第12話。石油王。
作者メモ。
三国志演義は、三国時代より1000年後の明代に正史三国志を元に書かれた、後漢末と魏・呉・蜀が天下を争う三国時代を舞台とする時代小説・武侠小説(歴史物二次創作ファンタジー)です。
作者は、施耐庵、又は羅貫中だと云われています。
三国志演義では、劉備を善玉、曹操を悪玉として描いています。
一応、中国史では、魏最後の皇帝の元帝・曹奐から禅譲を受けた司馬炎が建てた晋を正当王朝としているので、必然的に魏も正当王朝でなければ帝脈が途切れ、後の王朝も全て正当ではない事になってしまいます。
つまり、魏は正当王朝で、正当王朝に抗った劉備は奸賊であり、本来は善玉などになるのはおかしな話なのです。
では何故、三国志演義では劉備が善玉に祭り上げられたのかと言うと、これは諸説紛々あるのですが、一説には伝統的に中華文明の中心とされた黄河流域(中原)に異民族による征服王朝が建つようになり、中原を明け渡す格好になった漢民族が、中原を離れた蜀の地で皇帝を自称した劉備にシンパサイズし、逆に中原に覇を唱えた曹操を異民族の征服王朝に擬えたからではないかと云われています。
また、三国志演義の元ネタである正史三国志を書いた陳寿が元々蜀の人で、元の主筋である劉備の事を、かなり美化して書いているからという理由もあります。
それにしても、この収納スキルは凄いね。
目の前にある物体をストレージに収納出来るのは、ゲームの仕様とかに良くあるから理解出来るとしても、私の「収納(天位)」は有効範囲がとんでもなく広い。
この「天位」というのがスキルのレベルを表しているのだとするなら、もしかしたら「天位」は最高レベルという意味かもしれない。
有効範囲は、50kmもあるんだよ。
頑張れば、もっと遠くまで行けそうな気もする。
収納の有効範囲50km以上。
待てよ……。
私は、収納スキルを水平方向にしか試していないけれど、これを垂直方向に試してみたら?
地下50kmまでの範囲にある物体をストレージに収納出来るって事だよね?
地下50kmは、海底とかの地殻が薄い場所ならマントル層に届く。
つまり、地殻内にある物質は、全て私の収納の回収範囲内にある訳だ。
地下資源とか……。
ここはタクラマカン砂漠。
タクラマカン砂漠はタリム盆地の中にある。
タリム盆地と言えば、あれがあるよね。
石油・天然ガス・石炭に、金もある。
博識?
地理学専攻を舐めんな。
そういう地下資源をストレージに大量収納したら、私は超大金持ちになれるんじゃ?
盗掘?
バレなきゃ大丈夫なんじゃね?
私は、機械とかを使わずに瞬時に収納が可能だ。
砂漠の上で素知らぬ顔で歩いているだけの私が、地下資源を「盗んでいる」なんて側から見て誰に分かる?
精製前の原油は、成分の微妙な違いで原産地が分かるらしい。
でも、私の収納は、ストレージ内で成分を分離する事が可能だ。
多分ストレージ内でガソリンとか軽油とかに精製してしまう事も出来ると思う。
そうなったら、私のストレージから出したガソリンや軽油は、もはや何処の油脈から掘られた原油だったのか判別出来ない。
証拠隠滅……良し、行ける。
でも、仮に掘れたとして、それを如何やって換金する?
金や鉱物はまだしも、石油や天然ガスや石炭を一般人が大量に売却出来るような買取窓口なんかない。
ブラック・マーケット?
