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2度目の宣告

 復職してからも通院は続いていた。

 採血をして、眠れているのかと問診があって、薬の処方を貰うだけ。採血をこんなにする必要があるのかもわからないし、そもそも良くなっている実感があまりなかった。でも、先生には言えなかった。気分を害するかもしれないし、私は医者でもなんでもないから、指示に従うしかない。でも、回復の兆しは全く見えなかった。

 不安は止まらなくて、仕事に対しても「失敗する訳にはいかない」と、責任感は無駄に暴走した。

 最初の頃は時短勤務で配慮をしてもらっていたのだが、笑顔を作って人前に立っていたら、帰宅すると動けなくなる。人の声がやけにうるさく感じて、視線がこちらを向けば、何か悪い事をしただろうか、陰口を言われているのではないか、なんて被害妄想のオンパレード。頭は常にフル回転で、帰宅するや否や、ソファに雪崩れ込んだ。もうこれ以上動きたくない。ご飯を食べるのも面倒だ。風呂にも入りたくない。どうせメイクもしていないし、歯磨きだけして眠ってしまおう。

 生活がまた少しずつ崩れていった。少しずつやり始めた自炊もまた出来なくなり、朝起きることも億劫で、時折胃液が逆流してきた。眠剤のおかげで夜は眠れているのだが、疲れが取れている気はしなかった。

 職場では1週間に1度程度の面談を行い、現在の状態についての報告をしていた。そこでふと、先輩から本音が漏れた。『戻るの早かったんじゃないかと思う』と。私は密かに感じていた。ただ私の中の焦りは、早く社会に戻れと言っていた。復職前の受診で、まだ不安ですと言えず、時短勤務から始める事になったものの、職場ではどこか疎外感を感じていた。休んでいた後ろめたさもあって、辛い様子をもう見せてはいけないと、またがむしゃらに働いた。

 その結果、私は自傷行為を始めた。唇を噛んで皮を剥き、爪を噛み、ひどい時は自分の手の甲や腕に爪を立てた。絶叫することは近隣の迷惑になるからと、枕に顔を埋めて嗚咽混じりに小さく叫んだ。頭を叩き、足を叩き、頰を叩いた。痛みで現実世界に私の意識を戻させるために、私は自傷行為を繰り返した。

 そしてとある受診の日。どうせいつもと同じだと思っていた。眠れているかを聞かれ、他愛のないどうでもいい雑談をされる。そう思っていたのだが、今回は私の一言で、展開は変わった。


「先生…あの…」


 日頃、先生に対して己の意見はあまり言わなかった。聞いてもらったところで前に進める訳でもない。カウンセリングの場所でもないから、己の意見は閉ざして聞かれている事にだけ答えていたのだが、今日は口からポロリと言葉が溢れた。


「仕事…辞めたいんです…辛いです」


 甘えと捉えられるかはわからなかった。先生の顔は見れなかった。呆れられていると思ったから。先生は沈黙の後に、デスクに向かって何かメモを書いていた。


「まだ休んだ方が良さそうだ」


 2度目の宣告だった。そのあとの話のことはよく覚えていない。診断書をもらい、薬が増えて、職場に電話をした行動だけは覚えている。会話の内容はほとんど覚えていない。ただ、休職になるのだと頭の中で何度も反芻した結果、しばらくあの空間に行かなくていいのかと、ほぅ、と今日初めての安堵のため息が出たのだった。

みんな、無理はしないでね。約束だよ。

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