第2話
マルキュナは入学前に通知されていた教室へと向かった。
場所は分からなかったので、クラスメイトらしき生徒たちの後をついていく。
他の生徒たちは、マルキュナが後ろをついてきていることなど気づきもしない。
「授業が楽しみだなー」
「早く魔法を撃ちたい!」
「婚約者はいるけど、彼女は別に欲しいわ」
移動中、ざわざわと明るい声が飛び交う。
教室の扉が開くと、途端に静かになった。
伝統を重んじる重厚な造りの教室。
それなのに、隅々まできれいに掃除されていて、古びた印象は一切ない。
これから始まる学校生活を、華やかに迎えるのにぴったりの空間だった。
席は自由に選んでいいと言われた。
生徒たちはそれぞれ友達同士で固まり、席についていく。
マルキュナは教室の一番端、一番後ろの空いている席にそっと腰を下ろした。
できれば、目立ちたくなかった。
すでに住む世界が違うことに心が負けそうだった。
(なんで私、ここに来たんだろう)
生徒たちを先導していた担任のフルッツェラ先生が、教壇に立った。
若い女性教師はどこかむくれ顔で、魔法理論の学科を担当していること、魔法研究部の顧問をしていること、好成績者のみが入部できること。
「あなたたちの中に入れる者がいることを願うわ」
と、少し自慢げに自己紹介を終えると、
「それでは、自己紹介を始めてください」
と言った。
自分の番が近づくにつれ、マルキュナは頭の中で何度も練習を繰り返した。
(変に勘ぐられないようにしないと)
村では狩りで暮らしていた。
地元でも「お前なんかが魔法学校なんて」って笑われた。
あの目はもう二度と見たくなかった。
魔法が使えたからという理由で、親に強く勧められただけだった。
喉がからからに乾き、声がうわずらないよう、何度も唾を飲み込む。
前の方から自己紹介の声が聞こえるたび、心臓が大きく跳ねた。
(あと三人で……自分だ……)
緊張で息が止まりそうになりながらも、耳を傾ける。
名前、出身、趣味、好きな食べ物、得意な魔法。
それくらいの簡単な内容でいいのだと、ひとまず安堵の息を漏らした。
そして、自分の番がきた。
立ち上がり、必要最低限を淡々と。
「マルキュナです。地方の村出身です。趣味は猫を撫でること、得意魔法は身体強化です」
言い終えるなり、できるだけ早く座りたくてすぐに腰を下ろした。
周りの反応は薄かった。
というか、これからもっと薄くなる。