いやいや、それはヤバい。
ま、いざとなれば、自衛官時代の伝手を頼って日本政府に直接売り込む手もある。
私が任官時代にお世話になった元上官は、退役して国会議員になり政府で物凄く偉くなっているからね。
国務大臣を歴任し、次の総理候補とか言われている。
日本の国益に適う資源提供なら、入手ルートとかには目を瞑ってくれるかもしれない。
いや、日本という国は、そういう所で変に潔癖というか、綺麗事を重んじるからな〜。
ま、それが日本の掛け替えのない美点でもあるんだけれどね。
国連常任理事国の、あの国とか、あの国とかなら、喜んで買ってくれるだろうけれど……。
自衛官時代に、日本が良心や正義や仁義を守って、外交や安全保障で損をするのを、私は何度も苦々しい気持ちで見て来た。
以前の仕事柄、私が知り得た機密情報によると、世間的には余り知られていない事実だけれど、日本は上手くやれば先端技術などで世界の派遣国になれるチャンスが何度もあったんだよ。
そういうチャンスは、何度も、あの世界最強の超大国や、日本潰しで結託した欧米の他国籍連合によって潰されて来た。
というか、日本が空気を読んだり、びびって自分から際どいディールを降りちゃったケースもあるけれどね。
日本人だけが理解していないけれど、国際的な日本の影響力は半端ない。
長年世界第2位の経済大国である底力は、世界最強のアメリカ合衆国でさえ無視できないんだよ。
アメリカにとって、日本は死活的に重要なパートナーだ。
日本にアメリカ5軍全ての方面司令部が常設されていて、一般に世界最強と云われている米第7艦隊の母校が他でもない日本にある理由を考えれば、それが多少なりとも分かると思う。
国連軍司令部も日本にあるしね。
あ、今はそんな話は関係ない。
地下資源採掘……やってみよう。
地下に意識を集中して……あ、多分あった。
石油と天然ガスだ。
「ほいっとな……」
うっしゃ〜っ!
石油と天然ガス、大量ゲットだぜーーっ!
やった。
やってしまった……。
私は、一瞬にして石油泥棒……ゲフン、ゲフン、もとい石油王になった。
石油王に、私はなる!
その後、私は広範囲を移動しながら、地下資源を採掘しまくった。
石油・天然ガス・石炭・金、それから貴重なレア・メタルやレア・アースも……。
それにしても、私の収納は凄まじいね。
あれだけの石油や天然ガスを収納しても、未だ容量限界にはならない。
これ、マジで無限ストレージなんじゃ……。
でも、かなりの油脈は、シェール・オイルやシェール・ガスとして存在していて取りきれなかった。
多分、私が回収した量の数倍は取り残している。
あれは地層の一部という判定になり、私のストレージは地層丸ごとの収納は出来ない仕様みたいだ。
無謀にも地球の収納を試したけれど、出来なかったしね。
シェール・オイルやシェール・ガスは、確か大量の水を注入して採掘する筈。
今手持ちの真水は少ないからな〜。
これは貴重な飲料水だ。
今度海に行った時に、大量の海水をストレージに汲んで来れば良いね。
私の「ストレージ内選別」なら、簡単に海水から塩分を分離して真水を作れるから環境への影響も少ない。
それにタリム盆地は広大だ。
この近辺以外にも油脈は、まだまだある。
ぐふふ……濡れ手で粟とは、この事ですな。
・・・
私は、守銭奴石油王の夢から覚めて、【常時能力】(パッシブ・スキル)に続いて【任意能力】(アクティブ・スキル)の検証を始めた。
回復(天位)は……反応なし。
転送(天位)は……おっ、手の平に掬った砂を離れた場所に飛ばせた。
飛ばせたといっても、投げた時みたいに軌跡を描いて飛んで行く訳ではなく、パッと消えて瞬時に目的地に出現する。
転送……なるほど。
これは物体を遠隔地に送れるテレポート的な能力だ。
私は、転送距離や、転送する質量(砂の量)を変えて色々試してみた。
距離や量に拘らず、1回の転送で1単位の神力が消費される。
神力は都度1単位ずつ消費するなら、効率を考えて、なるべく1度に纏めて大量の物を長距離に転送させた方がお得という事だね。
これは物体じゃなくても、例えば自分自身を遠くにテレポートさせる事が出来るんじゃ……。
やってみよう。
出来た。
瞬時に30mくらい移動したね。
こんどは少し遠くまで……。
一瞬で1kmくらい移動した。
これはヤバい。
タイムラグがない瞬間移動だから、私は光速より早く移動出来る。
