キーラとエリアス
「お待たせ致しました。お嬢様。」
サンドイッチを手に、エリアスが戻る。
ひったくるようにサンドイッチを奪い取り、私は感じていた疑問をぶつけた。
「もぐ…。私、どこか具合が悪いのかしら?」
「口に物を入れながら話ではいけません。
最近のお嬢様の行動は、目に余りますよ。」
相変わらず、私の質問に答えず失礼な事だけを言うエリアス。
(いつか、殴ってやるわ…‼︎‼︎)
私は、密かに闘志を燃やした。
コンコンッ
扉を叩く音がする。
(誰かしら…?)
扉を開けるため、ベットの上から降りようとするもエリアスに止められた。
「お嬢様は、ベットの上から動かないで下さい。」
再びベットに横たわる私に、エリアスは布団をかぶせた。
「はい。ただ今。」
ガチャリ…
扉を開けるエリアス。
(誰かしら…?)
訪ねてくる人に、心当たりはなく私は首を傾げていた。
「こんにちは、エリアス。
キーラさんは、いらっしゃいますか?」
「…。ええ。
ご用は、なんでしょうか?」
「試験の結果を伝えに。
後、お連れしました。彼を…。」
「彼…?」
部屋を訪れたのは、リアバルのようだ。
(あ!試験ッ。どうなったのかしら)
卵から孵化させれば合格だと言っていた筈。
しかし、記憶があやふやでいまいちどうなったのか覚えていない。
(確か…ドラゴンを召喚したような…。)
記憶に残るのは、ドラゴンが現れた事だけだ。
ただ、普通の人間がドラゴンを召喚した事などない筈だ。
それどころか、ドラゴンと呼ばれる生き物などこの世界にはそういない。
(伝説の生き物よ…?)
「エリアス、久しぶりだな。
マスターに呼ばれてな。」
扉から聞こえてくる声に、意識が戻る。
(この声‼︎やっぱり召喚していたんだわ。ドラゴン。)
記憶が確信に変わる。
軽く体を起こして、エリアスの反応を見る。
「…‼︎」
目を見開き、エリアスは扉の向こうにいるドラゴンを見ている。
どうやら、声にならないほどに驚いているようだ。
「どうした?エリアス。」
「リアバルッ‼︎なぜクロがここにいるんだ‼︎」
(えッ…‼︎)
今までに見た事もない大きな声で、エリアスが怒鳴る。
その目つきは、怒りに歪み背中からも抑えきれないほどの怒りを感じる。
その姿に、私は怯えてエリアスを呼んだ。
「エリアス…?」
「お嬢様…ッ‼︎」
私の怯える声に、ビクッと身体を震わせエリアスはこちらを向く。
その瞳からは、既に怒りは消えただ私を心配しているように見える。
「エリアス?どうしたの?」
「お嬢様に話して置かないといけない事が出来ました。
全てをお話する事はまだ、出来ません。
全てを聞いた時、お嬢様はどうされるのかはわかりません。…ですが。
リアバル、すみません。少し時間をいただかますか?」
「…わかりました。
クロ、行きますよ。」
また後で…。扉の向こうに声をかけてエリアスは扉を閉めて、私に近づいてくる。
そのスピードは遅く、私はそれがひどくもどかしい。
とても悲しそうに見えるエリアスの表情に、何故か私は喜びを感じている。
何故かはわからない。だけど私はエリアスが、『私』を見てくれている事が嬉しい。
今までに何度か、エリアス含めて私を悲しそうな目で見ている人達を見た事がある。
(だけど…。私は、エリアスだけに見てもらいたかった。)
そんな事があった記憶は私にはない。
なのに…私を見るエリアスの目に身体が喜び震えてしまう。
魂の記憶ー… 何故か、私はそう思った。
エリアスが私のすぐ近くまで近づいて来ている。
「お嬢様…。
私には、あなただけです。」
「それは、私?それとも…私?」
少し緊張しながらも、私は聞く。
自分でも言っている事がおかしいのはわかっているが、とても重要なことに思えた。
その質問にエリアスは、などを鳴らして答える。
「ゴクリ…。
私が大切に思うのは、あなたでありお嬢様です。」
だけど…と声にならない声でエリアスは私に手を伸ばす。
その手を避けずに、私は受け入れる。
エリアスの手は、私の頬を撫でる。
徐々に顔が近づいて来て、唇が触れそうな距離になった時、私はたずねた。
「だけど…?」
エリアスは「意地悪ですね…あなたは。」と言って少しだけ距離をとった。
「私は、キーラ。あなただけを愛しています。」
「よく言ったわ。合格よ。」
短く返事をして、今度は私がエリアスの頭を引き寄せた。
チュッと軽く唇が合わさる音がする。
「ん…お嬢様、簡単に許してはいけないと何度もお伝えしましたよ。」
「…。教育者の教えが悪かったんじゃないかしら。
主人に手を出すような、執事なんですもの。
それに…お嬢様じゃないわ。キーラよ。」
おでこをくっつけあって笑う。
「キーラ…」
私の名前を呼ぶ声に、私はもう一度目を閉じた。
「はじめまして、リアバルと申します。
魔法学校、カトレア学園にて光魔法の講師をしております。」
「私は、クロだ。
マスターの僕。ドラゴン族だ。」
「クロ…まだあなたの事は少ししか出て来てません。
ドラゴン族なんて、言葉を使えば読者の皆様は困られますよ。」
「…む。しかし、もう言ってしまったぞ。」
「そうですね。今後は気をつけてくださいね。」
「何に気をつけるかよくわからんが、気をつけよう。
ところで、マスターに何故まだ会えんのだ?」
「ああ…そうですね。
僕達なかなかひどい扱いを受けましたよね…。
出番途中で、放り投げられた感じがします。」
「エリアスが何かしたのか?」
「何か…といえば何かしたとも言えますね。
ですが、問題はそこではないんです‼︎」
「どうしたッ⁉︎
突然大きな声を上げられると驚くではないか…。」
「ごめんなさいね、クロ。
でもね、大事な事なんです。
実は、これで第1章が終わりなんですよ‼︎」
「なに…⁉︎
では、これで私達の出番も終わりなのか?」
「そうなんです。
この話の後、第1章のまとめストーリーと簡単な後日談をするそうなんですが…」
「出番は少なそうだな。
ここから俺の出番かと期待していたのにッ‼︎」
「私もですよ…。」
…。気を落とさないで下さい。
ちゃんと出番はあります。
「む‼︎誰だ?お前は⁉︎」
…。通りすがりのAとでも思って下さい。
皆様、第1章完結までお付き合いいただきありがとうございます。
この先数ページに渡り、まとめストーリー及び番外編を入れて第2章へと入っていきます。
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