第18話
各班は散開して森の中へと入っていった。
マルキュナは一歩、踏み込んだ瞬間、
「パーセプション」
マルキュナは即座に自身に魔法をかけ、感覚を極限まで研ぎ澄ませた。
前を歩いていたエリフィアナが、わずかに振り向いた。
「感覚を鋭敏にする魔法か。いいセンスだ」
「……ありがとうございます」
マルキュナは生まれ育った環境から、体が勝手に動いていた。
魔物相手の狩りは初めてだったが、やるべきことは基本的に変わらないと判断した。
その結果、先輩であり聖女であるエリフィアナから褒められたのは、どこかむず痒く、素直に嬉しい気持ちになった。
だがすぐに、森の違和感に気づく。
(……人に囲まれている?)
周囲を見回していると、シェルミルが肩を叩いてきた。
「マルキュナさん、彼らはエリフィアナさんの護衛です」
「そう……か。そうだよね。ありがとう……えっと、シェルミル」
納得がいった。
授業とはいえ聖女が魔界に向かうのだ。
この程度の護衛は当然だと、自分に言い聞かせた。
それと同時に、
「なんかズルいな」
という気持ちと、
「だったら私が魔法を使わなくてもよかったんじゃないか」
という思いが、ふつふつと湧き上がってきた。
(これは授業だから……やれることは全部やろう)
そう思うことにした。
それとは別に、今初めてシェルミルと話したな、と思った。
彼は何年生なのだろう。
武闘家だと言っていたけど、本当なのだろうか。
そもそも武闘家とは何なのだろう……。
殴ったり蹴ったりする専門家?
そんな疑問が次々と頭をよぎったが、「いずれ聞けばいいか」と、マルキュナはただ前を向いて歩くことにした。
歩くこと数分、周囲に魔物が潜んでいる兆候や物音は一切なかった。
マルキュナは魔力の温存のため、魔法を解いた。
「魔物ってこんなに出ないものなんだ。隠れるのが上手いのかな?」
誰にともなくつぶやくと、プルメィラが振り向いた。
「そうだねぇ。勇者パーティにビビってしまっているのかもね? なんてな!」
器用に背中を進行方向に向けたまま、彼女は答えた。
「初めての野外学習なもので……これが普通なのですか?」
「どうかな。魔物だってそれぞれ考えがあるからねぇ。出てきたくないってこともあるんじゃないかな? このパーティだと、並み程度の実力じゃ瞬殺されちゃうと思うしね。本当に怖がっているのかもしれないね」
「そうなんですね。でも、それだと授業の評価が……」
野外学習の評価は、倒した魔物の数や脅威度、レポートによって決まる。
ただ歩いているだけでは、加点などされない。
マルキュナは進級も卒業も視野に入れて生活しなければならなかった。
部活を辞めた今、一年多く無駄に過ごす余裕などなかった。
プルメィラが悪戯っぽく笑った。
「それは……たぶん大丈夫かな?」
すると、唐突にレオニードが走り出した。
「魔物を発見した! 討伐する!」
そんな大声を出したら、魔物が逃げるだろう。
誰もその指摘はしなかった。
「おう! 倒した数で勝負しようぜ!」
「まっ、まけませんよっ!」
レオニードの後を、エリフィアナとシェルミルが追っていく。
マルキュナとプルメィラは、出遅れた。
というより、追いかけようともしなかった。
マルキュナに至っては、プルメィラの左手によって静止させられていた。
「お話ししようか、マルキュナちゃん」
嫌な予感というのは、どうにか先に来ないものかと呪った。




