第41話
次の作戦が舞い降りた。
レオニードが茶色の髪飾りを見て、その後マルキュナの方を見た。
「俺がこれをつければ……守れるのか……?」
「レオニード、無理しなくていいよ?」
「いや、むしろ願ったりだ。この間廊下で転んでけがをしているのを見た。もし自分があそこにいれば無傷でいられたのではないか。ずっとそう思っていた。だから、俺の想いが役に立つのであれば、喜んでつけよう」
そう言ってレオニードは茶色の髪飾りを左の前髪をまとめるように付けた。
そしてマルキュナの方に向いた。
「つけてもいいか?」
その目は真剣だった。
守りたい。
その気持ちが伝わってきた。
「……いいよ」
ズルいと思った。
そんな目で見られたら断れるわけがなかった。
正直あの時は怖かった。
死ぬかと思っていた。
この髪飾りが本当に守れるのかはわからない。
でもそんなことは関係なかった。
純粋に嬉しかった。
そう私は嬉しかったのだ。
レオニードはマルキュナに一歩近づき、左側の髪に触れた。
以前髪留めを付けていた位置だった。
指先が髪に当たる瞬間、心臓が跳ねた。
教室で赤面していたレオニードの気持ちを今理解できた。
こうも気恥ずかしいものかと。
「これで、いいかな」
額に汗をかきそうになる手前で髪留めが収まる。
その時レオニードとの間に何かが繋がった感覚があった。
魔力なのか、恋心なのか分からないまま、その髪留めを指先で撫でた。
「……ありがとう」
頬が少し熱くなったのを感じた。
レオニードはマルキュナの表情を見て、強く頷いた。
「うむ。とても似合っている。お揃いだな! 大事にするよ!」
その時、街の奥、マルキュナの見つめる先に雷が落ちた。
雲もなく、雨もなく、何かが導いたかのように。
たった一瞬だったが、雷は太く強く何層にも重なったものに見えた。
今まで見たことのないその自然現象は、ただそれだけで異常であると認識できた。
黒い煙が上がり、悲鳴が聞こえてきた。
レオニードがその悲鳴から守るようにマルキュナの前に出て、様子を伺った。
「マルキュナ! 感知の魔法を頼む!」
「……街の中じゃ使っちゃダメだって」
「そうか……分かった!」
そう言うとレオニードは雷の下へと走り出した。
「先に帰っていてくれ! 俺は行かなきゃ!」
すると同時に遠くから叫び声が聞こえてきた。
「魔物だー!」
「街に魔物が出たぞー!」
「衛兵を呼んでくれー!」
魔物、それに彼は反応したのかもしれない。
マルキュナは心配になりレオニードを追いかけようとした。
刹那、目の前に巨大な影が降りてきた。
「ちょっと待て。話が先だ」
エリフィアナだった。
「でも、レオニードが」
「だから待てって。お前今勇者症候群に罹ってるぞ。冷静になれ。お前が行ってどうなる?」
「だって!」
乾いた音が響いた。
マルキュナの頬がエリフィアナによって叩かれていた。
「冷静になれ。でないと死ぬぞ」
なんで叩いたの?
痛い……。
あれ?
私今何しようとしてた?
レオニードを追おうとした?
逃げろと言われたのに?
戦えないのに?
やっと理解できた。
「……これが……勇者症候群……」
「そうだ。冷静になったな。影の報告によると、先の落雷は魔物の召喚術式と酷似していたそうだ。引き金はそれだな」
エリフィアナはマルキュナの髪留めを指差した。
「レオニードの守りたいという願望が魔物を呼び寄せたんだろう。敵がいなきゃ守れないからな。まったく厄介だ」
「私の……せい?」
「ちげーよ。あいつがカッコつけたいだけだ。だからよ。せっかくだから見学するか? あいつに見つからないようによ」




