第4話
自己紹介以降、「レオニードがクラスの注目の的になり、話題の中心に」ということは、別段なかった。
翌日以降も、彼に関わろうとする者は現れなかった。
彼自身も、突飛な行動を取るようなことはなかった。
マルキュナはどこか不穏な空気を感じつつも、
「まあ、そういうことしちゃう人もいるよね」
と、いわゆる『入学式で目立ちたがりタイプの少年』なのだろうと、静かに理解を示していた。
この学校に通うのは、そのほとんどが王国内の子供たちだ。
外から来た人間は、マルキュナのように友達がいないのもうなずける。
経済力以上に、学力も、忍耐力も、清潔感や一般常識までが求められる。
せっかく受かったのだから、という『何かを残したい』という想いは、十二分に理解できた。
そんな彼の“伝説の自己紹介”から数日後。
お昼休みのことだった。
マルキュナは自分で作ってきた肉挟みパンを頬張りながら、信じられない行動を取ってしまった。
「ねぇ、レオニード君」
一人で座って、早々に食事を終えていた少年に、つい声をかけてしまっていた。
誰も友達がいなさそうだから?
もしかしていじめられているかもしれないから?
かわいそうに思ったから?
どんな想いだったのか、自分でもよく分からなかった。
何をしているんだろう、と内心で思う。
しかし、何かしらの強制力でも働いたのか、声をかけた事実は変わらなかった。
「勇者って、本気なの? 魔王を倒すって……」
その語尾はどこか伺うようだったが、馬鹿にした響きはなかった。
正面を向いていたレオニードが、体ごとマルキュナの方へ向き直った。
「もちろん! マルキュナも俺と一緒に魔王を倒しに行かないか!?」
「えっ、行かないよ」
「そうなのか? この世界を救うために協力してくれると嬉しいんだが」
「魔王って、昔の話だよね? 倒されたって、絵本にすら書いてあるよ?」
「ああ、倒された。だが、まだこの世界にいるんだ。俺にはわかる」
その声は実に明瞭で、はっきりしていた。
そんなわけがないと分かっていても、納得させられそうな説得力があった。
「……そうなんだ。でも、私には無理だよ」
「なぜだ? 君は身体能力の強化が得意なんだろ?」
「そうだけど、そんなの誰だってできるし」
マルキュナが右拳を自身の胸に当てた。
「大事なのは、思いの強さだ。君からはその強い意志を感じる。だから一緒に戦わないか?」
そしてそれをマルキュナの顔に向かって突き出した。
マルキュナは「わっ」と体を少し後ろに引いた。
レオニードは「驚かせて、すまない」と、両手を合わせて素直に謝った。
そこでこのマルキュナの“挑戦”は終わった。
魔王なんて、いるわけないじゃない。
食事を片付け、次の授業で使う教科書を机の上に出した。
ちらっとレオニードの方を見ると、彼は何も気にしていない様子で、教室正面の黒板をじっと眺めていた。
クラスの何人かは彼のことが気になるのか、この一連のやり取りを遠巻きに様子を伺っていた。
(見てるだけなんだ……)
マルキュナは大人しく教科書を開き、次の授業の予習を始めた。




