてロバートさんは、自分の七色鉱石製魔力銃をデリンジャーに投げ渡す。
「すまねえマリー、それにロバート、助かったぜ。ネルソン、形勢逆転だな」
「ミスターデリンジャー、ミスターネルソンはまだ地獄の懲役刑が残されてる。そして、この世界でも殺人罪が加わった。彼は……帰らなきゃならない、地獄に」
デリンジャーは銃を構えて、悲しげな顔つきでレスターを見やる。
「嫌だジョン、俺は地獄に戻りたくねえ。こっちの世界でおめえと、ピアポントやクラーク、トミー達とまた馬鹿やりてえんだ」
「ダメだ。人殺しは……ルール違反だ。お前は罪を償わなきゃダメなんだ」
「おめえは、焼きが回っちまって、おかしくなってんだジョン。な、くだらねえ大統領なんかやるよりもよ、また昔みてえに俺や仲間達と強盗稼業して……」
「ダメだ。俺は、この世界を今の仲間達とより良い社会にする。世界恐慌時代みてえに、貧乏人が生まれて、人殺しするような連中が出ねえように! 生まれや身分で、人間を差別するような奴がでねえような、世の中を作る! 弱き人々の銃となり、弾丸のように生きる! それが俺の、英雄としての生き方だ!」
デリンジャーがきっぱりと言い放つと、今度は情念に歪んだ女の顔になった。
「やっぱり、あんたは……あの小娘に歪められたんだ!」
「関係ねえって言ってんだろ! アンナ……お前は、もう俺の事は忘れちまえ。そんでこの世界で幸せになってくれよ、今度こそ」
「嫌だ、あたしがどれほどあんたに……また生まれ変わっても、あんたの元へ……」
ワイヤーに縛られたまま、アンナは顔を伏せて泣いていた。
彼女の魂には傷がついている。
前世で、デリンジャーを死に至らしめる密告をして心が傷ついた事や、警察から裏切られて強制送還された先のルーマニアで、第二次世界大戦を経験して、何もかも失ってずっと自分を悔やんでいるんだ。
それに、仮にこの世界でこの状態のまま彼女が彼に依存しても、きっとお互い不幸になるだろう。
なぜなら、彼女が好きになったのは前世のギャングだった彼で、今の……正義に目覚めて英雄になろうとする彼じゃない。
「……ロバート、前世の因縁に結着を付けてえ。手を貸してくれ」
「私も、手を貸したいです。彼の因縁に、今こそ決着を」
ロバートさんは私達に頷いて、王座の間の本棚の奥に手を入れると、隠し階段が出てきて、縛られたレスターとアンナと共に、階段を下る。
階段を降りると地下通路になっていて、大統領宮殿一階のフレイア礼拝堂に通じていた。
おそらく突入した私達が挟み撃ちとかにあったのも、これが理由。
礼拝堂を抜けたエントランスホールには、私が呼び出した武神隊によって、レスターの手下達がワイヤーや手錠で拘束されてて、私たちはそれを尻目に、ジローに壊された正面玄関を抜けて庭園に出た。
木々の葉は赤や黄色に色付き、庭園には遅咲きの薔薇の花が咲き乱れて、地球世界よりも大きい月明かりに照らされており、負傷から回復したジローやバロンがこっちに駆け寄る。
「心配かけたさー、マリーちゃん。すりとぅ、ロバート、にふぇーでーびる。俺ぁ、お前の事ぅそのー嫌いだったしが……手当てしてくれたし、デリンジャーもマリーちゃんも救ったし、俺ぁが間違ってた」
ジローがロバートさんに頭を下げると、ロバートさんは右手を差し出して、お互いがっしりと手と手を握りしめる。
「いいんだ、そんな事は。君がなぜ兄弟と強い絆で結ばれてるか、私もよくわかった。君が、仲間や女の為に名誉ある行いを命懸けで行う姿勢や、いい男なのも。ミスターデリンジャーの件は私に任せてくれないだろうか?」
ジローは、集まった騎士団に周囲に邪魔が入らないよう命令を出して、拘束されたレスターの手下も連れ出して大統領宮殿を包囲する。
「ジローが、この場から邪魔者を排除してくれた。彼の男に応えてやらねばな」
羨ましいな……。
男と男って嫌いあっていても、きっかけがあればお互い惹かれ合う関係になって、仲良く出来るのが正直羨ましい。
女同士って私が言うのもなんだけど、上辺だけ仲良くできても難しい所がある。
けど私は、これから相手の女をわからせなきゃいけない戦いが待ち受けてる。
暴力は嫌いだ。
