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転生したら楽をしたい ~召喚術師マリーの英雄伝~  作者: 風来坊 章
第三章 英雄達は楽ができない
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第98話 フランソワの薔薇 中編

 サングリーズは両手に水晶玉を装備し魔力を高め、レギンレイヴは巨大な狙撃ライフルをこちらに構える。


「ふん、原住民風情が偉そうに。我々はこの世界の戦乱を経て、救いがたい人類を浄化する。我らが父オーディンの導きで理想の神の世界を!」


「この世界の救世主はアレクセイ・イゴール・ルーシーであります。昨日今日戦乙女になったような女が、我々に勝てる道理などないと知れ!」


 こいつら、やはりエドワード……アレクセイに何か陰謀を吹き込まれている。


 先生は言っていた。


 この世界には人の善意に付け込む吐き気を催す悪がいると。


 その悪は嘘がうまく、国の為だとか正義の為だとか、理想の為だとか、あなたのためだとか、取り入ってきて、本心は自分の為や欲望しか考えていない悪と言っていた。


 おそらくエリザベスも、あの悪の王子に騙されて……この世界を破滅にいざなう陰謀に加担させられてる。


「やめて! 私は彼と結ばれたいなのに、ジョンに銃を向けないでよ!」


 サングリーズは、水晶玉をアンナにぶつけて、一瞬で昏倒させた。


 なんて女だ。


 デリンジャーに、転生後も好意を寄せる彼女を利用した挙句、用済みになったらあんな事するなんて。


「レギン姉様、ブリュン姉様は!?」


「こちらの救援に急行中! サングリーズは勝利の方程式の完成を!」


 まあいいわ……相手がおしゃべりしている隙に、戦闘は先手必勝!


 ギャラルホルンを振りかぶって、サングリーズに攻撃する。


「レギン姉様、攻撃座標X’=(X-Vt)/√(1-V2/C2)対象予測、t’=(t-XV/C2)/√(1-V2/C2)」


 サングリーズは何かぶつぶつと呟きながら、私の先制攻撃をかわした。


「?」


 もう一度、今度は天界魔法を使って杖の光の魔法を!


 すると私の前方がピカッと光ったと思ったら、轟音と共に私の体が吹き飛ばされた。


「きゃあああああああ! 何かが当たって!? お腹に響いて、体が軋む!」


 痛っい、何かが体に当たった!?


 鎧越しなのに体の中で変な音したし、全身に鈍痛や圧痛で息苦しいし涙目になるが、ダメージ!? 


「これは……!?」


「させないであります!」


 レギンレイヴが私に向けてお化けのようなライフルを構えて、魔力を集中させてる。


 彼女の銃撃!? 今の!?


連続掃射(マシンガン)

「まずい! 電磁障壁(バリアー)


 光の飛礫のような閃光が煌めき、たまらず私は電磁バリアを張るが、すぐに破られた。


 なんて馬鹿げた威力と魔法量。


 魔力弾を連射してるのに、1発1発の弾丸の破壊力が桁違いすぎる。


「マリー、援護するぜ!」


 デリンジャーが、七色鉱石の魔法銃を機関銃に変えてレギンレイヴに応戦する。


「今だ、動きを封じさせてもらう!」


 ロバートさんが、レギンレイヴをワイヤーで拘束しようとするも、サングリーズが手に持った水晶玉をロバートさんに投げつけた瞬間、大爆発を起こした。


「ロバートさん!」

「ロバート!? 大丈夫か!?」


「ああ、ミスター。瞬間的に土魔法で作った障壁で体を包んだからな。それにこの女共かなり強いぞ! さすがはあのロキのファック野郎を討伐しに来ただけはありやがるな。ミスターは制圧射撃でレギンレイヴを足止めしていただきたい!」


 すると、サングリーズが私の目の前まで間合いを詰めてきて、手に持った水晶玉を掲げると、眩い光を放つ。


「ウッ、目が!」


 目が眩んだ私の背後に風圧と気配を感じ、後ろを振り返った瞬間、後頭部に衝撃が走り頭の中で火花が散り、今度は、みぞおちにサングリーズの蹴りの衝撃を受けて、鎧状態にも関わらず私の体が吹っ飛ばされる。


