第15話
次の日の朝。
マルキュナが校門に差し掛かると、新聞を配る生徒たちの姿が目に入った。
「武闘大会でーす!」
「みんな、こぞってご参加くださーい!」
どういうわけか、昨日見た新聞部の面々が、武闘大会の宣伝に精を出していた。
マルキュナは一部を受け取る。
一面には大きく『最強よ集え、武闘大会』と見出しが躍っていた。
そして腹が立つのは、いつ撮られたのか、レオニードの全身写真がデカデカと載っていることだ。
無駄にカッコつけた角度で写されていた。
文字よりも幅を取るそれは、勇者然とはしていたが、
「目立ちたがりめ……」
口にするつもりなどなかった言葉が、抑えきれずに唇からこぼれた。
教室に着くと、その話題で教室中が沸いていた。
レオニードを取り巻く女子の数が、明らかに増えていた。
減っていたはずの輪がまた膨らみ、増えすぎて本人の姿さえ見えなくなっている。
「レオニード君! 新聞見たよ!」
「カッコよかったー!」
「武闘大会にも出るの?」
そんな中、マルキュナの存在に気づいたらしい。
レオニードは床を蹴って机の上に飛び乗った。
「マルキュナ! 舞台は整った! 武闘大会をするぞ!」
その舞台を整えるのは、これからであり、
その舞台を整えるのは、おそらく私で、
お前は一体何をするんだと。
内心で毒づきながらも、マルキュナはすべてを飲み込んで笑顔を貼り付けた。
「頑張って!」
しかし、声には棘しか残っていなかった。
レオニードは周りの黄色い声に紛れて聞こえなかったのか、聞こえていても理解していなかったのか、それとも理解した上でなのか、拳で自分の胸を叩いた。
「おう!」
マルキュナは取り巻きたちを横目に、自分の席に腰を下ろした。
「マルっち! なんかすごいことになっちゃったね! これっていつから計画してたの!?」
すぐさまクラリーンが声をかけてきた。
答えを持っていないマルキュナは、曖昧な表情で笑った。
「あー、それはレオニードに聞いて?」
「もしかして怒ってる?」
「……呆れてる」
心配はしてくれる。
でも、助けてくれるわけじゃない。
義務でもないし、友達だけど、そんなもんだよね。
そう諦めていたはずだった。
なのにクラリーンは、そんな様子を見て手を握ってきた。
「一人で抱えちゃダメだよ? うちにできそうなことがあったらいつでも言ってね!」
「……ありがとう。まだ、大丈夫……かな?」
本当の気持ちかどうかは、自分でもわからなかった。
ただ、心がすさんでいたことだけは確かだと思う。
でもその手は、驚くほど温かかった。
手のひらから伝わる熱だけで、今日はなんとか頑張れそうな気がした。