だけど、ここで彼女を何とかしないと今後も私やデリンジャーの身に危害が及ぶから……私の強さを見せつけないとダメな状況。
そして、デリンジャーは……。
「マリー、俺は……ネルソンやアンナに大統領宮殿を占拠された時……撃てなかったんだ。俺の昔の仲間や、愛した女を俺は……」
そう、彼ではきっと、レスターやアンナと戦おうと思っても、銃を向ける事ができないだろう事は、彼の性格上私もよくわかってる。
だから……。
「アンナさん、でしたっけ? この庭園で決着をつけましょう。あなたは、私が死ねばデリンジャーが前世のように振り向いてくれると思ってるけど、それは違う。それに私も、そんな自分勝手な理由で殺されるなんてゴメン被るわ」
「……上等じゃない、泥棒猫。あたしは、こっちの世界では大貴族で魔法の天才として生まれたの。殺してやるわ、小娘」
私は睨みつけてくるアンナから視線を外し、ロバートさんを見て頭を下げると、アンナを縛り付けてたワイヤーが解かれる。
「了解した、マリー君。君がミス・アンナに決着をつけたまえ。ミスターデリンジャー、マリー君が勝利した瞬間、あなたは私が冥界魔法で彼女の中に魂を送るので、ミスターネルソンの魂をあるべき所へ」
「ああ、ネルソンは……前の世界の俺の友達で仲間だ。マリー、気をつけろ……ネルソンとアンナは俺のハジキを奪ってやがる」
私はロバートさんとデリンジャーに頷き、取り戻した魔力銃ルガーを右手に、左手にギャラルホルンを装備した。
「いくわよ! 殺してやるわ小娘!」
「アバズレ、しょうがねえから力貸してやる。俺だけ地獄行きで、みんなと仲間外れなんかごめん被るからなあ! いいだろ!? ジョン!」
アンナが魔力を解放すると、精霊魔力も加わってかなりの魔法力を持っているのがわかる。
そして、おそらくはデリンジャーから奪い取った、七色鉱石の魔力銃を装備してる筈だけど……あのフレイアほどじゃない!
私はルガーをサッと構えて、天界魔法の時間操作で素早さを高めて二連射した。
戦闘は先手必勝、先生が口酸っぱく言ってた喧嘩の基本。
すると、まるで私の銃撃を予測していたかのように、素早く地面を転がるように身をかわしたアンナは、透明化して姿を消す。
今の身のこなしはレスターが乗り移って回避した?
おそらくは、ジローを負傷させた時のように、私を攻撃する気だろうけど、そうはいかない!
私は植物精霊トリアードを召喚して、ギャラルホルン魔力付与をすると、鉄パイプから期の杖のような形に変わり、私の周囲を薔薇のツタを伸ばして囲い、天然の薔薇のバリアーにする。
すると、ツタを展開した私にはあいつの位置は手に取るようにわかる。
「そこね!」
私は素早く気配がした方向へ、ルガーを二連射する。
ロバートさんに教えてもらった、ダブルタップと言う撃ち方で、敵を発見した時や遭遇した時に使う、確実に相手に銃撃を当てるための撃ち方だ。
「ぐっ!」
手応えあった。
この薔薇のツタはセンサーのようなもの。
たとえ透明化で姿を消していても触れる者に反応するし、動けば薔薇の棘でダメージを負う。
「考えやがったな、ボインちゃんよお。足を撃たれちまった。奇麗な薔薇には棘があるってか? せっかくこの世界で新調した俺の背広がボロボロになっちまうがしょうがねえ! 行くぜ!」
レスターは背広がボロボロになりながら、薔薇のツタの中を走り回り、私に向けてマシンガンを乱射してきた。
こんな棘だらけの中、転げ回ってマシンガン乱射するとか、痛覚がマヒしてるとしか思えない。
私は遮蔽物でガードするため、薔薇のバリアーを解除して、ウンディーネの精霊魔力をギャラルホルンに魔力付与し、水のバリアーを周囲に展開させる。
「待ってたぜ! この時をよお!」
「くらえ小娘!」
は? 何を待ってたって……。
すると私の水のバリアーが沸騰して、温度が急激に上昇する。
「っあっつ!」
こいつらっ! 銃弾に炎を纏わせた。
まずい……これは……。
「絶対防御」
一日に一度しか使えないスキル絶対防御でガードしたが、水蒸気爆発を起こし、風圧で庭園の薔薇の花びらが舞い散り、水が蒸発して霧みたいになってまた姿を消す。
これはよくない流れ、レスターは頭が回るし……強い!