 すると吹き飛ばされた先に、彼女が先回りしてて、変幻自在の水晶玉で滅多打ちにされる。


 まるで小さい時見た、ヨーヨーの達人みたいに、魔力で自在に水晶玉を操ってるんだ。


「なかなかやりますね。私の直接戦闘力は他の姉達よりも幾分かは劣りますが、私の上段、中段蹴りを受けても、水晶玉の攻撃でも、ダメージをあまり受けていない様子」


「マリー! クソッ!」


 デリンジャーが右手の機関銃でレギンレイヴを攻撃しながら、左手に小型魔力銃デリンジャーを握りしめて、私を援護するために銃撃する。


「座標θ(x,y,z(2,3,1)+t(1,−1,1)tdxdydzx=x0+d」


「座標了解!」


 しかしサングリーズに全てかわされ、逆にレギンレイヴの銃撃、いや砲撃を受けたデリンジャーは爆発で吹き飛ばされた。


「クソッ! ミスター!」


 ロバートさんが、今度は米軍が使ってるような突撃用自動小銃でサングリーズに銃撃するが、逆に彼女の掌に形成された水晶玉から、カウンター魔法の火球が次々とロバートさんに命中する。


 なぜ? さっきから彼女への攻撃が当たらず、向こうの攻撃がこちらに必ず当たる状況だがこれは? 何かの特殊能力?


「なるほど、わかったぞ。マリー君、ミスター! ミスターは私も援護するので迷彩服の女に制圧射撃を! マリー君は当初放とうとした魔法を眼鏡の女に繰り出したまえ」


 ロバートさんが、土の魔法で作った全長数メートルの開口部が空いたドーム状の小さい要塞、トーチカを作ってデリンジャーはその中に入り込んだ。


「トーチカでありますか!? ならば榴弾砲で吹き飛ばして……」


「させんよ!」


 ロバートさんもトーチカを作って、レギンレイヴに十字砲火をくらわせながら、銃の形を巨大な砲台に変えていき、強力な砲撃を放つ気だ。


「ワルキューレがどんなものかは知らんが、これはどうだ? 私の魔力をパルスパワーに変換させて電磁力の反発を具現化させる。超電磁砲(レールガン)……発射(ファイア)!」


 砲身が爆発すると同時にレギンレイヴの体が吹き飛ばされる。


「レギン姉様!」


 私も杖に力を込めた。


 単発の攻撃ならばかわされるが、フレイアを追い込んだこの魔法なら……どうだ!


虹星(スターライト)極光(レインボー)

 

 電子が収縮されて杖に吸収されていき一気に光がはじけると、サングリーズに対して流星のような、尾を引く光の矢のような光線が連続で次々と照射されてダメージを与えていく、電子レーザーを発現させる。


「攻撃予測、t’=(t-XV/C2)/√(1-V2/C2)」


「嘘でしょこの女!? 電子の光に当たらないよう、急上昇して光の速さを予測して、私の攻撃の大半をかわしていく」


 すると、ロバートさんが空を覆ったワイヤー状のドームから、上空に煌めく無数の鏡が浮かび上がったがこれは!?


「マリー君、鏡だ! 鏡を乱反射させて彼女に当てろ! この女は並外れた頭脳と計算力で我々の行動予測をしている! 計算を狂わせるんだ!」


「そうか、相手に予想不可能な光の乱反射で相手に当てればいいのね!」


 私は、上空で素早く動くサングリーズへ、具現化した鏡にレーザーを当てて乱反射させて、電子の粒子と光熱をサングリーズに当てていく。


「くっ、鏡の結界に電子の天界高等魔法!? これでは私の予測行動も勝利の方程式も!」


 やはり、おそらく彼女は私達の力量をステータス表示みたいに読み取って、行動を頭の中で予測してるんだ。


 すると、ロバートさんの連続砲撃で迷彩服のような鎧をボロボロにされ、頭部から出血したレギンレイヴがサングリーズの傍に立った。


「サングリーズ、戦況は膠着状態! 自分もあなたもまずい状況であります! それにヴィクトリーへの威力偵察作戦指揮をする、ブリュンヒルデお姉様の到着までまだ少し時間がかかる。どうすれば……」


「レギン姉様、致し方ありません。冥界の勇者とヴァルキリー達は……強い! 不本意ですがベルセルクモードに移行します」


「だ、だめであります! それはお父様やブリュンヒルデ姉様の許可がないとっ!」


 へ? なにそれ?