色々と検証した結果、私が目視している範囲と「地理」でマッピングされた場所になら、自由に転送(転移?)出来る仕様のようだ。
マッピングとは、マップに表示されているだけではダメで、自分が実際に訪れた場所でなければならない。
「実際に訪れた場所なら」と、日本の自宅や職場や実家などに転移出来ないか試したけれど……ダメだった。
つまり、私が何故かタクラマカン砂漠で目覚めて、この謎の能力を使えるようになってから以降に訪れた場所でなければならないという事だね。
待てよ。
目視範囲への転移が可能なら、空中に次々と転移を繰り返せば飛行も可能だよね。
やってみよう。
転送……転送……転送……。
う〜ん、確かに空中移動は出来るんだけれど、空を飛ぶ時の醍醐味である風を切って進む感じがないよね。
上空高高度に転移して、しばらく滑空してから、再度高度を取り直すように転移を繰り返せば……。
滑空って事は空力を使う訳だから翼がないと単なる落下になる。
翼か……。
ストレージ内には、種類ごとインゴットに加工した鉱物類や石油が大量にある。
それを素材に翼を……。
あ、臨界事故が怖いからウラニウムだけは、インゴットにはしていないし、小分けにして重金属と純水で囲って収納してある。
ま、鑑定をしたところ、私のストレージは外界とは完全に隔絶されるみたいだから、収納してあれば放射線の害もないと思うけれど念の為だ。
……てか、喉が渇いたね。
大気から集めている水は……。
また結構ストレージ内に溜まっている。
う〜ん。
今までは、ストレージから直接手の平に水を出して水分補給をしていた。
多分私は、「疾病耐性極限向上」と「毒物耐性極限向上」の伏羲の加護で食中毒とかにはならない気がするけれど、こういうのは気分の問題だ。
出来れば、コップ的な文明の利器が欲しい。
ストレージ内には、水と塩の他に砂から分離された鉱物類と、石油などの地下資源と、大気から分離された膨大な気体があるだけ……。
ストレージ内で塩を1塊りにしたら結晶として取り出せたから、試したら鉱物もインゴットに出来た。
その要領で、石英をコップの形に結晶化すれば良いんじゃないかな?
石英ガラスがあるからね。
やってみよう。
……出来た。
石英ガラスのマグカップ……のつもりが、サイズ感を間違えてジョッキになった。
ジョッキをストレージから取り出して、ストレージ内の水をジョッキに注げば……。
お〜、成功。
「ゴクッ……。ジョッキは上手く出来たけれど、こうなると水が温いのが気になるよね……」
手の平で水を飲む時は気にならなかったけれど、ジョッキはキンキンに冷えているイメージがある。
あ〜、生ビールが飲みたい。
砂漠の大気から集めた水だから温いのは当然か……。
待てよ……塩や石英が結晶化出来るなら、水も結晶化出来るんじゃね?
水の結晶って、つまり氷だよ。
どれどれ……普通に出来たね。
収納……何でもありか?
「ゴキュ、ゴキュ、ゴキュ……ぷは〜っ!美味いっ!砂漠の真ん中で飲む冷たい水は最高だね〜」
私は、ガリガリと氷を噛む。
これってさ、つまりストレージの中なら、インゴットだけじゃなく何にでも自由に成形可能って事だよね?
鉄は結構集まっているけれど、何か作れるかな?
「出来ちゃったよ。純鉄製の剣」
不純物がない純鉄は錆びないけれど、柔らかくて実用には向かない。
剣とか強度が要求される道具は、鋼鉄製じゃないとね。
鋼鉄って、鉄に炭素を混ぜる。
炭素……石炭があるじゃん。
これを何か良い具合に混合すれば鋼鉄が……出来た。
収納……めっちゃ便利。
あ、ストレージ内で物質を自由に成形可能なら、鋼鉄で翼を造ってみるか?
それで飛べるじゃん。
翼面荷重を考えると、結構大きな翼が必要だよね。
私は、女性にしては結構体重があるからさ……。
……って、喧しい!
身長と体重のバランスを計算したBMIなら、私は痩せているんだよ。
重さは、身長分だからね。
いや、マジで。
確かに胸の辺りは控えめ?
喧しい!
見た事あんのか?
私は、着痩せするタイプなんだよ。
こう見えても脱いだらボンッなんだよ、ボンッ。
コホン……別に大きな揚力は要らないんだよ。
転移で高度を稼げる私は、重いエンジンとかを積む必要はないんだから。
それに何十mか滑空している気分を味わえれば良い。
実際には落下しているとしてもね。
何で飛びたいのか?
