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「俺は勇者だ!魔王を倒すぞ!」 ~チート勇者と巻き込まれヒロインの奮闘記~  作者: 川合 佑樹


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第21話

 マルキュナは、いつの間にか自室のベッドに戻っていた。


 目を覚ました彼女は、思ったよりも冷静で、今日聞いたことを反芻していた。


 レオニードは勇者で、魔王。


 勇者パーティはきっと本物で……私は、その伴侶? とか言ってたよね。


 伴侶、つまり結婚相手ってこと?


 けれど、それには全然興味が湧かない。


 彼にどことなく、人間味を感じないからだろうか。


(顔は良いんだけどな)


 そう思いながら、マルキュナは再び目を閉じた。



 次の日。



 体調はすっかり回復していた。


 元々丈夫な方だったし、身体能力強化の魔法が得意な家系は回復も早いと聞く。


 半信半疑ではあったが、自分を奮い立たせるには十分な理由だった。



 教室のドアを開けると、中はすでに賑やかだった。


 レオニードは自分の席に座り、周囲の取り巻きが昨日より一層増えている気がした。


「レオニード君! 昨日は凄かったね!」


「討伐数一位だって!」


「Bランクの魔物を倒したんだって?」


 そんな声が飛び交っている。


 やがてお決まりのように、レオニードはマルキュナに気づくと、机の上に飛び乗って大きく手を振ってきた。


「マルキュナ! 元気だったか! 昨日は俺たちに追いつこうとして別の魔物に襲われたって聞いたぞ! でも思ったより大丈夫そうだな、よかった!」


 何も良くないし、倒れたのはお前のせいだ。


 内心で毒づきながらも、マルキュナは手を振り返した。


 彼女はすでに、一つの答えに辿り着いていた。


 レオニードは、おそらく勇者をやるとバカになるのだ。


 勇者に操られる傀儡と言っても過言ではない。


 おだてればおだてるほど調子に乗る。


 そして魔王とは、その裏返しなのではないか。


 つまり、鬱屈した感情が溜まったタイミングや、彼の「勇者力」では解決できない何かが起きた時に現れる存在なのだろう。


 そのバランスさえ間違えなければ、大丈夫。


 そう判断したからこそ、何も言わず手を振るのが最善だと考えた。


(勝手に都合よく想像するなら、すればいい)


 脳内でそう吐き捨てながら、彼女はレオニードの横を通り過ぎていった。


 席に着くなり、クラリーンが振り返ってきた。


「マルっち! 昨日はごめんね! ちょっと体調悪くなっちゃって! マルっちのことだから、きっと探してくれてたよねっ」


 両手を合わせ、目を閉じてこちらの反応を待っている。


 マルキュナはその手に触れた。


 そして机の上に降ろさせた。


「大丈夫だよ。昨日は結局、勇者パーティに連行されちゃったから、一緒に授業は受けられなかったと思う」


 クラリーンは恐る恐る片目だけを開けた。


「本当に? 怒ってない?」


「怒ってないよ。もう、そんな話はいいから、楽しい話しよう?」


「うんうん! じゃあさ! 今度の休みに遊びに行かない?」


「今度の休みって……明後日?」


「そう! 新しいスイーツが二種類出るみたいなんだけど、めっちゃ人気でさ! 一人一種類までらしいから、一緒に来てくれると嬉しいなぁ。お詫びも兼ねて! お金は出すからっ! ねっ?」


「大丈夫だよ。お金はちゃんと払うから。明後日ね」


「やったー! じゃあ、寮の前で集合して、歩いて行こっか!」


「分かった」


 初めての外出になる。


 勇者パーティの面倒を見ていたおかげで、少しだけ懐に余裕ができていた。


 そして後から知ったのだが、まだ勇者部を正式に退部扱いにはなっていなかったらしい。


 それもそうか。


 でなければ野外授業で巻き込まれていないか。


 というか、もし辞めていたにもかかわらず巻き込まれていたのだとしたら、それはそれでどうなんだ。


 給料はきちんと受け取れた。


 毎日フルッツェラ先生から手渡しされる。


 そしてついでに正しい辞め方も教わった。


 退部届を出し、部長が受理し、顧問が受理し、部活会で承認され、最後に校長が判を押す。


 そこまで必要なのだとか。


 二つ目以降はもう無理だろう……と、マルキュナは逆に苦笑した。


 そして、クラリーンはよくそんな面倒を避けられたものだと、内心で感心した。


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