第37話
その日の昼休み。
なぜかまたマルキュナは屋上に呼び出されていた。
「第一回、好き好き大好き、キスもあるかも? 恋して愛して勇者にドン! ラブラブデート大作戦!」
エリフィアナがノリノリでがなりを上げた。
周囲の目線など気にする様子もなく、誰よりも楽しそうに体を左右に振っていた。
「エリフィアナ……声大きいよ」
マルキュナが頭を抱え、その周囲をエリフィアナ、プルメィラ、シェルルーシュが囲っていた。
「これが黙っていられるか! デートだぞデート! 恋バナだぞ!」
エリフィアナは思った以上に女子だった。
その見た目では想像できなかったが、冷静に考えて年頃の女子。
興味がないわけがなかった。
マルキュナはおそらくこうなった元凶のシェルルーシュに顔を向け睨んだ。
「その……ですね。これは不可抗力というか……お出かけするということは護衛も必要なわけで……すみません」
シェルルーシュの声が徐々に小さくなっていった。
最後の方はおそらく謝っているのだろうということくらいしか分からなかったが、マルキュナは特別怒っているわけではなかった。
むしろ、
「その……別に怒ってないんだけど……。これ人生で初デートになるからさ……私も……困ってるからさ……」
助かっていた。
困っていると言いつつも、どうすればいいのか、何が正解なのか、できれば経験のある人に聞きたかった。
おそらくレオニードはエスコートしてくれるだろう。
でも一度街に行ったことある自分が行動を起こした方がいいのか?
勇者って貴族扱いなのか?
着ていく服は制服で良いのか?
ダメなら服を買わなきゃ。
などといった考えで頭がいっぱいだった。
存外楽しみにしているのだと思う。
「あー、そうだね。うん。デートはその、なんだ。楽しんだらいいんだよ。うん」
プルメィラが少し顔を赤らめて言った。
おそらくだが、この人も男性経験がない。
それはこの間の「女が好き」という言葉を真に受けてしまうほどに見ればわかる状況だった。
そして思いがけずシェルルーシュが頼りになった。
「デートとは、互いの距離を自然に縮めていく時間です。無理に特別なことをしようとはせず、まずは『一緒にいること』を大切にしてください。街を歩きながら、普段は話さないようなささやかな出来事、今日の空の色や、路地に咲いていた花の名前を共有するだけで、十分に心は近づきます。夕刻の広場で、温かい飲み物を手に腰を下ろし、沈む陽を眺めながら、明日への小さな夢を語り合う。勇者としての肩書きも、護衛の役割も、一旦そっと置いておく。ただ、一人の少女として、相手の瞳に映る自分を素直に感じる……それが、理想的なデートです。きっと、マルキュナさんなら、自然と素敵な時間になるはずですよ!」
その言葉は、予想外に具体的で、どこか心に染み込むような響きを帯びていた。
マルキュナは、引き寄せられるようにシェルルーシュの顔をじっと見つめた。
誰よりも乙女じゃん。