 なんかどっかで聞いたことあるような、漫画みたいな名前だけど……。


 まさかフレイアの時みたいに、攻撃手段を変える気なの?


「いえ、お姉様。私の計算が看破られた以上、もはや致し方ありません。父オーディンの使命を果たすには、冥界の勇者とヴァルキリーの彼女を今この場で滅するべき! そう私の灰色の脳細胞と魂が囁いている!」


「命令違反であります! やめるのです!」


「数多の次元世界の戦争で命を落とし、ヴァルハラへ昇天した戦士達(エインヘリャル)の魂のエネルギーよ! この私サングリーズに狂戦士(ベルセルク)の力を!」


 彼女が両手を掲げると、空が月夜だったはずなのに、暗雲が立ち込め……いや、あれは暗雲じゃなくてどす黒いエネルギーめいた奔流。


 そのエネルギーが一気に彼女に乗り移る。


 すると、彼女の身につけていた鎧が弾け飛び、毛皮で出来たような下着姿になるのと同時に、眼鏡がひび割れ、美しい顔が狂気を帯びて彼女の青い目が闇夜で光輝くような、恐ろしい顔に変貌する。


「さあ、戦いを楽しみましょう? ヘイムダルの戦乙女(ヴァルキリー)!」


 凄まじい魔力の奔流が迸ったと思ったら、一気に私の前まで間合いを詰めてきてアゴに衝撃が。


 今のはパンチ!? 


 黄金鎧のヘルメットをしているのに衝撃が、首がもげそうな。


 そして平衡感覚がなくなり、目が回って思わず私は膝を付く。


「うふふ、脳が頭骨の中で揺れて視界グールグルかしら? 戦争って楽しいわよねえ……ゾクゾクしちゃう! ところで、こういうシュチュエーションはどうかしら? 出でよゴーレムたち!」


 サングリーズが両の掌に水晶玉を具現化し、地面が激しく振動する。


 すると周囲の薔薇園から、薔薇の花とツタと茨の棘に覆われた植物人間のような二足歩行の化物たちが、次々姿を現す。


 なんて膨大な魔力、私の召喚魔法のように土から兵隊のようなゴーレムを作って、自分の軍勢を作り上げたんだわ。


「薔薇の花っていい香りで素敵。けど血の臭いはもっと好き! さあ、ゴーレムたちよ! 戦乙女たる我がサングリーズに敵対する悪い子ちゃん達を……ぶっ殺しちゃってええええええ」


 膝を付いた私に、次々と植物のようなゴーレムが襲い掛かると、デリンジャーが私の盾になるかのように庇い、機関銃を連射する。


「させるかああああああああ! こんなもん何が楽しいんだ! サノバビッチ!」


 しかし、デリンジャーの銃撃にびくともせず、ゴーレム達は私達に襲い掛かり私を庇うように立ったデリンジャーが、茨まみれのゴーレムのパンチを受けて、顔面がザクロのようになって傷だらけにされる。


「デリンジャー!?」


「大丈夫だ、ここは俺がこいつら引き付ける! マリーは、あの化物女を! Mk19自動擲弾銃だったか? サラマンダーの精霊魔力、炎のマシングレネードだぜ!!」


 デリンジャーは二脚がついた全長1メートル以上の機関砲に、サラマンダーの精霊力の火炎を魔力付与(エンチャント)させて、連続発射する。


「やめてよ! 約束が違う! ジョンを傷つけないでよ!」


 目を覚ましたアンナが膝をつきながら必死に懇願するが、恐ろしい顔になったサングリーズが高笑いしながら、デリンジャーへ薔薇のゴーレムを沢山けしかけて押し潰そうとしてる。


