↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「俺は勇者だ!魔王を倒すぞ!」 ~チート勇者と巻き込まれヒロインの奮闘記~  作者: 川合 佑樹


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
14/42

第14話

 そして辿り着いたのは、新聞部。


 数室隣の部室だった。


 つまり、それなりに「格の高い」部活だということだ。


 そんなことに気づいているのはマルキュナくらいで、レオニードはノックもせずにドアを開けた。


「入るぞ! 頼みがあって来た!」


 部屋の広さは同じだったが、机と資料の山、本棚、写真機材が所狭しと並んでいた。


 席に座って原稿を書いていた男子部員が十名ほどと、黒板に何かを書き込んでいた生徒が、一斉にレオニードへ顔を向けた。


「武闘大会を開く! その宣伝を頼みたい!」


 レオニードは部屋に入りながら、さらに大きく宣言した。


 断られるはずがない。


 そんな態度が丸見えだった。


 自覚がないところが本当に厄介だ。


 黒板に文字を書いていた生徒が、穏やかに答えた。


「やあ、レオニード君。急な要件だけど、話は聞こう。まず、武闘大会って何かな?」


「武闘家を集めて戦わせる大会だ。その宣伝をしてほしい」


 生徒は首を横に振った。


「悪いけど、うちは伝統ある部だよ。いきなり来て宣伝をねじ込むなんてことはできない。きちんとした手続きを踏んでくれれば検討するけど」


「手続きとは?」


「まずは大会が本当に開催されるのかが不明だ。そんな話は学校側から一切入ってきてない。嘘だったら宣伝なんてできない。あと、大会の知名度次第かな。宣伝する価値があることを示してくれないと、他の記事を下げてまで載せる理由がないんだ」


 マルキュナは心の中でガッツポーズした。


(あれ? これ、勝てるんじゃ……? 頑張れ、部長さん!)


 しかし、次の瞬間。


 明らかに不可解で、でもどこか「当然」のように感じてしまう現象が起きた。


 レオニードが部長に近づき、肩に手を置いた。


「はっはっは! 難しいことを言うなよ。俺は勇者だ。できないことなんてない。そうだろ?」


 そして部長の肩を引き寄せ、鼻と鼻が触れ合いそうな距離で目を覗き込んだ。


「君はここの部長だったな? 先日も話したよな」


「ああ、そうだ。先日は驚いたよ。部室を明け渡せだなんてね。今も驚いてるけど?」


「良い目をしている。正直、君みたいな真面目で優秀な人間が、ただ『毎年いる部長』の一人として終わるのはもったいないと思ってるんだ。将来は何を目指してるんだ?」


「卒業したら新聞社に就職が決まってる。そこで編集長になるのが目標かな」


「そうか。いい未来だな。でも、今のままじゃ無理だ」


「どういう意味だい?」


 レオニードはさらに顔を近づけた。


「箔が足りない」


「箔……? 魔法学校の栄誉ある新聞部の部長は、歴代みんな新聞社で編集長になってる。そんな僕に不足があるっていうのか?」


「いいのか? そのままで?」


 部長の顔色が明らかに変わった。


 レオニードはそれを確認すると、底冷えするような声を響かせた。


「部長は毎年いる。その部長は毎年編集長を目指す。そんな中で『栄誉』って何だ? 変わらない毎日を届けるのが新聞の仕事だとしても……本当にそれで満足か? ……毎日同じ原稿を校正して、誰かのスクープを羨ましそうに見上げて、定年まで『ああ、あの時一歩踏み出せば……』って後悔しながら過ごす人生で、本当にいいのか? 大スクープを掴んで表彰される自分を、想像したことはないか? 有名人の独占インタビューでもいい。誰にも奪えない、君だけのポジションを今、手に入れられる。これはチャンスだ。勇者である俺の側で、その歴史の瞬間を見届ける。一歩目がこれだ。武闘大会。この機会を逃しても、確かに君は編集長になれるだろうさ。でも、ごく平凡な、がつく編集長だ」


「しかし、すぐには……」


「時間はある。他を消す必要はない。そうだろ? 今、ここで一枚、俺の武闘大会の記事を一面に貼るだけでいい。それだけで君は『普通の編集長』から『伝説の編集長』に変わる。決めるのは君だ。俺はもう、君ならやってくれると信じてるよ」


 レオニードは手を離し、踵を返した。


 その瞬間、顔はいつもの爽やかな勇者の表情に戻っていた。


 部長はその場にへたり込んだ。


 勇者パーティ一行は、部屋を後にした。


 扉が閉まると、エリフィアナがレオニードを振り返った。


「少々強引が過ぎたな」


 そう言い残して、彼女は走り去っていった。


 部室を越え、廊下を曲がり、どこかへ消える。


「強引だったか……?」


 レオニードが、珍しく不安げな顔でマルキュナに尋ねた。


(聞くくらいなら最初からするなよ……!)


 そう思ったが、代わりにマルキュナが出したのは、彼の背中をポンと叩く行為だった。


「レオニード君が強引じゃなかったこと、ある?」


「……それもそうか」


 武闘大会が本当に始まれば、これまで以上に面倒なことに巻き込まれそうだ。


 そんな思いで、もう一度だけ強めに背中を叩いた。


 レオニードは不思議そうな顔をした。


 マルキュナは、初めて彼に一矢報いた気がした。


(やればできるじゃん、私!)


 しかしその小さな勝利の余韻は、次の日にはあっという間に吹き飛んだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。