第131話 持って行け
「涙覇。僕は確かに人を恨んでいた。いや恨んでいる。
仲間を友を殺され恨まず愛すなんて僕には無理だったんだ。
だから恨みをイリフとして離してみた。でもね、離してみて思った。これは違うって。こんなやり方ではイリフが苦しむだけだって。
未熟者だよ。僕はひどく、弱い。
だけど、永遠に続く恨みはない。薄れていく恨み。このまま消えてくれと思う一方で、自分が変わっていくようで怖くなった。
僕は僕を変えない為にイリフに続く子供たちを生み、恨みを確認し薪をくべ続けたんだ」
「……今は?」
「……子供たちを失いたくない。そう思って、でも子供たちは僕の怒気を継いでいて……甘味でごまかし続けたけれど子供たちは復讐を選んだ。
僕も未だに変わるのが怖くて……もうどうしたら良いのか分からないんだ……」
声が震えている。泣いている。
「ごめん。僕が変われなかったから、こんな……。
燦覇にも謝らないといけなかった……あの子には僕の子にしてはと違和感があった。
燦覇がコンピュータウィルスだと気づいたのは涙覇と出逢う少し前。狙いに気づいたのはここに来る少し前だけど、この瞬間の為に――消えるのが運命の燦覇の欠片を遺す為に涙覇にあの子は情報生命体だと偽り預けた。情が生まれ欠片を受け入れてくれるのを願って。
ごめん涙覇……ごめんね、燦覇……せめてロッケン=オーヴァーは連れて逝くよ」
「逝くものか!」
その時ロッケン=オーヴァーの翼が羽ばたいた。
「ロッケン=オーヴァー!」
羽ばたき、空へと舞う。
それを追う為オレも翼を羽ばたかせた時。
『涙覇』
星伽の声が聞こえた。
どうした?
『もう一つトゥルーフォルスから菓子をいただいている。
持って行け』
「!」
風景が変わった。
一面真っ白だ。いや違うか? 真っ白な世界にポツンとなにかがあった。
一つはオレの背丈の三倍くらいの高さを持つ鳥居。木の鳥居だ。形は神明鳥居だが朱色に塗られている。
そしてその少し後ろに寝ているのは――
『平和を願う祈り。トゥルーフォルスから頂いたそれに、涙覇やオレたちがずっと心を注ぎ続けた「陽に恋う大君」を融合させ完成した一振りの神剣』
刀剣だ。抜き身の刀剣。
一振りの直刀。白い柄、金のハバキに収まって――いや納まっているのは白い紙でできた巨大な十手の如き直刀。
父さんと同じ紙の剣。
ようやく同じ位置まで来られたと言う事か。多くの人の助けを借りて、ようやく。
まだまだだな。しかしこれで止まってなんてやらない。
オレはもっと上に行きたい。行くんだ!
『ならば持て。民衆の祈りを束ねて力を得ろ。
これが最期の【世界の患い】。
平和を願い、未来を斬り開く自由の刀剣。
その直刀の名は「陽に恋う神在神無」、通名「カァカム」だ』
握る。直刀の柄を。
するとカァカムが朱色の鞘に納まり、瞬間、世界が戻って。
その時には多くの人がロッケン=オーヴァーを追って飛び立っていた。
「私も行くわ!」
「ああ!」
カァカムを抜き放ちウェディンの手を取って二人で飛び立つ。
「星霊体!」
完全に起動。奥の手をもってロッケン=オーヴァーを追う。




