第3話
次に先生が指名したのは、マルキュナのすぐ隣の席の少年だった。
彼が、マルキュナの運命を大きく変えることになる。
「俺は、レオニード! 勇者だ!」
マルキュナは反射的に顔を横へ向けた。
金髪をツンツンに逆立て、整った顔立ちに、どこか未来を見据えるような強いまなざし。
(かっこいい……けど、かなり変な人だ……)
自信に満ちたその表情に、マルキュナは気づけば口をわずかに開いたまま、顔をわずかに傾けていた。
レオニードは机の上に立ち上がった。
「魔王は俺が倒す! だからみんな協力してくれ! 賢者や武闘家、僧侶……いや、聖女でもいい! 『我こそは』と思う者は、いつでも声をかけてくれ!」
そう宣言すると、レオニードはマルキュナを見下ろし、手を伸ばして親指を立てた。
そして先生に促され、席に着いた。
(あっ……巻き込まれたくない……)
とんでもない人の隣になってしまった。
おそらく、他の生徒たちも同じことを思っているだろう。
教室全体が、ぎこちない空気に包まれた。
「冗談? 本気?」
そんな疑問が、誰もが顔に浮かべている。
しかしこれは、冗談ではなかった。
レオニードは、常にまっすぐで、まっすぐすぎるほどだった。
先生が空気を仕切り直し、レオニードの前の生徒を指名した。
この後の自己紹介ほどつらいものはない。
マルキュナはそう思いながらも、徐々に日常に戻っていく教室の空気を、ぼんやりと眺めていた。
こうして、マルキュナはレオニードと出会った。
この出会いが、いつか英雄譚の一ページになるとは、
この時のマルキュナはもちろん、教室にいる誰一人として、予想していなかった。