そりゃ〜、ロマンだからだよ。
鋼鉄板に腕を通せるパーツと腰を固定するパーツを取り付けて、背中側に背負う……。
重……くはないね。
これも「身体能力極限向上」と「肉体強度極限向上」の伏羲の加護のおかげか……。
でも、何kgあるんだ、これ?
材質が航空機素材のアルミニウム合金とかチタン合金とかジュラルミンとかカーボンではない、単なる鋼鉄だから、多分300kg以上はあるよね。
「身体能力極限向上」と「肉体強度極限向上」の伏羲の加護がなければ、絶対持ち上がらない重量だ。
さあ、試験飛行をしてみよう。
転移……そして、滑空体制……転移……滑空……これ、飛べてるか?……転移……。
ミシッ……。
うわっ!
翼が曲がった。
柔軟性が足りなかったか?
私が造ったのは、無垢鋼板の真っ直ぐな翼で、反りとかを考慮した設計じゃないから、剛性が低過ぎたんだ。
転移……うわっ、曲がった翼だと姿勢維持が……。
くっ、ロールする。
これは、不味いっ!
制御不能。
安全高度を確保する為に転移しなくちゃ。
でも、高速スピンで上下感覚が分からない。
あ……ヤバっ……落ちる……。
「ぎゃーーーーっ!」
ビターーンッ!
「へぶしっ!」
……生きてた。
推定高度1kmから墜落して地面に激突したのに、私は無事だった。
というか無傷だね。
骨や内臓に損傷がないどころか、皮膚に擦り傷1つすら負っていない。
痛みも全くないね。
これも「肉体強度極限向上」の伏羲の加護のおかげか?
取り敢えず、私は地上1kmから落ちても無傷だという事は検証出来た。
あ、そうだ。
私は、マップ上の任意地点を指定して転移出来るんだから、目視転移に拘る必要はないんだよ。
高度が下がったら、予め指定しておいた高度に転移すれば良い。
そうすればスピンで上下感覚が失調しても、問題なかった。
それから、翼も鋼鉄製じゃなくて、もっと適した素材で造れたよね。
私は、ストレージ内に膨大な量の石油を持っている。
私のストレージ内精製能力なら、石油から石油化学製品……つまり、プラスチックやビニールや各種化学繊維も造れる筈だ。
強化プラスチックなら、柔軟で軽量な翼も出来る。
強化プラスチック……ほら、簡単に出来た。
鋼鉄の骨組みに、厚いビニールを張っても良い。
ちっ……事前に良く考えてから行動しなくちゃね。
生身で飛行出来るロマンが溢れて、つい我を忘れてしまった。
いかん、いかん……。
でもさ、目視範囲に転移出来るなら、遠くまで見渡せる砂漠なら長距離移動が捗るよね。
ホータンまでの200kmも、この転移を繰り返せば直ぐに着くんじゃね?
ホータンに向かえば何らかの通信デバイスはあるだろう。
それを借して貰えば、家族や職場の誰かに連絡が付く。
アドレスが分からない……いや、ネットに繋がっている端末があれば、検索すれば何とかなるよね。
少なくとも職場の社名は分かっている。
それで検索すれば会社のホームページがあるし、そこにアドレスも載っている。
ホータンは、中国か。
日本大使館とか公使館とか領事館とか、そういう所に連絡すれば無一文でも保護して貰えるよね。
ほっ……助かった。
私は、中国語が分からないけれど、【常時能力】の「言語(天位)」ってのが、たぶん自動翻訳的な能力じゃないかと思う。
ま、最悪言葉なんか通じなくても、漢字の筆談とか、片言の英語とか、ボディ・ランゲージで何とかなるよ。
ホータンは政治的には微妙な地域だけれど、紛争地域とかではないと思うし、万が一危険な事があっても、私は既にマッピングされた砂漠の真ん中に一瞬で転移で逃げて来られる。
良し。
私は、この意味不明な遭難トラブルに打ち勝ったね。
ん?
神力が……33になっている。
あ、飛行実験で繰り返し「転送」をしたから、神力が消費されたのか?
という事は、やっぱり神力ってMP的なものなんだ。
あの飛行実験(遊び)で3分の2も神力を使っちゃったよ……。
ま、良いか。
神力がMPなら、いずれ自然回復するっしょ。
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