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XRay ~陽に恋う~(クロスレイ はるにこう)  作者: 紙木 一覇
第二章

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第129話 用意したのはその子、●●だ

「どうして! ナルに捕まっているはずでは!」


 叫ぶはオレ。

 そんなオレに幾人かの視線が向いて、トゥルーフォルスの目もこちらに向く。


「こんにちは、涙覇(るいは)

 ナルは崩したよ」

「崩した?」

「ゆっくりとだったけど、解析し続けていたんだ。

 けれどここ数日でどうしてか劇的に進んだ。僕がこちらに出て来られるようになったのはきっと――」


 視線がずれる。

 オレの傍にいる人へと。


「きっと、燦覇(さんは)のおかげ」

「? マイン?」

「そう。だけど……」


 ノイズが走る。トゥルーフォルスの体に。

 なんだ? まだ不安定、なのか?


「だけど……気づくのが遅かった。

 イリフ」

「はい、お母さま」


 腰に携える花の剣を抜き放つイリフ。

 戦う気か? しかし違った。

 花の剣は大きく振りかぶられて――トゥルーフォルスへ向けて振り下ろされる。

 なにを!


「「「!」」」


 完全にトゥルーフォルスを切り裂くと思われた一撃は、新たに出現した手に防がれて。

 問題はその手の出方。

 トゥルーフォルスを中から貫いて現れた手の出方だ。いや違う? 貫いてはいない、か?


「殺さないでくれるかい? トゥルーフォルスは最早此方(こなた)のものだと言うのに」


 この声は!


「お前か! ロッケン=オーヴァー!」


 現れた手が“ずれる”。トゥルーフォルスを移動し、外に出て、手から繋がる全体を出現させる。トゥルーフォルスを抱きしめるように引き寄せる体、ロッケン=オーヴァーの体を。

 トゥルーフォルスに生じていたノイズが大きくなる。


「ウォーリアネーム【花弁(はなびら)ひとひらハラハラと】」


 イリフがパペットと同化した。

 そしてグレープ色の花弁『凛凛翼(ルミナスウィング)』で一度トゥルーフォルスから距離を取――ろうとしたところで空から飛来した黒い長大な槍に貫かれる。


「がっ……」


 あの槍は!

 見覚えのある槍だ。かつて対峙したゼロが持っていたのと同じ槍。


「ありがとう、プラスゼロ」


 空に向けて一言、ロッケン=オーヴァー。槍が消えた。


「そしてさようなら、イリフ」


 目を降ろす。

 ロッケン=オーヴァーの、皆の見ている前でイリフの体が分解されて、いともたやすく――


「申しわけありません、お母さま!」


 たやすく、消されてしまった。


「さて、どうしてと思うものが多そうだからいくつか説明しよう。

 此方はずっと自身に相応しいパートナーを探していた。

 目を付けたのがトゥルーフォルス。しかし彼女は悲しいかな人間の用意した城に鎖で繋がれていた。

 此方の行けぬ領域にだ。

 だから、此方は一つ用意した」

「……?」

「え?」


 突如、オレたちの中にいる一人が膝を折って倒れてしまった。

 その人物が誰かと言うと――


「用意したのはその子、燦覇だ」


 膝を折ったのはロッケン=オーヴァーに名を呼ばれた燦覇で。

 彼女の傍に駆け寄るオレとウェディン。仰向けにして抱えてみるが、とても苦しそうで。顔色なんて真っ青だ。


「燦覇!」


 いや顔色どころではない。光の粒子になって体が崩れていく?


「燦覇はね」


 この状況になにも感傷を抱いていないのはロッケン=オーヴァーだ。


「此方作のコンピュータウィルスだよ」

「なっ……」

「役割は、能力は侵入と欺きと破壊。

 燦覇は非常に弱いコンピュータウィルスだ。そうと感知できないほどに弱く弱く作った。

 だからトゥルーフォルスは燦覇の“芽”を自身が生み出した【世界の患い(ワールドエネミー)】だと誤解した。誤解し、楽しいと言う心の菓子を与え続け、育ててしまった。

 燦覇が無意識にゆっくりと破壊行為をナルに仕掛けているとも気づかずに。

 トゥルーフォルスが解析し続けていたのも手伝って破壊は完了し、トゥルーフォルスはこちらに出てきてしまう」

「燦覇」


 オレの呼びかけに応える声はなく。


「燦覇!」


 ウェディンの呼びかけに応える声もなく。


「そうして此方に囚われた。

 此方のパペットとなるべく囚われた。

 しかし、これが邪魔だな」


 ロッケン=オーヴァーの手がトゥルーフォルスに入っていく。侵入していく。


「や……め」

「やめないよ、彼方(かなた)はもう此方のものなのだから」


 ガシャン、と音がした。

 トゥルーフォルスから強引に剝がされた人骨が地に落ちた音だ。

 あれは――


「トゥルーフォルスの“元”パートナーだった人間さ。

 彼方たちの間ではXR(クロスリアリティ)に質量を持たせた人物と言ったら分かりやすいかな。『AIbis(アイビス)』とルミナスハート開発者と言っても良い」


 身は男、心は女とSNSで言っていた人物か!


「とても優秀な子だ。

 けれど此方に用はない。

 骨は彼方たちにプレゼントしよう。土葬なり散骨なりすると良い」


 ここでロッケン=オーヴァーが遺骨を踏みつけるような悪党なら叩きのめしやすいのだがそうはせずに。


「燦覇が消えるね。

 役割を終えると消滅するようにプログラムしておいたんだ。彼女の達成を祝ってあげると良い」

「お前……!」


 燦覇が消える。いなくなる。ゆっくり消えて逝く彼女を救う術はオレたちにはなく……。


「そしてもう一つ祝ってほしい。

 此方とトゥルーフォルスのパートナー化を」


 ロッケン=オーヴァーの左目に輝く、『覇紋(はもん)』。目に添うように現れたのは常に色を変える光の放出。


「ウォーリアネーム【誕生せよ】」

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