 なんとか、立ち上がらないと……。

 このままじゃみんなが。


「クソッ! これ以上力を使えば、俺のこの世界の召喚時間が無くなっちまうが致し方ない! くらえっ! 極高温の火炎放射(フレイムスロアー)!」


 ロバートさんは、デリンジャーに回復魔法をかけながら、真っ青に光り輝くガスバーナー的な火柱のような火炎放射器で、次々と地面から湧き出てくるゴーレムを燃やし尽くす。


「ははは、さすが勇者。なんてホットで情熱的なお熱いラブコール! ならばこんなのどうかしら?」


 サングリーズが手にした水晶玉が光り輝くと、今度は地面から炎のゴーレムが沢山出現してくる。


「こちらレギン! サングリーズ! 命令違反であります!! これ以上は姉である自分が許しません!」


 禍々しい表情になったサングリーズに、レギンレイヴが銃口を向けるが、水晶玉を投擲されて、大爆発とともにレギンレイヴが吹き飛ばされるが、うそでしょ……姉妹とか仲間なんじゃないの?


「たとえ姉様であったとしても、私の戦場を奪う事は許さない! さあ、一緒に歌いましょう? ヘイムダルのヴァルキリイイイイイイイ」


 な!? なにこいつ!?


 戦いと自分に酔ってて、気分があげみってるってかこの女、頭がまずい感じでイっちゃってる。


「サングリーズ……ダメなのであります。こうなってしまっては敵を殲滅するまで、自分以外の対象を攻撃し続ける狂戦士に……」


 レギンレイブは、爆発でボロボロにされ戦闘不能にされた。


 これがロキが言ってた、戦の申し子にして戦闘狂の乙女達の正体。


 戦乙女(ワルキューレ)の本当の強さ?


 しかし、それがどうした!


 私は、杖を握りしめて光の魔法を繰り出しながら、間合いを詰め、サングリーズに思いっきりギャラルホルンをフルスイングした。


「なにそれ? 雑!」


 サッとかわされて、前方宙返りをしたサングリーズは、私の脳天に踵落としして、着地と同時に水晶玉を手に持って、私のアゴに思いっきりアッパーカットしてくる。


 一瞬、私の頭の中が真っ黒になったと思ったら、後ろ回し蹴りされて思いっきり吹っ飛ばされた。


「う……ぐっ」


 立ちあがろうとするも、足に全然力入らない。


 なんて攻撃力だ、もうこいつは計算とかで私の攻撃をかわしてるんじゃなく、闘争本能で戦ってるような感じがする。


状態確認(ステータス)!」


 私はステータス表記を確認する。


 レベル70 クラス、戦乙女ヴァルキリー 


 状態 頭部挫傷出血、脳震とう、右第8、第9肋骨骨折、胸骨損傷、肝臓損傷、腎機能異常、肺出血軽度、全身打撲。


 HP15982/333333 

 MP3750/7720 

 ちから92 魔力300 

 すばやさ200 体力340 

 精神225 運110 


 スキル 状態確認熟練、天界魔法熟練、属性魔法熟練、絶対防御(使用不可)、召喚魔術、魅了、ステータス倍化、女は度胸(発動中)、光神の祝福(発動中)、毒耐性(アルコール 神経毒) 


 げっ、この鎧着てるのになんか息苦しいし、全身が痛いと思ったら生命力(HP)がかなり減ってる。


 ていうかめっちゃ怪我してるし、こんなの交通事故とかでするような大怪我。


 転生前だったら今頃は泣き叫んで動けなくなって病院行きだけど、こうして戦えているのは、ヘイムダルの加護が発動中だから?


 多分そうだ、その証拠に、生命力(HP)が徐々に回復して行ってるし、まだまだ戦う気力が湧いてくる。


 私は、サングリーズの方を見ると、私のヘルメットのバイザーを通して彼女の状態が文字化された。


 どうやら、私自身や召喚したもの以外も、相手の力や状態が、スキルを通じて数値化する事が可能になったようだ。


 レベル128(99) 

 クラス、戦乙女ワルキューレ


 状態 限界突破 狂戦士化 鎧パージ


 HP19982/39000(9999)

 MP5300/12980(999)

