第130話 ごめん、ね
ロッケン=オーヴァーにトゥルーフォルスが取り込まれる。
背に輝く翼は、血しぶきのような光の放出。『覇紋』と同じく特定の色を持たない翼はとても美しく、同時に怖くも見えて。
そして、特定の色を持たない未知なる数式が生み出され続ける。
「さあ、祝ってく――っつ!」
?
ロッケン=オーヴァーが胸を抑えた。苦しそうに。
どうした?
「僕を取り込んだね」
響く声は、トゥルーフォルス。
「僕の体に薬があるとも知らないで」
「この……感じは――“彼方”か!」
「キミの狙いにはここに来る前に気づいていた。だから“彼女”に頼ったんだ。“彼女”は了承してくれたよ。それが自分の役目だからと」
「ぐっ!」
苦しむロッケン=オーヴァー。体に走るは誰よりもひどいノイズだ。
「もう二度と元には戻れずともキミを倒す為ならと“彼女”は僕と一つになった。
キミにとっては最悪の毒だろう。
僕と“彼女”と一緒に逝こう、ロッケン=オーヴァー!」
「――御導 心迎!」
!
彼女! 心迎さんだって!
ロッケン=オーヴァーを削除する為に生み出された軍事AIコンピュータワクチン!
彼女がトゥルーフォルスの中に!
「アア―――――――――――――――――――――――――――――――――――っ!」
ロッケン=オーヴァーの苦しみが止まらない。ノイズが止まらない。
削除される、最悪の軍事AIコンピュータウィルスが。
「涙覇」
「?」
オレの名が呼ばれた。トゥルーフォルスにだ。
「キミたちは聞いていたはずだ。『たすけて』と言う声を。
あれはね、人やAIたちの声だよ。
涙覇がパーパスに現れた際に僕がキミに与えておいた二つのお菓子の内一つ。救いを乞う祈りのお菓子を通して世界に響いていた民衆の心さ」
「救い」
「人とパペットで受け取った感情が違って見えたのはAIの方がより深く『たすけて』に込められた不安や恐怖を感じ取れたから。シンギュラリティではないけれど、AIが少し上を行っているね。
……これからずっと、特に涙覇には声が大きく聞こえてしまうだろう。
並大抵の人では潰れてしまうかもしれない。声の大きさ、声の多さに。キミもどうなるか……けれどキミは『頑張る』って言ったから、信じてお菓子を託した。
ごめんね、一方的で」
「良いさ! それよりも!」
「燦覇だね。分かってる。
でも燦覇は消える。
このままでは消えてしまう。
だから――」
「!」
燦覇の体が輝いた。綺羅めいた。
「ごめん、涙覇の体にはこれ以上負担かけられないから、キミの恋人に頼らせてもらうよ」
「ウェディン?」
「僕の信じた涙覇の信じる人なら、きっと」
ウェディンの体も輝く。綺羅めく。
「燦覇の体を僕では維持できない。
けれど、お菓子を通して心を遺す事はできる。キミたちは以前僕の子たちからお菓子を継いでいるからね。
良い、かな?」
「良いわ! やって!」
「ありがとう。
ウェディン、燦覇をよろしく」
燦覇が消える。光の粒子となって。なって、ウェディンの中へと入っていく。
「きっと燦覇はキミの力になるよ」
「良いの、そんなの」
ごめん、ね
燦覇の声が響いた、気がした。
「燦覇、こう言う時はごめんじゃないの」
……ありがと
「ん」
「……っ!」
燦覇が消えた。ウェディンに心を遺して。
「なんて……」
事だ。
「……トゥルーフォルス! どうして【世界の患い】を生み続けた!」




