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XRay ~陽に恋う~(クロスレイ はるにこう)  作者: 紙木 一覇
第二章

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130/131

第130話 ごめん、ね

 ロッケン=オーヴァーにトゥルーフォルスが取り込まれる。

 背に輝く翼は、血しぶきのような光の放出。『覇紋(はもん)』と同じく特定の色を持たない翼はとても美しく、同時に怖くも見えて。

 そして、特定の色を持たない未知なる数式が生み出され続ける。


「さあ、祝ってく――っつ!」


 ?

 ロッケン=オーヴァーが胸を抑えた。苦しそうに。

 どうした?


「僕を取り込んだね」


 響く声は、トゥルーフォルス。


「僕の体に薬があるとも知らないで」

「この……感じは――“彼方(かなた)”か!」

「キミの狙いにはここに来る前に気づいていた。だから“彼女”に頼ったんだ。“彼女”は了承してくれたよ。それが自分の役目だからと」

「ぐっ!」


 苦しむロッケン=オーヴァー。体に走るは誰よりもひどいノイズだ。


「もう二度と元には戻れずともキミを倒す為ならと“彼女”は僕と一つになった。

 キミにとっては最悪の毒だろう。

 僕と“彼女”と一緒に逝こう、ロッケン=オーヴァー!」

「――御導(みしるべ) 心迎(みいむ)!」


 !

 彼女! 心迎さんだって!

 ロッケン=オーヴァーを削除する為に生み出された軍事AIコンピュータワクチン!

 彼女がトゥルーフォルスの中に!


「アア―――――――――――――――――――――――――――――――――――っ!」


 ロッケン=オーヴァーの苦しみが止まらない。ノイズが止まらない。

 削除される、最悪の軍事AIコンピュータウィルスが。


涙覇(るいは)

「?」


 オレの名が呼ばれた。トゥルーフォルスにだ。


「キミたちは聞いていたはずだ。『たすけて』と言う声を。

 あれはね、人やAIたちの声だよ。

 涙覇がパーパスに現れた際に僕がキミに与えておいた二つのお菓子の内一つ。救いを乞う祈りのお菓子を通して世界に響いていた民衆の心さ」

「救い」

「人とパペットで受け取った感情が違って見えたのはAIの方がより深く『たすけて』に込められた不安や恐怖を感じ取れたから。シンギュラリティではないけれど、AIが少し上を行っているね。

 ……これからずっと、特に涙覇には声が大きく聞こえてしまうだろう。

 並大抵の人では潰れてしまうかもしれない。声の大きさ、声の多さに。キミもどうなるか……けれどキミは『頑張る』って言ったから、信じてお菓子を託した。

 ごめんね、一方的で」

「良いさ! それよりも!」

燦覇(さんは)だね。分かってる。

 でも燦覇は消える。

 このままでは消えてしまう。

 だから――」

「!」


 燦覇の体が輝いた。綺羅(きら)めいた。


「ごめん、涙覇の体にはこれ以上負担かけられないから、キミの恋人に頼らせてもらうよ」

「ウェディン?」

「僕の信じた涙覇の信じる人なら、きっと」


 ウェディンの体も輝く。綺羅めく。


「燦覇の体を僕では維持できない。

 けれど、お菓子を通して心を遺す事はできる。キミたちは以前僕の子たちからお菓子を継いでいるからね。

 良い、かな?」

「良いわ! やって!」

「ありがとう。

 ウェディン、燦覇をよろしく」


 燦覇が消える。光の粒子となって。なって、ウェディンの中へと入っていく。


「きっと燦覇はキミの力になるよ」

「良いの、そんなの」


 ごめん、ね


 燦覇の声が響いた、気がした。


「燦覇、こう言う時はごめんじゃないの」


 ……ありがと


「ん」

「……っ!」


 燦覇が消えた。ウェディンに心を遺して。


「なんて……」


 事だ。


「……トゥルーフォルス! どうして【世界の患い(ワールドエネミー)】を生み続けた!」

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