すると私のアゴに衝撃が走り、思わず地面に膝を付いたらレスターは銃床をコンパクトに振るい、私の顔面を強打する。
「死ね! 何よ顔がちょっと可愛いからって私の彼をたぶらかして! お前なんか死ね!」
「このぉ……!」
私はギャラルホルンに土の魔法を魔力付与して、両手持ちで思いっきり彼女のみぞおち目掛けて突く。
そしてすぐに杖を胸元に引き寄せて、立ち上がるのと同時に思いっきりアンナのアゴめがけて渾身の突きを放つと、アンナは脳震盪を起こして魂が切り替わり、今度はレスターの顔になって、にやりと笑う。
「なかなか、喧嘩の仕方わかってんじゃねえかボインちゃん。だが、ギャングをなめちゃあいけねえぜ」
レスターは、私のギャラルホルンを両手で引ったくり、思いっきり私のお腹を蹴飛ばす。
「うっ!」
すぐに私の目の前まで間合いを詰めてきて、今度は私のギャラルホルンで滅多打ちにされた。
「この俺をなめんな! 俺はギャングだぞ! てめえみてえな小娘とは、喧嘩やくぐってきた修羅場が段違いだ!」
くそ、やはりレスターの方が戦闘の面では厄介!
前世での戦いでめっちゃ経験値積んでる。
このままじゃあ、私が負け……。
「ヘイ! ベイブ!!」
デリンジャーが、憤怒の表情でレスターを怒鳴り、睨みつけた。
「何がギャングだ……何がビッグジョージだ!! てめえは……女子供に手を上げるようなクズ野郎に成り下がったのか!」
「ジョン……お前こそ俺を忘れたのか!? 俺は女に手を上げる事なんざしたくねえが、それよりも負ける事が一番嫌なんだよ!」
……隙が出来たっ!
私はレスターに飛びつき、ギャラルホルンを奪い返すと左足を上げて、腰を捻り両腕を振りかぶってレスターの顔を思いっきりフルスイングする。
「ぐぉ! ルー・ゲーリッグやカブスのラージャばりのフルスイングしやがって!」
「ハッハー! ゲーリッグやホーンスビーにはさしもののベイブ・ルースも形無しってやつだな! ネルソン!」
薔薇が咲き乱れる庭園までレスターが吹き飛ばされ、私はルガーを右手に持ち直して構えながら、ゆっくりと間合いを詰めて薔薇園でお互いに銃口を向け合う。
「レスターさん、アンナさん……あなたは、私に、いや私達には勝てない」
「あぁ!?」
「なんですって!?」
なんか、顔面の左右が非対称に歪んで凄んで不気味な顔面してるけど、こんなのに凄まれたって全然怖くなんかない!
「前世のデリンジャーがどんな人だったのかは私にはわからないっ! けど、今の彼の歩みを理解してあげられないなんて……そんなの仲間でも恋人でもなんでもない! まるで亡霊、彼にしがみつく過去の亡霊よ! そんなものに私は負けないし、あんた達は私には勝てないっ!」
「ぐっ! くそ……ジョン、俺は……おめえに……」
「どいて! ろくでなしのネルソン! あたしがこの小娘をわからして……あっ!」
私はルガーの引き金を引くと、アンナの手からマシンガンが飛ばされた。
私は、弾切れになったルガーを捨てて、ギャラルホルンをアンナに投げつける。
「な!? 自分の武器を!?」
アンナの目の前まで間合いを詰めて握りこぶしを振りかぶって顔面パンチした。
彼女は私の髪の毛を掴んで引っ張ろうとするけど、私は彼女の顔の中央目がけて思いっきり頭突きをする。
先生は言ってた、接近戦なら頭突きが最強だって。
「なんで! あんたなんかに……」
私は両手で胸倉を掴んで彼女を手繰り寄せる。
「あんたは、本当の意味でデリンジャーを! 彼を理解していない! 彼は最初に記憶を取り戻してた時、あんたの名前を叫んでいた! 何で自分を裏切ったんだって、魂に傷がついていた女々しい人だった!」
アンナの顔面に、もう一発頭突きをお見舞いする。
「だけど、彼はこの世界で自分の家族を失っても、王族の地位を捨てても、弱い人達の味方になるため! 英雄になろうとした! 傷つきながら、それでも前に進んでみんなを守る……人殺しを憎む不屈の精神を魂に宿す、男の中の男! 私達のリーダーだ!」
もう一発頭突きを入れると、彼女は目を腫らして鼻血と涙を流して力無くぐったりする。
「負けだ……俺の。ボインちゃん、お前がどこの誰かは知らねえが……ギャングに向いてるぜ。ジョン、俺はおめえの、リーダーの足を引っ張りたくねえ」
そして私が両手を離すと力無く地面に膝を付いて、うな垂れる。
「そんな……あの女から……お前を取り除けばこの世界が救済されて、ジョンと私が添い遂げられる世界になるって言ってたのに……ジョン……」
ん? あの女?
