お嬢様、夢をみる
「……お嬢様…。お嬢様‼︎」
誰かが私を呼ぶ声がする。
(この声は…エリアス?)
返事をしようと試みるも、声が出ない。
身体は金縛りにあったかのように硬直し、瞼ですらピクリとも動かせない。
(ごめんね、エリアス。返事が出来そうにないわ。)
声に出せない代わりに、心の中で謝る。
何も出来ず、ただ目を瞑り大人しくし続ける。
(あ…だめ。眠くなってきたわ…。)
襲ってくる眠気に耐えられず、私は眠りに落ちていった。
ーーーーーーー……
「…と言うわけなの。皆、私に協力してくれるわよね?」
誰かの声がする。
眠りについたまでの記憶があるので、夢の中なのだろう。
「私は、反対です‼︎
あなた1人でどうにか出来る所ではなくなっています。」
「そうですよ。
あなた1人ではだめですよ。
私達全員でしなければ…‼︎」
暗闇の中、言い合っているような声だけが聞こえる。
(誰なのかしら…?)
見てみたいと願う気持ちはあるものの、なぜか気持ちにセーブがかる。
見てはいけないー…。本能が告げる。
(聞くくらいなら、いいわよね…?)
聞くだけなら…と耳を澄ませる、
「お願いよ、皆。
わかって頂戴。私達全員がいなくなると世界が終わってしまう。
あなた達は、私の代わりなの。わかって頂戴。」
「ですが…‼︎」
「グオオッ‼︎‼︎」
「‼︎‼︎」
女性なのか男性なのかわからない、どこか中性的な声のする人の意見を反対しているようだ。
(何かの鳴き声だけは、違うみたいだけれど。)
大きな咆哮を上げた何かは、主人の意見を守るつもりのようで、反対する者達を威嚇している。
「ありがとう…」
「グルグル…」
褒められた事に嬉しそうに鳴き声をあげる、何か。
(それにしても…皆は何に反対しているのかしら?)
誰が何の話をしているのかは、知らないが何故か私には中性的な声をする人の意見に賛成してしまう。
「まずい…‼︎‼︎」
もっと話を聞こうと耳を澄ませた時、突然引っ張りあげられるような感覚がして、意識がずるずると浮上していくのを感じる。
(あ…目がさめるわ。)
パチリ…。
「お嬢様…ッ‼︎目が覚められましたか?
お気分は大丈夫ですか?」
目を開けて一番はじめに写り込んできたのは、エリアスの顔だった。
「大丈夫よ。それより何がまずいの?」
(相変わらず顔が近いのよッ‼︎)
エリアスの胸を軽く押して、距離を取る。
「まずい…?何の事です?
それよりご気分は大丈夫ですか?」
(とぼけている…?それとも夢…?)
起きる瞬間に聞いた声は、間違いなくエリアスの声だった。
寝ていた事もあり聞こえた声が、真実なのか夢なのか言い切れるほどの自信もない。
諦めて、私は普通に返事をする事にした。
(どうせ、聞いても答えてくれないでしょうしね。)
「気分は悪くないわ。
お腹は空いているけれど」
「きゅうりのサンドイッチをご用意致します。」
「そうして頂戴。」
「相変わらずの安上がり…いえ、健康的な。『うるさいッ‼︎‼︎』
失礼な事を言うエリアスに喝を入れて、さっさとサンドイッチを持ってくるように命じる。
(私は、何してたんだっけ?)
起き抜けの頭はまだ正常に動かそうにない。
ぼんやりと、エリアスが戻るのを待つ事にした。




