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「俺は勇者だ!魔王を倒すぞ!」 ~チート勇者と巻き込まれヒロインの奮闘記~  作者: 川合 佑樹


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第38話

 デート当日。


 マルキュナは街をレオニードと歩いていた。


 服装はお互い制服だった。


 いろいろ悩んだ結果、一番無難かつ見失わないという理由だった。


 つまり監視目的でもあった。


 周囲に明らかにこちらを見ている人がいたが気にしないことにした。


 そして前に来た時よりも街並みがどこか人影が少なく歩きやすくなっていた。


 おそらくこれも気遣いなのだろう。


 安全であることに越したことはない。


 レオニードがちらちらとマルキュナを見た。


「外で会うと、……なんというか、少し変わって見えるな」


 惜しい。


 その少し変わった部分が何なのかを言うのが正解だ……多分。


 実は今朝、エリフィアナに髪を少し高めに結ってもらった。


 女性の首筋で男はイチコロだと言い張るので、あまり髪型に興味がなかった私は、言われるがままにされた。


 いつもより肩回りが涼しく、どこか照れくさかった。


「そう? 髪……型ちょっと変えてみたんだ」


「おぉ! やはりそうか! 結びがいつもより高いのか……な? どこか魅力的……な。その、なんというか、とても似合っている!」


「あり……がと」


 素直に照れる。


 気がつけば二人とも照れていた。


 これがデートの魔力なのかもしれない。


 レオニードが右手を掲げた。


「マルキュナ、今日はケーキを食べに行こう!」


「いいよ。どこに行くの?」


 そしてマルキュナの手を取り、彼女がついてこれるくらいの速度で走り出した。


「こっちだ!」


「ちょっちょっと、待って待って」



 辿り着いたのはクラリーンと以前きたところだった。


 レオニードが店を指差した。


「ここがオススメだと聞いたんだ! 入ろう!」


 誰にオススメだと聞いたのかはなんとなくわかったが、


「ここ、予約しないと入れないんじゃ?」


 そう、ここは大人気店舗。


 人通りが少なくなっているとはいえ、外にはまだ人が並んでいた。


 しかし店員がこちらに気づくと声をかけてきた。


「レオニード様ですね。どうぞ中へ」


 何も問題もなく入店できてしまった。


「予約してたの?」


「いや、今そういうのがあるのは知った。だが、俺は勇者だからな! こういうこともあるんだろう!」


 マルキュナの疑問に対して、楽観的な回答だったが、おそらく勇者パーティのメンバーで根回しが行われていたのだろう。


 初めからここに誘導しておけば、余計なところにはいかない。


 そういう計画を感じ取った。


 というのもまずメニューが以前と全く違っている。


 レオニードがメニューを見て驚嘆した。


「こんなのもあるのか」


「どれ? ……ラブラブカップル割引キャンペーン! 愛しくる濃いの味パフェ! 苺とチョコのハーモニーが、甘酸っぱいトキメキを応援します。ラブラブ度によっては無料って」


 やりすぎである。


 このネーミングからエリフィアナが考えたのだろうことは分かった。


 これが書かれてあるのはこのメニュー表だけなのだろう。


 他の席を見渡してもそんな商品はなかった。


 そもそもパフェ自体が以前のメニュー表にはなかったはずだ。


 レオニードは真剣な表情でそれを眺めていた。


「ラブラブ度によっては無料か……その分、別に予算を割けるな……しかし……」


 普段見せない真剣な表情。


 顔が良い。


 正直初めからずっとこの表情であれば好きになれていたかもしれない。


「その……」


「そちら! 季節限定になっておりまして! この時期、青春を謳歌する若者を応援するキャンペーンなんですよ! 二人で食べていただくだけでなんと無料! 味は保証付き! どうですか!?」


 マルキュナがレオニードに相談を持ち掛けるのを、脇からとんでもないテンションの店員が入ってきた。


 以前はいなかった店員だ。


 勇者パーティの誰かの息がかかってそうだった。


 つまりこれを食べることが今日のミッションなのだろう。


「おや? お客様、お召し物に埃が」


 そう言って店員がしゃがみ、マルキュナのスカートの端に手をやった。


 そして素早く膝の上に金貨を二枚置いた。


「!?」


 これが作戦だと確定した。


 マルキュナは落とさないように、その金貨をつかみ取る。


 その店員は立ち上がるやいなや、マルキュナに微笑んだ。


「どうなさいますか?」


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