表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/17

第十四話 いざ未来

「もーうるさいわね。そんな言うなら行かなければいいじゃない」


エリーは本を読みながら、その青い目を眼鏡のレンズに隠して、ぞんざいに言った。

高級ソファの表面は信じられないほど柔らかく作られていたが、エリーの身体は固くなって、重く沈んでいた。


「酷い!酷いぞ!私の挑戦を応援してくれるのではなかったのか!」

「それとこれとは話が違うわ」

「な?!」


ページを捲る音が鳴る。


サンは立ち尽くした。

先までのエリーの聖母のような振る舞いに、彼女は甘えていた。が、期待は裏切られた。


「そもそもアンタが未来に行きたいのは自分の欲望のためでしょ?なら自分で片付けなさいよ」

「欲望じゃない!社会活動だ!」


サンは必死だった。

彼女自身、未来に行くということに恐怖を感じていない訳では無かった。

一所懸命に、エリーを説き伏せる術を思案していた。


「それにそろそろ独り立ちする頃合いよ。私の扶養を離れて、自分で生きれるようになりなさいな」

「・・・・・・!」


エリーの突然の発言に、サンは強く動揺し、瞳の表面に雫を宿した。

エリーも本気で言っている筈ではないのだろうが、少なくともサンの心には痛く響いた。


「そんなに私が煙たいのか!もういいよ!一人で行くよ!エリ姉の馬鹿!!」


そう吐き捨ててて、サンはまた手帳に齧り付いた。

今度は本当に血眼になっていた。


「うーん。ああでもないこうでもない」


サンは自分の乱れた心を更に掻き乱すように、手帳のページを激しく捲った。

部屋の中に、紙の音が二重に響いていた。


「どこに未来に行く方法が書かれているんだ?この同じ内容のページは白紙ってことか?」

「(どうせ行けっこないわ)」


エリーは眼鏡の端からちらちらとサンの動向を観察していた。

暫く様子見が続いたが、サンが頭を掻き始めたのを見て、エリーは安心して目線を本に戻した。

サンは行き詰まると頭を掻くのだ。

エリーは自分の読んでいたページまでこっそり戻った。


「おお!これは白紙ではなく検索ページということか!早速検索する!」


エリーは思わず目線をサンに戻した。


「・・・・・・えーっと、何々?"タイムトラベルにはパスポートと3つのコードが必要です"・・・・・・"準備ができた方はこちら"」


サンが画面をタップする音がする。

そして次の瞬間、


ジリリリリ!ジリリリリ!


「おお!本当にかかってきたぞ!」


エリーは立ち上がった。

サンの小さい背中を見下ろす。

エリーの靭やかな両手から、一冊の本が音を立てて落ちた。


「暗号はこれと・・・・・・音声はここから持ってきて・・・・・・最後のコードはBell-0222っと・・・・・・」

「ちょ、ちょっと!」


途轍もない胸騒ぎがして、エリーは受話器に向かうサンの手を引いた。


「アンタ本当に未来に行くつもりなの?」

「あたり前だ!」

「待ちなさいよ! せめて 一晩考えてから・・・・・・」


サンはエリーの制止を振り切って、受話器を取った。


「ちょっと!」


サンは天邪鬼になっていたのか、一言も淀むことなく呪文の詠唱を始めた。

Bコードの長いアルファベット列を並べている間もエリーの妨害は続いたが、彼女はそれに加熱されるように詠唱のスピードを上げた。


そして───


「CコードはBell-0222、アンロック」

「サン!」


再び眩い光が部屋の中を包み込んだ。

青白い妖光がサンの小さい顔を照らし、はっきりとした黒い影を背中に浮き上がらせた。


その奇妙なコントラストに目を奪われていたエリーは、固唾を呑んで言った。


「仕方ないから私も行くわよ!未来!」

「ちょ!何する!返せ!」

「アンタは向こう見ずだから!」

「は?!さっきまで行かないとか言ってたくせに!」

「気が変わったのよ!」


受話器をぶんどったエリーは、サンに身体を引っ付けようとしたが、サンの天邪鬼も深刻であったようで、力のあらん限りエリーの身体を引き剥がした。

十センチの身長差がある彼女等の取っ組み合いは、数十秒の間続いたのち、エリーの勝利に終わったかのように思えた。


しかし───


「どわっ!」


エリーは転んでしまった。

いつもピカピカに磨かれていたフローリングが仇になったようだ。


サンは落ちた受話器を取り返し、耳元にしっかりと引っ付けた。


鋭い閃光が、一瞬のうちに晃った。


「サン!!」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