 総攻撃力4095(255) 防御力130


「うわぁ! 何これ!?」


 防御力以外は、私の魔力を完全に上回って、ステータスだけならば、多分フレイアよりも強……。


「え!?」


 炎のゴーレム達が私の目の前まで殺到して、まるで自爆テロみたいに次々と爆発する。


「きゃああああああああああ」


「さあ、踊りましょ。Spelmannen drog fiol'n ur lådan♪ Och lyfte stråken högt mot söndagssolens kula♪ Då blev det fart på Horgafolket♪ Deglömde Gud och hela världen♪ Dansen gick på äng och backar♪ Högt uppå Horgaåsens topp♪ Man slet ut båd' skor och klackar♪ Aldrig fick man på dansen stopp!♫ フフ、ウフフ、アーハッハッハア!」


 爆風で吹き飛ばされた私は、たまらず鎧の羽で加速してロケットブースターのように上空に逃げるも、サングリーズに叩き落とされ、爆発を浴びせられて連続でダメージを受ける。


「まずい! ヴァルキリー状態になってても、このままじゃこの女に」


 すると私の体を抱きしめるように、デリンジャーが庇い、爆発のダメージを私の身代わりに受け続けた。


「うおおおおおおおお、こんなもんで俺は、俺たちは殺れねえええええ! マリーがいれば、この戦闘に勝てんだっ!」


 デリンジャーのステータスが表示されるが、生命力(HP)が一気に減って行って血が噴き出し、肉が飛び散ってこれじゃあ……彼が死んじゃう!


 その時、私達を庇うようにレスターが飛び出してきて、炎のゴーレムにデリンジャーが落とした魔法のマシンガンで攻撃し始める。


「もう、俺の目の前で二度とダチ公をやらせねえ! デリンジャーギャング団の強さを見せてやるぜえええええ!」


「あたしだってもう、彼が死ぬところは見たくない! もうあんな思いをするのは嫌だ!」


 すると、サングリーズが歪んだ笑みを浮かべながら、レスターや膝をついた私やデリンジャーを蹴り飛ばし、嘲笑う。


 けど、負けるもんか!

 

「私は、世界を救う召喚術師。勇者の弟子、マリーだ。人を傷つけて、笑ってるようなあんたなんかに絶対に負けない!」


 なんとか立ち上がるけど、視界が歪み、足もおぼつかないが、私は周囲にバリアーを展開させてサングリーズを、痛みを堪えながらお腹に力を入れて睨みつけた。


「やっとやる気になったようね、ヴァルキリー。さあさ、ワルキューレである私に力を見せてちょうだい? この戦争を楽しみましょう!」


「ファアアアアアアック!」


 ロバートさんの両手が光り輝き、右手の甲に十字架の入れ墨と、左手に聖母マリアの入れ墨が入り、両手にお化けのようなライフルを手に持って、サングリーズに銃撃を始めた。


 レベル100だったのが、一気にレベルもステータスが跳ね上がって……。


 そうか、冥界の勇者は入れ墨が入ると真の力が解放されるのか。


「デリンジャーギャング団なめやがって! 何が戦争楽しいだ! 前世のベトナムもニューヨークの抗争も、異世界で戦った時も、これっぽっちも楽しくなんかなかった! こんな身勝手な暴力のどこに名誉や正義や正当性がありやがる!! そんなに暴力が見たけりゃあ俺が見せてやる! You, bitch !」


 ロバートさんの背広から、次々と銃が出てきて宙に浮き始め、サングリーズや炎のゴーレムに銃撃していくが、物凄い速さで彼女は銃弾の雨を避けていく。


「あっはっはあ、なんて素敵。硝煙の匂いに血の香り、人が斬られて刺されて焼けて戦士達が戦い合う戦場はとても素敵な場所! あなただって知ってるはずよ?」


「ああ!? 目の前で戦友の頭が吹っ飛ばされたり、手足無くなったりするのが、そんなに面白えのか!? 腹を吹っ飛ばされた血と臓物と糞便の臭いがそんなにいい香りか!? 組織間の殺し合いがそんなに楽しいか!? 女子供や家族が死んだり、親しい友が死ぬ戦争や、暴力の何が面白い!!」


 今度は宙に浮かぶライフルに、槍のような銃剣が具現化して、サングリーズを突き刺そうとしたが、彼女の水晶玉が光ると電磁力のバリアーが具現化して刺突が止められた。


「命の輝きが見られるからだわ。愚かな人間も気高い人間も、戦争でその本質が見れる。あなただって戦いが嫌いとか言いながら、今まで多くの人間を殺めてきて、数多の戦場に身を置いた勇者のくせに何を今更。こんなに激しい戦い振りなのに」