まさか、この事件を起こしたのは誰かが、こいつに陰謀を吹き込んだ?
「相手は戦意喪失で、戦闘不能だマリー君。それについては、これから彼女の魂に乗り込み、真相を探る。そして、ミスターネルソンをあるべき所へ」
私とデリンジャーがロバートさんに頷き、先生が比嘉大吉戦でやったように、冥界魔法を唱えようとした時だった。
「どうやら失敗したようですね……しかし、体力と魔力を消耗したあなた方には、もはや私に勝てない……!? なぜここに冥界の勇者の一人が!?」
空から栗色のおさげしてて、シルバーフレームの眼鏡をかけて背中に純白の羽を生やした、白銀の胸当てに真っ青なスカートを履いた女の子が降りてくる。
こいつは……戦乙女のサングリーズ。
「ロバートさん、こいつは確かオーディンが送り込んできたワルキューレです。名前をサングリーズ」
「ほう? なるほどな、そちらのガールがワルキューレの一人か。君が仕組んだのか?」
口調は丁寧だが、一気にロバートさんの顔つきが恐ろしいものになり、これは質問と言うよりも詰問めいた感じ。
「あなた達に、答える義務はありません。私は……」
「ふん、なるほどな。君の協力者、ヴィクトリーのエドワードという男の入れ知恵か……人の魂を、思いを弄ぶファック野郎……それと、俺をなめるなよビッチ!」
サングリーズの心を冥界魔法で読んだロバートさんは、スーツの裾から飛び出してきた七色鉱石製魔法銃を二丁拳銃のように構える。
この人、どんだけ銃を持ち歩いているんだろう。
いや、そんな事よりもこのワルキューレとエドワードが今回の事件の黒幕。
おそらく、バブイールの政変も彼と彼女たちが企てたもの。
そして背後にいるのはきっと、この世界で戦乱を企む最上級神オーディン。
「あなたこそ、改正神界法139条違反です! 大天使長への申請が認められた特例を除き、神が派遣する勇者はただ一人の筈。この世界にはすでに女神により勇者が派遣されている。あなたと派遣した神は違反行為により……」
「ふん、ビッチが。私はこの世界の彼らが望んで召喚してここにいる。我らが親分が派遣したわけではない」
「な!?」
そう、ヤクザな勇者の先生と、マフィアな勇者のロバートさんが考えた神界法の抜け道。
次元移動システムを利用した指輪の召喚だ。
「……許さねえ、人の心を、ネルソンとアンナの心を弄びやがって……」
「私も許さない、この世界をあなたたちの思い通りなんかにさせない!」
私は胸のペンダントトップに触れて、思いを込める。
世界を、陰謀から救う力が欲しいと。
すると私の胸に黄金に光輝く胸当て、肩甲、手甲、腰当、膝当、足甲が次々と装着されていき、背中に黄金に光り輝く羽根がつく。
頭に光り輝くカチューシャが装着されると、耳を覆い、アゴまで伸びてヘルメットのようになり、力が湧いてくる。
「サングリーズ! 作戦は失敗であります! 今は引くのであります!」
空から、お化けのようなでっかいライフルを持った、オレンジ髪に迷彩服のようなものを着た、レギンレイヴというワルキューレも降りてきた。
おそらく、サングリーズをこの場から逃す為にやってきたに違いない。
「逃がさんよ」
すると、フランソワの大統領宮殿を囲むようにロバートさんの体からワイヤーが展開していき、ドーム型のような籠状になる。
「な!? これは!? レギンレイヴ姉様!?」
「魔力探知を確認、閉じ込められたのだ! サングリーズ!」
「冥界の魔法封印だ。知らなかったか? 勇者からは逃げられない。マリー君、わからせてやりたまえ、君の力で」
私は、風の魔力でギャラルホルンとルガーを手に取り、ギャラルホルンと魔力銃ルガーと合体させると黄金の杖に変わる。
デリンジャーは魔力銃を自動拳銃、ガバメントに変えた。
「いくわよ! バカ女達!」
「ここは俺の共和国だ! お前らの好きにはさせねえ! マリー、援護するぜ!」
続きます