第13話
ある日の休み時間。
マルキュナはクラリーンと並んで昼食を食べながら、いつもの他愛もない会話を交わしていた。
「マルっち、放課後って何してんのー?」
「勇者パーティの面々を眺めてる」
「え、もうメンバー集まったの?」
「今のところ勇者と賢者と聖女と……あとは私、かな」
「はへー! 聖女ってもしかして、あの聖女?」
「うん、エリフィアナ様」
「マジか……大丈夫? 不敬とかで殺されたりしない?」
「毎日ヒヤヒヤだよ。でも、彼女……意外と優しいかも」
「へえー。聖女様かぁ。まだ一度も見たことないや」
「一回見たら、二度と忘れられないよ」
「会ってみたいなぁ……って、マルっちに悪いかな」
「大丈夫」
「あとは武闘家とか言ってたっけ?」
「よく覚えてるね」
「忘れらんないよー!」
「たしかに」
そんな、なんでもない会話だった。
ただマルキュナは、心のどこかで、
「なんで休み時間までレオニードの話をしなきゃいけないんだろう」
と思っていた。
でも、もう注目されてしまっていること、そして逃げられないことは分かっていた。
だから、少しでも味方になってくれる人がいる方が救いになる。
そんな気持ちで、つい口が動いてしまうのかもしれなかった。
できれば、これ以上変なことが起きませんように、と心の底で祈っていた。
その願いは、その日の放課後にあっさり粉々に砕かれた。
「新聞部に向かおう!」
「おー!」
部長の机の向こう側にある席で、レオニードが立ち上がった。
間髪入れず、プルメィラも立ち上がり、右手を高く掲げる。
そこにエリフィアナが割って入った。
「新聞部になんか行って、何するんだよ?」
冷静そのものだった。
聖女だけのことはある。
ただ、その裏側に「面白そう」というスイッチが入ると、途端に好奇心が暴走するのが彼女の弱点だということがこの後分かった。
レオニードはエリフィアナの方を向いた。
「新たなる勇者パーティのメンバーに、武闘家が欲しいと考えた! だから武闘大会を開く。その宣伝を、新聞部に協力してもらおうと思ってな!」
「なるほど。付き合うぜ」
エリフィアナはあっさりと魔王の手に落ちた。
「ちょっと待って。武闘大会って、ここ魔法学校だよ? 武術に自信ある人なら、騎士学校とかそっちの方がいいんじゃないの?」
マルキュナの提案は極めて真っ当だった。
「よーし、それなら早速向かうかー。俺が先行してやるよ」
エリフィアナが立ち上がり、
「では僕が援護をしよう」
プルメィラが肩を回し、
「みんな! その意気だ! 打倒、新聞部!」
レオニードは拳を高らかに上げた。
「ねぇ! なんで誰も私の話、聞いてくれないのよぉ!」
文句を言いながらも、マルキュナは結局後ろをついていくことになった。
見えない恐怖より、目に見える苦難を選んだのだ。