「ふざけんな……暴力や戦争で一番犠牲になるのは弱者だ! 女子供や老人達だ!」


 銃剣が突き刺さったバリアに、銃剣から機関銃のように連続で発砲されて、バリアが破られる。


「弱者を守る事こそが、名誉ある男の条件だ。心優しくて美しい心を持った人々が、僅かでもいるならば、悲しくも神にすがる事が出来ないなら、その思いと魂を救いに行くのが……勇者としての俺の生き方! 名誉ある男の道だ!」


 サングリーズに、超高速の光り輝く銃弾が発射され、彼女の背中に無数の銃剣が突き刺ささる。


「天のいと高きところには神に栄光、地には善意のひとに平和あれ。われら創造の主をほめ、主をたたえ、主をおがみ、主をあがめ、主の大いなる栄光のゆえに感謝したてまつる。神なる主、天の王、全能の父なる創造の神よ。世の罪を除きたもう主よ、われらをあわれみたまえ。世の罪を除きたもう主よ、われらの願いを聞き入れたまえ」


 ロバートさんが手の持っていたライフルを構えると、銃口から魔法陣が幾重にも具現化して、空間が歪んで、強烈な魔力反応を感じるが、これは電磁力の力!?


 そうか、銃弾を電磁力で限界まで加速させて、サングリーズを吹っ飛ばす気だ。


波動砲(ティーロ・フィーネ)!」


「素敵……けど愛には障害が必要ね! 複合多重(コンポジット)装甲(アーマー)


 ロバートさんのライフルが文字通り火を噴き、サングリーズは幾重にも金属の障壁や土の壁に電磁バリアも組み合わせて防御する。


 それらの障壁は白熱して穴が次々と空き、全てを貫いた光弾がサングリーズに当たった瞬間、大爆発を起こした。


「すごい、さすが勇者」


 サングリーズの生命力の数値が、一気に減って残りの生命力は残り僅か……。


 いや、ちょっと待って。


 サングリーズの残りHP、時間が巻き戻ったみたいに元の数値に戻ってく。


「なんてこと……瀕死状態から、回復しちゃった。そんなのあり!?」


 煙の中からサングリーズが姿を現して、魔法量がごっそり減る代わりに、急速に生命力が回復している。


生命力回復(リジェネーション)


 あの女回復の魔法を唱えてるんだ。


 魔法量がごっそり減るかわりに。


「ああ、素敵。あなたの魂、ヴァルハラで私のモノにしたいわ。けど、もうあなた終わりね。どういう理由か知らないけど、あなたの体が消えかかってるわ」


 上空に展開していた冥界の封印魔法の効果も消えかかって、ロバートさんの体が、この世界から消滅しかかっていた。


「封印の効果が消えるわ。ついでだから、ブリュン姉様がこちらに来るまでに、この国を私の生み出すゴーレムで戦場にしてやろうかしら?」


「そんな事させない」


 意識朦朧状態を回復した私も、ロバートさんの傍に立つ。


 私とジロー二人がかりで召喚したけど、全力を出しすぎて召喚時間が想定よりも早く、指輪の召喚時間が無くなって。


「そうだ、そんな事は俺がさせねえ。この国を戦場にするだと? もう二度と俺は人殺しなんざこの国にさせねえために戦争を終わらせた! だから、俺がこの戦いを終わらせてやる」


「手を貸すぜジョン。こんな女になめられてたまるかってんだ」


 デリンジャーもレスターも私の側に立つと、ロバートさんはサングリーズを見て、含み笑いをする。


「ふふ、私にもわかるくらい、魔力を大量に消費して、体力を全回復したようだな。しかし切り札を切ったお前は、もはや今のような完全回復は使えまい。今度は俺の切り札を使わせてもらおう」


 ロバートさんが右手を掲げて、ライフルを背広に次々と収納していき、小指には例の召喚の指輪をしてて、そうか、その手があった。


「いでよ! 我が兄弟にして侠客、勇者マサヨシよ」

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